「国民体育大会のメディカルチェックの現状と将来」

「国民体育大会のメディカルチェックの現状と将来」

 

演題「トレーナー協会の立場とシステムの活用」

広島大学医学部保健学科 浦辺幸夫

 

 アスレティック・トレーナー(Athletic Trainer)はアメリカで生まれた職業であるが,我が国でも日本体育協会が公認アスレティック・トレーナーの認定事業を始めている。国民体育大会においてはスポーツ・ドクターが都道府県単位で派遣されることが以前から行われてきたが,スポーツ・ドクターとアスレティック・トレーナーがチームを組んでメディカル・サポートを行うことはまだ十分浸透しておらず,単発的な活動の域を出ていなかったと思われる。広島県では今回の国民体育大会がスポーツ・ドクターとチームを組むようになって以来4回目の組織的なトレーナー派遣となる。今回のシンポジウムではこのようなトレーナーの活動を紹介し,どのような効果が期待されているのかを考察したい。

広島県では平成6年に第12回アジア競技大会が開催され,スポーツ医・科学への認識が高まり,同年に広島県トレーナー協会(以下トレーナー協会)を設立するに至った。平成7年度の第50回国民体育大会(ふくしま国体)には14名のトレーナーが帯同し,スポーツドクターとともに選手の健康管理にあたった。さらに,平成8年の第51回国民体育大会(ひろしま国体)では32名,昨年のなみはや国体では20名が帯同し,競技団体との関係が深まるとともにサポート体制が徐々に整理され定着しつつある。

広島県トレーナー協会は広島県体育協会のスポーツ科学委員会に属しており,また広島県スポーツドクター協会と連携している。この2つの団体からの支援が協会の発足より継続しており,運営を効率的に行うために不可欠だったと考える。このような組織は全国に先鞭をつけ,その後富山県でも発足し,さらにいくつかの県で準備中と聞く。現在会員は120名程度であり,理学療法士,体育系大学卒業者,栄養士,鍼灸・マッサージ師,柔道整復師など様々な職種で構成されている。ひとくちにトレーナー活動と言ってもこのように幅広い職業的な背景を有する会員が集まるため,よい意味で特徴を出しながら学際的な協力体制を築いている。日本体育協会の公認アスレティック・トレーナーも平成9年現在9名おり,西日本では最も多い県のひとつになっていることでも熱意が伺えよう。

国体への帯同はトレーナー協会の重要な事業のひとつであるが,会員の技術・知識の研鑽のためにその他に多くの行事を主催している。年4回発行している会報の内容も充実してきた。種々のワークショップを重ね,予選を兼ねたミニ国体へのトレーナー帯同や,国体に向けた強化合宿などの現場にできるだけ多くの会員が参加し,現場とのコミュニケーションを深めている。平成9年の研修会では一般参加を含め370名が集まるまでになり,年会誌も発行できた。

今後の方向としては,スポーツ・ドクターとの協調を一層深めて事業を推進すること,独自の研究を進めること,会員の資質を高め地域のスポーツ活動にさらに貢献することなどが必要と考えている。

 

参考文献

大成淨志:広島県体育協会スポーツ医学委員会の活動,臨床スポーツ医学 14(8):892-895,1997

 





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