要約−第9章

第9章 情報長寿社会の実現に向けてとるべき施策

9−1 今後の施策推進に求められる考え方

 情報通信を活用した情報長寿社会の実現には広範な領域をカバーする総合的な取り 組みが必要であり、関係方面との協力によってこれらを並行して進めていく必要があ る。特に、高齢者支援情報通信市場は今後、市場規模が急速に拡大していくと見込ま れるので、民間による積極的な市場開拓によりサービスの充実を図っていくことも重 要である。

 今後20〜30年間は、人口の高齢化、在宅介護支援などの高齢者福祉環境の整備・充 実、情報通信技術の進歩や基盤整備がいずれも急速に進むと見込まれる。これら諸環 境の変化を随時考慮しながら、柔軟に施策を展開していくことが求められる。

9−2 進めていくべき施策

施策1:情報長寿社会に関する将来ビジョンの明確化と制度改善の推進
・中長期的な施策の指針となる将来ビジョンを厚生省等と協力して国民各層の参画のもとに策定
・高齢者支援での情報通信活用を促進する関係諸制度の改善を推進

施策2:在宅高齢者、介護家族支援のための情報通信システム整備の推進
・有望システムの地域実験等の実施
・無線通信利用システムの技術面・制度面での検討
・有用性が認められたシステムの整備・普及支援策について検討

施策3:高齢者福祉関連施設の情報通信機能整備の推進
・スタッフの介護活動を支援する情報通信機器の導入支援策を検討
・高齢者支援情報通信システムのセンター機能を果たすべき福祉関連施設の設備投資、システム構築、スタッフ教育等に対する支援策を検討・実施
・福祉関連施設間での情報共有化、ネットワーク化を推進するしくみの構築について、厚生省等と協力して検討

施策4:情報通信システムを使ったライフプロモーションサービスの推進
・高齢者の社会参加支援、生きがい支援のための情報通信活用に関する調査研究を引き続き実施
・地域実験の場等を通じて、情報通信システムを使ったライフプロモーションサービスの有効性等を検証
・パソコン通信サービス等でのライフプロモーションサービスの提供を推進

施策5:必要な技術開発・機器開発の推進
・高度情報通信基盤等を活用した高齢者支援技術、機器開発を推進
・高齢者が使いやすい機器デザイン、機能デザインの研究と機器開発を推進
・高齢者支援情報通信システム、機器について必要な標準化を推進
・高齢者支援情報通信機器の開発や情報提供、展示等を行うセンターを設置・充実

施策6:低負担での支援システム、サービス利用のための制度の整備
・無料または低額での機器貸与制度、通信料金の割引や公的機関による一部負担制度等、利用負担軽減のための制度を検討

施策7:必要な教育、人材育成の推進
・高齢者支援関係者のソフト開発等の研修施設、制度の設置を検討

施策8:高齢者支援ニーズに合致した情報通信基盤整備の推進
・過疎地域等において高齢者支援に必要な高度情報通信基盤整備を早急に進めるための支援策を検討・実施

9−3 施策推進に当たっての留意点

 高齢者支援情報通信システムの整備と活用が円滑に進むよう、情報通信システムそ のものの整備に当たっては以下の点に留意し、適切な対応をとっていく必要がある、

  1. 各高齢者、各家庭、各地域の実情に合わせた支援サービスの実現
  2. 高齢者が積極的に生活することを支援する姿勢
  3. 人を技術に合わせるのでなく、技術を人に合わせる考え方での技術開発
  4. 高齢者支援におけるリエンジニアリング
  5. 負担能力に応じた費用負担の実現(公平と平等)
  6. 都市部とそれ以外の地域との格差への配慮
  7. 個人情報等のセキュリティ対策、プライバシーへの十分な配慮
  8. 地域・広域の役割分担と連携
  9. 官と民、NPOとの役割分担と連携
  10. 国際的連携の推進

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