高齢者福祉の中でも介護の分野については、今後、在宅介護や小規模・分散型でよ り開放的な施設での介護が中心になっていくと考えられる。 このような高齢者介護 形態の分散化と多様化に対応して、地域社会のネットワークを基盤とした、オープン な高齢者介護・支援体制を整備していくことが必要である。
一方、介護以外の面では、高齢者の生きがいや積極的な生活を可能にするさまざま な支援サービスを提供していくことが考えられる。特に、高齢者が自分の力で生活し、 加齢による心身機能の衰えを抑え、より長く元気でいられるようにする「予防的観 点」に基づいた支援を行うことが重要である。
これらの高齢者支援を行う主体も、政府や地方自治体、あるいは民間企業などばか りでなく、市民の自発的・自己増殖的なボランタリー・ネットワークが大きな役割を 果たすようになると考えられる。
今後実現すべき情報通信による高齢者支援の概念を整理すると、次のようになる。
まず基本的な情報通信活用分野として、高齢者に必要な医療、保健、福祉サービス を提供する医療・保健ネットワーク、福祉サービスネットワーク、そして高齢者の趣 味や交流、社会参加等を支援する生活支援ネットワークがある。さらに、情報通信に よりこれらの支援サービス相互を有機的に結び付け、在宅介護等を総合的に支援する 介護支援(トータルケアサービス)や高齢者の生きがいや生活の質を総合的に高める 参加と選択支援(ライフプロモーションサービス)を実現していく。(図3)
このように、情報通信の活用によって個々の高齢者が必要な支援を受け、安心して 積極的に生活できる環境を実現した社会を「情報長寿社会」(Info-Aging-Society) と呼ぶことにする。「情報長寿社会」は、高齢化社会に向けて情報通信整備・充実を 進める際に我々が目指すべき社会像である。