「指導者の立場とシステムの活用」

「指導者の立場とシステムの活用」

三辻 訓(県立神奈川総合高校)

 

1988年に医学専門委員会の指導によりジュニア選手を中心に開始されたメディカルチェック・体力測定は、1994年までに延べ30種目に実施されたが、組織的には一部に定着したにすぎなかった。しかし、健康管理としての意義や重要性の認識は高く、チーム独自で、ドクターやトレーナーを導入している例もある。

 ハンドボールでは1997年の体力測定の実施以来継続しており、スポーツ障害の特徴や体力の状況が報告されている。メディカルサポートでは、河野卓也先生・羽鳥裕先生に継続的にご協力いただき、メディカルチェック、指導者研修会でご指導をいただいている。さらにトップチームを中心に、合宿や試合にも帯同頂いている。1995年少年男子(横浜商工高校)の三冠達成やインターハイ連続優勝、成年女子の4年連続(94〜97)全日本総合出場など、多大な成果を結んでいる。1994年から、県立体育センターと県体育協会の協力により、メディカルチェック・体力測定が継続的に実施されており、今後の発展に期待している。

 1991年に設立された生涯スポーツ振興会議に、1993年に競技力向上推進本部が発足し、種目別に5部会が設けられ、ディレクター・スポーツドクター・栄養インストラクター・カウンセラー・トレーニングドクター・マネジャーが配置され、諸会議が開催されている。

 県高体連強化普及委員会では、1988年からスポーツ医科学の導入のために、体力測定から運動処方を中心テーマに、指導者を中心に研修会を実施してきた。1995年には、強化普及委員会に安全対策委員会が加わり、「スポーツ医科学でもうひとつのディフェンス」をテーマに、足関節・膝・腰と部位別に、高尾良英先生に講義をいただき、唐沢豊先生にテーピングや補強運動の実習指導をしていただいた。1996年には4ヶ月にわたり、「スポーツ医科学でもうひとつのオフェンス」をテーマに、実際に選手に医師による医事相談、理学療法士によるテーピング等の処置を、さらにストレングスコーチが筋力トレーニング指導を一連のサポートとして、36種目の強化普及委員・安全対策委員の前で、継続的に実施した。さらに、貧血から食事の問題を加えて、6回にわたる研修会を実施した。1997年には県高体連医科学サポート事業として、@種目別事業(剣道、卓球、バレーボール、自転車の4専門部を指定)A協力校事業(2校を協力校として毎月1回事業実施)を展開している。剣道は、体力測定・メディカルチェック。バレーボールは、メディカルチェック・トレーニング指導。自転車は、メディカルチェック。卓球は、メディカルチェック・トレーニング指導と各種目に合わせたサポートを実施。協力校事業は、ドクター・理学療法士・ストレングスコーチが、月1回指定2校で、様々な選手にサポートしている。1998年は、このサポート事業を継続するとともに、以前実施したドクターとPTによる部位別の研修会を指導者への啓蒙として計画している。

 現場の選手・コーチは医科学サポートの有効性を理解し、期待している。現実に成績を残しているチームは何らかのサポートがある。しかし、それは現場の意欲と一部関係者のマンパワーによるものである。競技団体や行政による組織的な対応は、時間も費用もかかり、機能しているとは言い難い。県高体連は現場主体にサポート事業をスタートさせたが、すべてが現場の指導者や選手の要望によるところである。今後、医科学によるサポートを広げていくためには、現場の意識改革と各組織の連携が課題となる。





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