35・30周年記念誌

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東京大学よりのご挨拶

東京大学 理事・副学長
齊藤 延人

 本学医学部附属病院大学病院医療情報ネットワーク(UMIN)の35周年、誠におめでとうございます。大学本部としても、UMIN設立や10周年、20周年の記念行事に関わらせていただきましたが、改めて、大きく成長を遂げたUMINの現状と、時の流れの速さに深い感慨を覚えております。
 UMINは、全国の国立大学病院が共同で設立した組織であり、各大学病院間の情報交流の促進、多施設医学研究の支援、最新の医学・医療情報の提供、業務の合理化やデータの標準化と統計整備などを目的として設立されたと伺っております。この35年間にわたり、そのミッションを見事に果たしてこられたことに深い敬意を表します。
 UMINによる全国の医学・医療関係者への貢献は、東京大学としても誇りに思います。東京大学の使命は、研究・教育面で大きな成果をあげることに加え、国を代表するリーダーとして共同利用施設などを運用し、全国に貢献することにあります。その中でも、UMINが提供する情報インフラストラクチャーは、東京大学から全国へ提供されるサービスの中で、特に傑出したものの一つであると確信しています。UMINの活動がさらに発展し、全国の多施設にわたる関係者に引き続き貢献されることを期待しております。
 日本社会では高齢化が深刻な課題となっており、社会保障や医療の効率化、高齢者の生活支援、少子高齢化に伴う労働力不足への対応が求められています。東京大学では、高齢化対策のために幅広い学問分野と学際的な研究を結集し、高齢化研究機構を設置して取り組んでいます。疾病を抱える高齢者への治療や支援において、医学は中心的な役割を果たしており、UMINの果たしてきた情報提供の貢献に感謝するとともに、学際的な研究分野でもUMINの継続的な活用を期待しています。
 私がUMINと初めて関わったのは、UMIN電子メールが導入された頃だったと記憶しております。当時、電子メールは一般にはまだ普及しておらず、導入のハードルが高かった時代でした。その中で、医学部附属病院の教員に電子メールが一挙に普及したことは、大きな変革の一歩でした。私自身、UMINのメールアドレスをメインに、非常に便利に活用させていただきました。
 また、学会の演題登録システムの導入も、UMINの大きな功績の一つであったと思います。私の専門である脳神経外科学領域では、前任の桐野高明教授が1999年に第58回日本脳神経外科学会総会を主宰された際、日本循環器学会に倣い、インターネットを介した演題登録を導入しました。これにより、それまで紙ベースで行われていた登録作業が一挙に効率化され、新時代の到来を実感しました。
 また、卒後臨床研修医用オンライン臨床教育評価システム(PG-EPOC)もUMINを基盤として展開されてきましたが、最近ではこれと連結できる形式で、卒前臨床実習の評価システム(CC-EPOC)にも展開され、これらシステムの運用にはUMINの多大な支援を受けております。これにより、医学教育や医師養成の分野におけるUMINの多大な貢献が明確に示されています。
 さらに、日本脳神経外科学会の研究事業「UCAS-Japan」において、脳動脈瘤の予後に関する疫学調査がUMINのシステムを活用してオンラインで実施されました。この研究成果は、脳神経外科学における国際的な成果として高く評価されています。本研究は、本邦初のインターネットを全面的に活用した大規模疫学研究であり、オンラインデータ収集を通じて、従来の方法では難しかった効率化と精度向上を実現しました。
 令和6年(2024年)には、ノーベル賞が物理学賞と化学賞の両方で人工知能(AI)に関連する業績が評価されるなど、世界中が新たな時代の転換点を迎えています。UMINも設立当初から情報に関する先進的なシステムを導入・普及し、時代を先取りしてきました。今後、AI時代に向けてさらに飛躍し、全国の医学・医療関係者にとって欠かせない存在として、さらにご活躍いただくことを期待しております
 むすびに、全国の医学・医療関係者の皆さまには、引き続きUMINへのご支援・ご協力を賜りますようお願い申し上げます。