要約−第7章

第7章 高齢者支援情報通信システムの経済的側面の検討

7−1 高齢者支援情報通信システムの市場規模予測

 高齢化の急速な進展に伴い、高齢者の消費活動の規模も急速に伸びていくと予測さ れている。本調査研究会で実施した高齢者消費市場規模予測によれば、西暦1989年に は18兆円であった高齢者消費市場が、西暦2010年には約124兆円に拡大すると見込ま れる。また、高齢者支援情報通信システムの整備が順調に進めば、西暦2010年には、 高齢者消費市場全体の15.4%に当たる約19兆円が、情報通信関連市場となるものと見 込まれる。

 このように、情報長寿社会に向かって、高齢者支援情報通信システムやサービスは 市場として大きく拡大する可能性を持っている。(表4)

   表4 2010年の高齢者消費市場と情報通信関連市場の予測

             高齢者消費市場
          情報通信関連   (B/A)
          (A)  市場(B)  (%)
 食料        19.43   0.00    0.00
 住居         6.61   0.17    2.51
 光熱・水道      6.39   0.00    0.00
 家具・家事用品    3.14   0.00    0.00
 被服及び履き物    5.30   0.00    0.00
 保健医療       9.78   0.53    5.46
 交通・通信     17.62   6.79   38.52
 教育         1.11   0.02    1.41
 教養娯楽      21.88  10.69   48.84
 その他の消費支出  32.58   0.91    2.80
 合 計      123.84  19.10   15.42

          情報通信関連機器市場
 家庭            1.48
 医療施設・老人福祉施設等  0.04
 合計            1.52

7−2 費用負担に関する基本的な考え方

 高齢者支援情報通信システムを整備し活用していくには、高齢者等のサービス利用 者側とサービス提供側の双方でコストが発生する。一方、高齢者世帯での費用負担能 力には限界があるため、高齢者支援情報通信システムの整備範囲や負担軽減措置の在 り方等の点について議論し、社会的な合意を形成していく必要がある。

 利用者側(高齢者や介護家族)でのコストについては、利用者の自己負担を基本と しつつも、負担能力を超える部分については何らかの公的支援が必要になろう。シス テム構築コストについては、今後整備が進む情報通信インフラを最大限活用すること でコストの低減が図れるが、システムによっては、インフラ整備が完了する前に強い 利用ニーズのあるものもある。これらのシステムを個別に先行的に整備するには大き なコストがかかるため、何らかの公的な支援措置が必要と考えられる。(図5

 いずれにしても、高齢者支援情報通信システムは十分な費用対効果の検討の上に整 備されるべきであり、システム導入によってかえって高齢者支援のための社会的な負 担を増加させるようなことは避けなければならない。


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