要約−第2章

第2章 情報通信による高齢者支援の考え方

2−1 将来の高齢者福祉のイメージ

 21世紀初頭の長寿社会における高齢者福祉のスタイルは、「要介護高齢者=介護 福祉サービス、元気な高齢者=生きがいサービス」という二分法的な考え方ではなく、 ひとりひとりの高齢者が積極的に生活していくために必要な支援をそれぞれに合った 最適な形で提供するという連続的イメージでの高齢者支援になると考えられる。

 高齢者福祉の中でも介護の分野については、今後、在宅介護や小規模・分散型でよ り開放的な施設での介護が中心になっていくと考えられる。 このような高齢者介護 形態の分散化と多様化に対応して、地域社会のネットワークを基盤とした、オープン な高齢者介護・支援体制を整備していくことが必要である。

 一方、介護以外の面では、高齢者の生きがいや積極的な生活を可能にするさまざま な支援サービスを提供していくことが考えられる。特に、高齢者が自分の力で生活し、 加齢による心身機能の衰えを抑え、より長く元気でいられるようにする「予防的観 点」に基づいた支援を行うことが重要である。

 これらの高齢者支援を行う主体も、政府や地方自治体、あるいは民間企業などばか りでなく、市民の自発的・自己増殖的なボランタリー・ネットワークが大きな役割を 果たすようになると考えられる。

2−2 情報通信による高齢者支援の基本コンセプト

 分散型での高齢者支援では、高齢者とその支援関係者はお互いに別々の場所にいる ため、コミュニケーションや遠隔支援サービス等を情報通信によって十分に確保し、 高齢者が安心して積極的に生活できる環境を提供することが特に重要になる。また、 高齢者の生活の場になる住宅や小規模施設を高齢者向けの構造にしたり、さらに街全 体を高齢者にとって活動しやすい環境にする上でも、情報通信の活用は不可欠である。 これらのニーズに答えていくことによって、未踏高齢社会における情報通信は現在よ りもはるかに幅広くかつ重要な役割を担うことになる。(図1図2

 今後実現すべき情報通信による高齢者支援の概念を整理すると、次のようになる。

 まず基本的な情報通信活用分野として、高齢者に必要な医療、保健、福祉サービス を提供する医療・保健ネットワーク、福祉サービスネットワーク、そして高齢者の趣 味や交流、社会参加等を支援する生活支援ネットワークがある。さらに、情報通信に よりこれらの支援サービス相互を有機的に結び付け、在宅介護等を総合的に支援する 介護支援(トータルケアサービス)や高齢者の生きがいや生活の質を総合的に高める 参加と選択支援(ライフプロモーションサービス)を実現していく。(図3

 このように、情報通信の活用によって個々の高齢者が必要な支援を受け、安心して 積極的に生活できる環境を実現した社会を「情報長寿社会」(Info-Aging-Society) と呼ぶことにする。「情報長寿社会」は、高齢化社会に向けて情報通信整備・充実を 進める際に我々が目指すべき社会像である。


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