遠隔医療実験-1.実験の概要
1.実験の概要
1−1 実験の目的
1−2 実験システム
1−3 評価項目
1−4 実施計画
1−5 実験の評価方法
1−6 調査票
1−6−1 医療用調査票
1−6−2 在宅療養生活支援用調査票
1−6−3 利用者用調査票
1−1 実験の目的
独居老人や在宅療養患者が、離れたところにいる専門医の診療が受けられたり、自
宅にいながらにして健康相談を受けられる。このような在宅での医療や介護、生活支
援サービスは、来るべき「情報長寿社会」においてインフラとなるべきものである。
これまで情報通信メディアや通信技術はそのようなサービスを実現するには貧弱な
ものしかなかったのが現実である。しかし今後は光ファイバーや双方向CATV等次
世代の情報通信網の整備や画像圧縮等の技術開発によって、マルチメディアの通信分
野は飛躍的な機能向上が期待できる。今回の実験では現状の技術レベルでどのような
遠隔医療や遠隔福祉等のサービスが提供可能かを明らかにし、その必要な機能の分析
やサービス面での問題点、技術的課題を抽出することを目的としている。
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1−2 実験システム
今回「遠隔健康相談システム」として実験を行ったものは、基本的にはTV電話あ
るいはTV会議システムを用いて、遠隔で医師が診察を行ったり、ソーシャルワーカー
(以下ワーカーと略す)等が生活支援を行うものである。
本実験システムは実現性をより高いものとするため、一般に市販されているテレビ
電話やテレビ会議システムを使用し、通信回線も一部CATV網を使っているが、主
にNTTのINSネットを利用している。構成する機器類は一般への普及が進んでい
ないためやや割高な価格設定になっているが、新たに開発する要素は少なく、システ
ムの構築は比較的容易である。システムの概念図を図1、提供された機器の一覧を表
1に示す。
図1 遠隔健康相談システムの概念図
表1 提供を受けた機器の仕様
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1−3 評価項目
評価は漠然と行うのではなく、「この点はTV電話等で十分だが、この点は不十分
である。」ということが明確にできるような評価を目指した。そのため、以下の2つ
の項目を柱として、実験関係者に評価してもらった。
- どの症状の問題点(プロブレム)でTV電話等が有効だったか
- 診察や生活支援に必要な情報をどれだけ得られたか
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1−4 実施計画
平成6年4月に関東逓信病院で最初の実験が行われたのを皮切りに、以降全国各地
の病院、医院等9機関で実験(第1次)が行われた。
これらの実験は各地で大きな反響を呼び、実験の希望が寄せられた。そこでより幅
広い医療分野・症例についても調査するため、平成6年10月から新たに全国19カ
所で実験(第2次)を行うこととした。
本調査報告はこの中から16機関21名の医師、看護婦、保健婦、ソーシャルワー
カー等から29人の患者(在宅療養患者18人、入院患者3人、通院患者8人)の症
例について意見、要望等、また19人の患者や介護者からも意見や感想を収集してま
とめている。
表2 第1次遠隔健康相談システム等の実験実施者等
表3 第2次遠隔健康相談システム等の実験実施者等(1/2)
表4 第2次遠隔健康相談システム等の実験実施者等(2/2)
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1−5 実験の評価方法
実験の評価は、実験の関係者に対する意見、要望等の収集によって行った。それぞ
れの立場により、システムに関する評価基準は異なるため、3種類の調査票を用意し
た。医師を代表とする医療関係者のための医療用調査票、患者や介護家族等の生活を
支援する立場にあるワーカーのための在宅療養生活支援用(以下生活支援用と略す)
調査票、そしてこのシステムを通じて各種のサービスを受ける人のための利用者用調
査票である。
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1−6 調査票
1−6−1 医療用調査票
(1)実験の実施状況
医療用調査票の設問項目は大きく4つの部分に分かれている。最初に質問している
のは、使用した機種や通信回数等実験を評価するにあたって基礎となる情報である。
これらは、実験がどのようにして行われたかを整理するための設問である。
(2)プロブレム別の評価
ここでは該当の患者が、どのような問題を抱えているかを抽出している。今回の実
験では多種多様な患者が存在しており、ひとくくりにして評価できないため、患者に
関する基礎的な情報と、診断の際に注意している患者の抱えている問題点(プロブレ
ム)をリストアップしてもらった。このリストをもとに、どのプロブレムでは、どの
程度TV電話等が有効なのかについて評価をしている。
(3)チェック項目別の評価
ここでは医師が診察の現場においてどのような情報を収集しているかという観点か
ら抽出したチェック項目(身体の運動、皮膚の色調等)別に、それらがTV電話等で
どの程度伝達できたかを、患者と直接接して診察した場合と比較して評価をしている。
本調査票では、全身の状態、皮膚の状態、眼の状態、口腔の状態、頚部の状態、胸
部の状態、腹部の状態、上肢・下肢の状態、問診の計9つに情報を分類した。
(4)在宅医療におけるTV電話等に対する意見・感想
最後にTV電話機等の機器そのものに対する感想や、システムに対する総合的な評
価を訊いている。この中では往診や通院の代わりとしてTV電話等を扱うことの可能
性についても言及している。
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1−6−2 在宅療養生活支援用調査票
- (1)実験の実施状況
- 生活支援用調査票でも、基本的な考え方は医療用と同じである。ただしこの調
査票の対象はワーカー等の生活支援をする立場にある人なので、患者だけにとどまら
ず、介護者等からの相談にも対応する必要がある。そのため重点的にみた項目には身
体の状態、精神の状態に加えて生活環境の状態、介護の状態、家族の状態の5つをあ
げている。
- (2)プロブレム別の評価
- 生活支援用の観点からも回答者からプロブレムを抽出してもらい、それぞれ個
別に評価を行った。医療用の場合と重複する部分も見受けられたが、集計は分けて行
った。
- (3)チェック項目別の評価
- ワーカーも医師同様、患者や介護家族等と接する場面において様々な情報を
収集している。しかしそれらは医師の視点とは(1)で述べたように明らかに異なる
ものであるため、特に精神面を中心に項目を抽出した。評価方法は医療用と同じく、
直接接する場合と比較した。
- (4)在宅療養生活支援におけるTV電話等に対する意見・感想
- 最後にTV電話等の機器そのものに対する感想や、システムに対する総合的な評価
を訊いている。ここでの設問項目は医療用とほぼ同じである。
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1−6−3 利用者用調査票
(1)プロフィール
今回の実験に参加した患者について基礎となる情報を収集するための設問項目であ
る。
(2)実験の実施状況
ここでの設問項目の一部は医師やワーカーを対象とした調査票のものと一部重複す
るが、患者の感想等の設問を追加しており、実験に対する満足度を測ることを目的と
している。
(3)TV電話等を使って得られる効果
遠隔健康相談システムが、患者にとってどの程度効果的に感じられたかを、電話と
比較して5段階で評価してもらった。医療者側の体制も含めたシステム全体に対する
満足度を測ることを目的としている。
(4)機器を利用してみた感想
TV電話等機器に対する満足度を測ることを目的としている。
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「2.実験の結果」を読む(展開に時間がかかります)
「2−1 医療用・生活支援用共通」を読む
「2−2 医療用」を読む
「2−3 生活支援用」を読む
「2−4 利用者用」を読む
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