医学情報・医療情報 UMIN インターネット医学研究データセンター(INDICE)
Internet Data and Information Center for Medical Research

よい医学研究にセンターが必須である理由

センターによって、医学研究のデータ収集が効率化され、データの質が向上します。また既登録患者の割付状況を考慮した動的均衡法による無作為割付(最小化法等)等の優れた割付法の利用が可能になります。しかしながら、このことは「センターの利用が望ましい」という理由にはなりますが、「センターの利用が不可欠」ということにはなりません。以下にはセンターの理由が不可欠な理由を列挙しますが、強調しておきたいことは、医学研究を正当で質の高いものとして国際的に認めてもらうためには、人の善意や努力だけに依存するやり方では駄目で、公正さを客観的に第3者に保証するための手続きを整備して(いろいろな手続きがありますが、「センターを利用して症例の中央登録(+割付)をする」ことが最も重要な手続きです。これを行わないと一流の研究とはみなされません)、明示的に論文に記載することが必須だということです。

1.跡付けの防止(都合の悪い患者の除外ができないようにすること)

医学研究に組み入れられる患者は、組み入れた(登録)時点でセンターが把握しておく必要があります。
そして、その患者の経過がどうなったかもセンターで把握する必要があります。
もし組み入れた時点でセンターが把握していないとどういう事態が起こるでしょうか。

ある臨床研究に参加したところ、ある施設の治療成績が悪かったとします。その施設では、これを外部に知られたくないために治療成績のよかった患者のみを報告するような不正がおこりえます。
また外科治療と内科的治療の比較で、外科医が外科治療の方が成績がよくなることを望む場合に外科治療をして経過の思わしくない患者を除外してデータを出す可能性があります。

上記のような不正を防ぐためには「治療をする前(結果のわかる前に)」に「この患者を臨床研究の対象とすると決めた時点」でセンターに登録し、更に登録された患者はすべて結果を追跡することが必要です。このためにセンターでの登録が必須なのです。

2.公正な各群への患者の割付

無作為化比較臨床試験では、複数の群(治療群と対照群、治療薬Aと治療薬B等)に患者の無作為割付を行います。
無作為に割り付けるためには、いろいろなやり方(サイコロ、乱数表等)が考えられますが、一般的に行われてきた方法は封筒法(予め組み入れられる群が記入された紙の封筒を決められた順番で破っていく方法)です。
割付を(センターではなく)各施設で行った場合には、質の高い研究とはみなされません。なぜなら、公正な割付がなされないことが経験的にわかっているからです。(信じられない人がいるかもしれませんが)

治療群と無治療群を比較すると仮定すると、通常医師は治療群に割り当てられることを望みます。
また2つの治療法の比較の場合には、通常どちらか自分が優れていると思っている治療法に割り当てられることを望みます。
特に重要な患者(有力者や親しい人の紹介患者)、自己主張の強い患者では、優れていると信じている方の治療の割り付けを行いたくなります。
このため、封筒法では無治療群に割り当てられた場合にもう一枚封筒を破いたり、勝手に治療群に変更したりということが高い確率で発生するため、封筒法を採用して、治療群と無治療群に割り付けると、治療群の患者数が無治療群の患者数よりも多くなります。

こうした不正を防いで、医学研究の質を高めるためには、センターに登録した患者しか研究に組み入れないようにした上で、センターで割付を行って通知するやり方の採用が必要です。このようにすれば、不正な割付は不可能になります。

3.症例の適格性の確認

一般に臨床医学研究においては、研究の対象とする患者には条件があります。
例えば「貧血がないこと(Hbが12g/dl以上)」「年齢18歳から65歳まで」等です。これらの研究の対象として、医学研究に組み入れる患者の条件の確認のことを適格性の確認と読んでいます。
担当の医師が適格性の確認をしただけでは、質の高い研究とはみなされません。なぜなら、適格性の条件を満たしていない症例が研究に組み入れられてしまうこと(適格性の確認のための条件をひとつひとつすべてチェックすることをしないで研究に組み入れてしまう等によって)が高い頻度で発生することが経験的に知られているからです。
不適格な患者の組み入れを最低限度に減らすためには、研究への組み入れ(登録)の際に作成した適格性確認のための条件のチェックリストを担当医がすべてチェックして(明示的に確認をして)、すべての条件がチェックされており(明示的に確認されており)、しかもその内容が条件を満たしていることをセンターが確認してからでないと、登録できないようにする必要があります。
このためにセンターが必須なのです。

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