要約−第8章
第8章 高齢者支援情報通信システムの整備目標
8−1 整備目標設定の必要性
わが国の人口の高齢化は短期間に急速に進展するため、高齢化に対する対応も具体
的な将来展望とスケジュールに基づいて、迅速に進める必要がある。したがって今の
うちから、情報長寿社会の実現に必要な高齢者支援情報通信システムをいつまでにど
の程度まで整備するかという具体的な目標を定め、段階的に整備を進めていくべきで
ある。
この計画の策定に当たっては、システムニーズの大きさ、緊急性、代替手段の有無
などから判断して、プライオリティの高いものから早急に整備を進めていく必要があ
る。また、同時期に次世代情報通信インフラの整備が進むことを踏まえ、インフラ整
備の進展に合わせた整備目標とし、次世代情報通信インフラの積極的な活用を図って
いくべきである。
8−2 取り組むべき高齢者支援情報通信システムの整理
今回の調査・実験で把握したサービス利用ニーズや技術的実現性などを考慮すると、
早急に取り組むべき情報通信システムと、中長期的な視点で取り組むべき情報通信シ
ステムに区別して考えることができる。(図6)
- (1)早急にシステムの整備に取り組むべきもの
- 徘徊老人保護サービス、広域自動緊急通報サービス、遠隔医療相談サービス、遠隔介
護相談サービス、生活情報サービス、要介護者見守りシステム、ボランティア情報サー
ビスなど
- (2)中長期的な視点でシステムの整備に取り組むべきもの
- 高齢者就業支援サービス(仕事紹介サービス、在宅就業システム)、生涯学習(習い
事)サービスなど
8−3 高齢者支援情報通信システムの整備目標案
今後、西暦2010年までに全国の家庭まで光ファイバ網が段階的に整備される計画に
なっており、高齢者支援情報通信システムの整備目標も、これを踏まえたものにすべ
きである。
西暦2010年までの整備目標は概ね次のように想定できる。なお、光ファイバ網が先
行的に整備されるモデル地域においては、システムの整備も前倒しで進められる必要
がある。
- 西暦2000年までに、緊急性の高いシステム、ニーズの高いシステムの内、現在の
インフラ、技術をベースに実現できるシステムについて、それらを必要とする高齢者
が利用できる環境を整える(広域緊急通報システム、徘徊老人保護システム、簡易テ
レビ電話、介護支援スタッフ用携帯電話など)。これらシステムは、光ファイバ網が
十分に整備されるまでの補完的なシステムまたは光ファイバ網を利用した高度なシス
テムに円滑に移行するための基礎的システムとして機能する。
- 西暦2005年までに、全国の高齢者支援施設(ケア・コーディネーションセンター
等)を中心とした光ファイバ通信網の整備を進め、総合的な高齢者介護支援ネットワ
ークを実現する。また、これらの光ファイバ網を有効に活用できる介護支援アプリケ
ーションや機器を開発し、提供する。(本格的な在宅医療・介護相談、福祉データベ
ース、福祉ショッピングシステム、介護スタッフ用携帯端末等)
- 全国的な光ファイバ網の整備が完了する2010年には、必要な機器、アプリケーショ
ンサービスの開発・整備を完了させ、すべての高齢者が医療・介護のみならず生活全
般にわたって情報通信を有効に活用できる環境を実現する。(高齢者向けマルチメデ
ィア端末、各種の高齢者ネットワーク、就業支援システム等)
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