要約−第1章

第1章 高齢化社会における情報通信の重要性

1−1 「未踏高齢社会」の到来

 わが国の人口構成は、長寿化と出生率の低下によって、急速に高齢化が進んでいる。 厚生省の将来人口予測によれば、西暦2010年には、65歳以上の高齢者の比率は21.3 %に達し、わが国は世界一の高齢社会を迎えることになる。我々は文字通り「未踏高 齢社会」の入り口に立っていると言える。

 このような急速な高齢化の進展に対して適切な対処がとられなければ、社会の活力 を奪い、福祉の低下を招き、暮らしにくい社会を生むことにもなりかねない。我々は 医療・福祉サービスの効率化や生産性の向上など、今から必要な方策を講じていく必 要がある。また、我々が講じていくべき方策は、わが国に続いて高齢化が進む他の先 進諸国のモデルになるべきものであることを十分に認識する必要がある。

1−2 活力ある高齢社会構築の基本理念

 我々は未踏高齢社会に向けて、誰もができるだけ長く元気に生活でき、また、体力 や心身機能の低下があってもそれをカバーし、一生を通じて生き生きと暮らしていけ る社会環境を作っていくことが求められている。そのためには、これまでに生み出し てきた様々な技術を最大限に活用し、また必要な技術の開発を進め、技術(テクノロ ジー)と人間(ヒューマンウェア)との調和を図ることによって、社会に過大な負担 を生まない高齢者支援のしくみを作っていくことが必要になる。また、市民が自発 的・自己増殖的にボランティア活動を行う「参加型福祉社会」として未踏高齢社会を 捉えていく必要がある。

1−3 マルチメディア生活文化の時代の到来

 様々な技術の中でも、情報通信技術の活用は特に重要である。高齢化の進展と時を 同じくして全国的な光ファイバ網整備が進められることになっており、21世紀初頭 は、マルチメディア情報通信を基盤とした全く新しい次元の生活文化環境が展開され る時代でもある。そこでは、マルチメディア情報通信を活用した様々な生活支援サー ビスや娯楽が広く提供されるばかりでなく、人々の就業や教育、余暇活動など生活全 般のスタイルも大きく変わるものと考えられている。

1−4 未踏高齢社会における情報通信

 そして、急速に進歩する情報通信はまた、未踏高齢社会を支える最も重要な基盤に なるであろう。なぜならば、情報通信が可能にする人と人とのふれあいやコミュニケ ーションは、これから充実させていくべき高齢者支援のあらゆる面で、その土台とな る要素だからである。もちろん、情報通信の活用がかえって高齢者との直接のふれあ いを妨げないよう、情報通信を人々のふれあいの代替手段としてではなく、人々のふ れあいや助け合い、協力の可能性を広げる手段として活用していくことが大切である。

 以上のような基本理念を踏まえて、我々は早急に、未踏高齢社会に向けてどのよう な社会を構築していくのか、またその中で情報通信をどのような形で活用していくの かについて、具体的な将来像を描く必要がある。


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