概要
症例データレポジトリは、研究者が自身の実施した臨床研究症例の匿名化したオリジナルのデータセットを、研究者自身でUMINサーバに保管し、UMINがその内容を第三者に担保するものです。
これにより、 欧米で注目を浴びている臨床試験症例データのデータシェアリングが可能になります。データシェアリングには、1)個別症例データのメタアナリシスへの活用、2)新たなデータ解析による新しい知見の発見、3)統計解析のし直しによるチェック等が可能となります。
本システムは、すべての臨床試験が対象で、すべての研究者が利用できます。
UMIN臨床試験登録システムへ臨床試験登録した臨床試験とUMIN以外の臨床試験登録サイトの登録した場合で、ご利用の方法が異なりますので、ご注意ください。
本システムの特徴は下記です。
- 症例データのデータシェアリングのために、すべての研究者が活用できる症例データレポジトリを提供します。(UMIN ID必須)
- バックアップやセキュリティ体制が整っているUMINを利用する為、将来に向けてデータが散逸することがなく、長期保存が可能です。
- データのダウンロードは、研究者側が許可したUMIN ID所有者(特定のUMIN IDまたは、全UMIN ID所有者を設定)のみに限定されます。一般への公開はされません。
注意点
◇研究者

個人情報(カルテ番号含む)は載せられませんので、匿名化していただく必要がございます。

匿名化の方法は研究者に委ねられます。

データを更新した場合は、全ての履歴を記録します。

症例データレポジトリシステムにアップロードするオリジナルのデータセット(研究計画書・研究症例データ仕様書・研究症例データ)は、
一度アップロードすると上書きはできますが、削除できませんのでご注意ください。ダウンロード者は最新のデータファイルのみアクセスができます。
◇ダウンロード者

研究者側が許可した、UMIN IDでのみダウンロードが可能です。

ダウンロード者のUMIN ID、氏名、所属、ダウンロードしたファイル名が研究者側に通知されます。
背景
臨床研究における不正事件等
臨床研究において、データ捏造・改竄、統計解析方法や解析結果の開示などについてのいくつかの不正事件が、日本国内及び海外で明るみに出て大きな社会的な問題となっています。
このため多くの国民が不安を感じており、臨床研究の不正を防止するための対策の強化が求められてきました。
また、海外からみて日本で実施される臨床研究の信頼性が疑われ日本から投稿した臨床研究の論文が、査読で不利になりかねない事態となっています。
これらの状況から、国立大学附属病院長会議は「臨床研究の信頼性確保と利益相反の管理に関する緊急対策」を厚生労働省の高血圧症治療薬の臨床研究事案に関する検討会は「高血圧症治療薬の臨床研究事案を踏まえた対応及び再発防止策について(中間とりまとめ案)」のとりまとめを行っています。後者では、今回の事案が起こった背景、原因と問題点のひとつとして「データの信憑性に関して検証を行なおうとしても多くの関連資料がすでに廃棄されていた」ということが挙げられ、再発防止策として「臨床研究関連資料の保管義務」を提案されています。
臨床試験登録で解決できない問題点
臨床試験登録は、臨床研究の不正の防止のために一定の役割を果たしてきました。
その一方で、臨床研究データそのものが改竄・捏造されてしまった場合や研究者(研究資金提供者も含む)側に不利な統計解析結果(特に主要評価項目以外の評価結果)が公表されない等の場合には、臨床試験登録だけでは不正を防止することができていませんでした。これは、第三者が症例オリジナルのデータセットにアクセスするための公的なしくみがなかったことによります。
海外には、米国医薬食品局(FDA=Food and Drug Administration)が製薬会社の治験に対して構築した症例データレポジトリや米国NIH(National Institutes of Health)が研究費を出している臨床研究に対して構築した症例データレポジトリの例はありますが、世界のすべての研究者が活用できる症例データレポジトリの提供は、我々が把握しているかぎり、世界には存在していませんでした。
UMIN症例データレポジトリ
UMIN症例データレポジトリは、臨床試験登録だけではなしえなかった以下の臨床研究不正の予防の役割を担うものです。
- 相互チェック・査察のためのデータの正本の内容を第三者が担保すること
- 論文で公表された以外の統計解析を行うことができること
- 症例データの品質について、最低限度の確認ができること
ただ、臨床試験登録システムと症例データレポジトリだけでは、臨床試験データの品質保証になるわけではなく、これらだけで完全に臨床研究の不正を防ぐことはできないことに注意する必要があります。
国立大学附属病院長会議の取りまとめた「臨床研究の信頼性確保と利益相反の管理に関する緊急対策」及び厚生労働省の高血圧症治療薬の臨床研究事案に関する検討委員会が出した「高血圧症治療薬の臨床研究事案を踏まえた対応及び再発防止策について(中間とりまとめ)」等に記述された様々な施策を併用するとともに相互チェック・査察等により実際の電子カルテデータとの照合を実施する必要があります。