国体終了後の医・科学サポート
広島原対協健康管理・増進センター、広島県体協スポーツ医学委員会
佐々木英夫
広島県では平成8年に第51回国民体育大会(ひろしま国体)が開催された。その2年前の平成6年には広島市において第
12回アジア競技大会が開催されており、この2つの大きなスポーツ大会を契機にスポーツ医・トレーナーの役割とその重要性が県体育協会や広島県医師会において再認識されることとなった。それによって新たな医師の組織化や再編成が行われ、大会が終了した後もそのシステムを活かした運営が行われてきている。ここでは、広島県におけるスポーツ関係医師・トレーナーの組織とその活動について紹介する。広島県には県医師会の部会のひとつである「スポーツ医部会」と県体協の専門委員会のひとつである「スポーツ医学委員会(以下、医学委員会)」の2つの組織が存在する。前者は平成4年に設立され、主な活動としてスポーツ大会の医事・救護のほか、健康スポーツに関わる研修、医師会員のスポーツと健康に関する普及啓発事業などを行っている。後者は平成6年度に従来のスポーツ医科学委員会を改組し、分離独立されたもので、国体選手の医・科学サポートを主とした事業を行っている。これらの組織の構成員の母体としては昭和
63年に設立された「広島県スポーツドクター協会」が基礎となっている。医学委員会の主な活動内容は、@国体選手のメディカルチェック、A国体への帯同、B選手・競技団体への啓発事業、Cその他(スポーツ栄養に関する研究・サポート、トレーナーの育成事業)などである。メディカルチェックは選手の健康管理や障害防止とともに競技力向上に役立てることを目的として実施されており、内容は問診、内科的・整形外科的診察、血液・尿検査、循環器検査、体力測定、運動負荷試験など多項目にわたっている。結果の判定は医学委員会の複数のメンバーによって行われ、「異常なし」、「要指導」、「要精密検査」、「要治療」の4段階に判定して診断書とともに指導書を作成して、選手・競技団体に送っている。通年的に受診できるが、平成9年度からは大会直前に簡易チェックも実施し、コンデイショニングにも役立てている。また、メディカルチェックのみでは選手の健康管理や競技力向上についての知識の普及は十分ではないとも考えられるので、これを補うものとしてスポーツ医学に関するリーフレットあるいは小冊子を発刊している。
広島県の国体への帯同事業は、多数の医師が参加し、各競技団体毎にトレーナーと連携してチームドクター的性格をもって選手の健康管理にあたっている、という特徴がある。帯同後のアンケートによる調査では大会期間中の活動は多岐にわたっており、トレーナーとの協調も良好で帯同ドクターの参加意義はきわめて高い。この帯同を契機として競技団体のチームドクターとして活動し始める医師も多い。
このように広島県においては、県体協や県医師会などの協力のもとに選手の医・科学サポートが比較的順調に進んできているが、未だ課題もあり、更なる進展を目指して努力している。
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