医・科学サポートのフィードバックについて

医・科学サポートのフィードバックについて

 

(財)京都学際研究所付属病院整形外科

原邦夫、清水長司、杉ノ下武彦

 同研究所 スポーツ医科学センター

   足立哲司、舌正史、守田武志、

   前田昭美、吉田昌平                

    

(目的)

スポーツ競技者に対する医・科学的サポートは医学的な見地から身体に異常のある選手を競技前にチェックし、競技による危険が生ずることを未然に防ぐことが初期の目的である。これに加えて、競技に参加する選手の能力を向上させるために、体力面、栄養面、心理面のサポートも必要となっている。京都府体育協会では平成5年度から「国体選手の健康管理に関するガイドライン(案)」を基本として国体選手のメディカルチェックを実施し、さらに競技力向上に資するため体力サポートを実施してきたので結果およびフィードバックについて報告する。

(方法・対象)

対象は京都府国体代表選手93名(少年男子)年齢は16〜18歳(平均17.1歳)で競技種目は水球、サッカーである。メディカルチェックは内科的メディカルチェックをドクターの直接検診により行い、臨床検査は心電図、尿、血液生化学検査について行った。体力サポートは、筋力測定をCybex systemにより下肢では膝関節、足関節に対し行い、上肢では肩関節に対して行い評価した。全身持久力の測定をトレッドミルによる漸増負荷試験を行い、呼気ガス分析機(ミナト社、エアロモニターAE−280E)を用いて行った。呼気ガス分析はVentiratory Threshold(VT),Respiratory Compensation Threshold(RCT)の各運動強度と最大酸素摂取量(VOMAX)の測定、評価を行った。

(結果およびフィードバック)

 メディカルチェックのフィードバックは心電図検査にて心室性期外収縮を認めた2名について同付属病院循環器内科にて心エコーの精査を行った。血液生化学検査の異常値はCPKの高値、貧血によるHbの低値などを10名に認めた。これらの選手は全員大会出場前に再検査を行い出場に支障がないと判断され府体育協会スポーツ科学委員会を通じて国体チーム監督および本人へ連絡した。体力サポートの結果では膝伸展筋力の評価で体重あたりのピークトルクがサッカーは平成6年度3.51N・m/kgが平成7年度3.78N・m/kgに増加したが、有酸素運動能力を評価したVTポイントの走速度は9.77kmhから8.45km/hに低下した。水球では膝筋力は3.27N・m/kgが3.16N・m/kgVTポイントは8.61km/hから8.87km/hへと有酸素運動能力が上昇した。

(考察)

 医・科学サポートを行う場合重要な点はいかにフィードバックを行うかである。メディカルチェックは大会直前に行って出場の可不可を短期間に再検査を含め判定を行うことで意義のあるものと考える。しかし、今回行った体力サポートなどの競技力向上を目的とした医・科学サポートでは測定時期が大会直前のため客観的データを用いた強化期間の問題や選抜チームのため長期の一貫したトレーニングが困難であるなどの問題があった。測定結果を競技力に反映させるには強化合宿などの段階からトレーニングを指導する必要がある。今後、医・科学サポートが外傷、障害のチェック、予防から一歩踏み込んで競技力向上に寄与するためには各競技の指導者との協力がより重要となると考える。       




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