
35・30周年記念誌
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UMIN35周年のお祝いと更なる将来への期待
UMIN担当システムエンジニア
株式会社ChibaPlanningOffice
千葉 吉輝
UMIN設立35周年おめでとうございます。
UMINでは医学や学術研究の発展のために多種のサービスを提供してきている。そのなかの一つに医学研究支援のためのインターネット医学研究データセンター(INDICE)がある。このサービスは本原稿執筆時点で登録症例数951万例を超えておりこれは世界的にみても大変大規模なサービスとなっている。UMINセンター長の木内貴弘教授は医学の発展を目指し高品質で合理的な臨床研究の推進目的で臨床研究データの標準化に早くから着目し積極的に取り組まれてきた。
臨床研究のデータ交換の国際標準であるCDISC(Clinical Data Interchange Standards Consortium)の策定する標準規格を先駆けて採用しCDISC ODM(Operational Data Model)による個別症例データの電子的送付をINDICEで通常サービスとして利用可能とし2009年に世界初となる実際の臨床試験として福島県立医科大学附属病院と協力し実施した。実際に電子カルテから症例データをUMINセンターに電子的送付することが可能となりCDISCの実用性が実証され他の医療機関での実装の参考になることから普及が期待された。
2013年には医療機関側の電子カルテやEDC等のシステムから電子的に臨床試験データを自動送付する場合のシステム開発に必要な情報をUMIN INDICE Lower level data communication protocol of for CDISC ODMとして公開開始した。APIとして提供することによりシステム間連携が容易になり開発負担軽減が見込まれることから電子カルテからデータセンターへの個別症例データの電子的送付がより一層普及することが期待された。
教育・研修として「CDISCセミナー2008」、「CDSICセミナー2014」、「CDSICセミナー2015」、「CDISCセミナー2015(10月度)」、「2017年3月24日 CDISC公開シンポジュウム(AMEDと共催)」、「2017年6月13日 2017 TAワークショップ(CDISC、AMED、PMDAと共催)」、「2017年10月23日 CDISCシンポジュウム-標準を用いた臨床試験データマネジメントの効率化」、「2018年7月9日 アカデミアにおけるCDISC利活用ワークショップ(CDISC、PMDAと共催)」、「2019年1月29日 CDISC標準入門セミナー2018」を開催している。特に初期の開催においては日本でまだなじみの薄いCDISCに対し日本語の資料を開発し日本人による解説を実施した。そのことは後の日本における標準化の推進とCDISC普及に大きな貢献となった。木内教授は東京大学において「東京大学大学院医学系研究科公共健康医学専攻専門職修士課程「医学研究データマネジメントとCDSIC標準」(1単位)」を開発し正式な授業として開始・実施した。現在も講義が継続開催されている。
UMIN臨床試験登録システムUMIN-CTR(UMIN Clinical Trials Registry)においてCDISCが策定する臨床試験情報の登録標準であるCDISC Clinical Trial Registry(CTR)-XMLによる臨床試験登録を世界に先駆けて実現した。CTR-XMLはCDISCが2016年に策定した標準でCTR-XML標準Version1.0に基づいて作成されたXML文書によりCTRデータを登録する機能をUMIN-CTRに追加した。CDSIC CTR-XMLは主に世界保健機関(WHO)、欧州医薬品庁(EMA)EudraCTレジストリ、及び米国ClinicalTrials.govへの臨床試験レジストリ送信用の複数の臨床試験情報を保持する単一のXMLに基づいている。この単一のXMLファイルでUMIN-CTRへの登録もできるようになるため、それにより、米国、欧州、日本への登録情報を一元管理できるようになり利便性向上が期待された。
CDISC標準は日本の規制当局である医薬品医療機器総合機構(PMDA)が世界に先駆けて承認申請時に義務化した。その後米国FDAも義務化に続いた。今やCDISC標準群は治験では必須であり普通に利用されるものとなった。治験・臨床研究でUMINが研究調査し、先導的に採用し実例となることによってこの分野に果たした貢献は計り知れない。
UMINが発行するUMIN IDは利用者用IDとしてUMINが提供する各種サービスにログインするためのものである。複数のサービスを利用しようとすると通常それぞれのサービスにログイン操作が必要である。UMINでは標準規格のSAML(Security Assertion Markup Language)を利用したSSO(Single Sign On)のサービスを提供している。SSOは一度のログインでそれぞれの関連各種サービスを別途ログイン操作不要で利用できるものである。利用者にとっては手間が省けるので大変便利な技術である。システム間連連携済みであれば同一のIDで複数のシステムを横断的に利用できるので一度どれかのシステムにログインすれば、例えば電子カルテやEDC、各種報告システムなどが画面を開くだけで追加のログイン操作不要で即座に利用可能になるので操作性や業務効率が向上する。UMIN IDはフリーのIDと異なりID申請時にしっかりとした各種証明・必要書類を添付の上発行される素性のハッキリとしたIDであるから臨床試験症例登録など確実に利用者管理が必要なシステムでの利用に最適であって、かつそれらがSSOにより利便性高く利活用されれば臨床研究従事者の現場負担が大幅に軽減されることが容易に予想できる。連携システム側は個別にIDの発行や利用者管理をしなくてよくなるのでシステム運営の負担も減る。UMIN SSOはUMIN以外の外部システムとの連携も可能であるので今後より多くの医療・臨床研究支援システム等との連携が期待される。
UMINは実サービスを提供しながら医療の発展のために先陣を切って有用と思われる新技術や標準規格採用に積極的に取り組んできた。今後も業界の発展のためにより一層の活躍が期待される日本にはなくてはならない唯一無二の貴重な存在であり、将来に渡り更なる活躍が望まれる。