1. HOME
  2. 研究紹介

木内貴弘 研究紹介


Ⅰ.トピック的な研究のご紹介

集合論にもとづく臨床疾病分類構築に関する理論を提唱いたしました。

従来、オントロジーの分野で一般的に行われてきたようにis_aやpart_of等を用いて、疾病名称の関係を規定するのではなく、臨床的な情報からの集合論的な定義に基づいて臨床疾病分類体系を実現する方法論について提案を行いました。 提案した理論では、まず臨床的な情報をベクトルデータが表現できると仮定します。 標準化の問題、特にカテゴリー分類をどうするかとう実際的な問題(現実的に解決が非常に難しい問題)はさておいて、少なくとも有限次元のベクトルデータとして表現できることは確実です。 この理論では、疾病の定義は、臨床的に判定可能な情報から、定義されると考えます。 「心筋梗塞」について考察してみましょう。 「心筋梗塞」には、実際には異なる様々な意味があります。

例1.臨床的に診断された実際の患者の心筋梗塞
例2.死後の病理解剖で診断された無症候の心筋梗塞
例3.実験で動物へ人工的に作られた心筋梗塞

上記3者は、同じ心筋梗塞という言葉で表現されていますが、実際には意味は違っています。この理論では、臨床的に利用・判定可能な情報のみを利用することを想定しています。 つまり「心筋梗塞」とは、臨床的に判定可能な情報から規定される患者の状態です。実際に「心筋梗塞」がおきているのかどうかを判定するのは臨床的に利用可能な情報からのみです。 患者の臨床的に判定可能な情報から規定される状態の取りうる範囲のベクトルデータの集合をDと定義します。

まず「臨床的事実」を定義します。 これは、臨床的に利用可能なデータ(徴候、所見、検査データ、病理所見等)からなります。 「臨床的事実」は、剖検結果や疾病の生物学的性質とは関係していません。あくまでも患者の生前に臨床的に無理のない範囲で判定できるデータを意味します。

更に「臨床的状態」を定義します。「臨床的状態」は、疾病、症候群、臨床的な状況(ショックや呼吸不全等)の総称的な表現です。「臨床的状態」は、「臨床的事実」の組み合わせで表現されます。

  1. Kiuchi T, Ohashi Y, Sato H, Kaihara S: Methodology for the construction of a disease nomenclature and classification system for clinical use. Methods of Information in Medicine 34:511-517, 1995

Page Top