35・30周年記念誌

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UMIN 35周年のお祝いと更なる将来への期待

元UMIN協議会会長
名古屋大学医学部附属病院 メディカルITセンター長
白鳥 義宗

 大学病院医療情報ネットワーク(以下UMIN)が35周年を迎えるということで、心からお祝い申し上げます。
 UMINはご存じの通り、昭和61年度の全国立大学の病院業務のコンピュータ化にともない、大学病院間の医療、教育、学術及び業務上の改善・協力の促進を図るために、平成元年度から8大学での運用が開始され、順次加入大学数を増やし着実な発展を遂げられ、平成6年度からは全国立大学病院で共同利用ならびに運用されるようになったものであります。昭和61年は、私が医師になった年であり、それ以来ずっと国立大学の医師としてお世話になってきたネットワーク事業・組織であります。そのような中、令和2年度から3年度にかけてUMIN協議会長を務めさせていただきましたので、当時を振り返りながら、更なるUMINへの期待を少し述べさせていただければ幸いです。
 私が協議会長をさせていただいた令和2年は、その1月に国内で初めての「新型コロナウイルス」の感染例を確認した時であり、このウイルス感染症が世界的に大きな問題となった年でありました。未知のウイルスである新型コロナウイルス感染症と医療機関・医療者の戦いが過酷であったばかりではなく、感染爆発への不安やロックダウンといった社会機能の麻痺への不安・対応で大変だったことは、記憶に新しい事かと思われます。そのような中、UMINの運営業務も在宅勤務等を余儀なくされ、対面での会議や打ち合わせが制限されるなど厳しい状況であったと思われます。同時に、この事はデジタル技術の有用性も証明することとなり、インターネット環境での会議システムの利活用が一気に促進され、在宅での会議やデータ利用の促進という福音ももたらしました。
 UMINまた全大学病院においては、もうひとつ別のウイルスの問題、いわゆる「コンピュータ・ウイルス」と言われるようなものの脅威や迷惑メール(スパムメール)の増大化への対応に苦慮していた時期でもあります。UMINは先に記載しましたように、私にとっては医師になった頃よりずっとお世話になっており、多くの方々にとっても大学病院間の医療、教育、学術及び業務上の改善・協力には欠かせないものとなっておりました。その中心のひとつに電子メールサービスがあったのですが、誠に残念ではありましたが、この時期に諸般の理由より、個人用ID利用者に対する電子メールサービスを中止せざるを得ない状況となりました。これについては、利用していただいている各大学病院の利用者の方々には、多大なるご不便をお掛けすることになり、申し訳なく思っております。くれぐれも混乱のないようにということで、時間や手間を掛けて周知を徹底し、なおかつ不測の事態が起きないように、事務局にはチェックを重ねていただき、無事に一連の作業を終えていただくと共に、この時期にUMIN情報システムのリプレースも無事に行っていただきました。改めて木内先生はじめ事務局関係者のみなさまに深く感謝申し上げます。
 上記のように、私が協議会長であった時代は、2つのウイルスの対応に苦慮致しましたが、それは裏を返せば大学病院間の医療、教育、学術及び業務上の改善・協力を、デジタル技術を利用して行うことが不可欠であるという証かと思います。UMINの大きな目的である1)最新の医学・医療情報の提供、2)大学病院間の作業の共同化、3)医学・医療上の交流の支援、4)医学研究の支援、5)データの標準化と諸統計の整備といった5項目は古びておらず、益々重要さを増してきているものと思われます。
 ネガティブな話ばかり前述させていただきましたが、コロナ禍の令和2年度には、臨床研修のサポートとして、新臨床研修ガイドラインと卒後臨床教育評価システム(PG-EPOC)の正式運用が開始されましたし、臨床研究のサポートをすべく、臨床研究小委員会が設置されました。中止されるだけでなく、時代の要請に応えるべく、新たな取り組みも行って来ていることは極めて重要な事だと思っております。それぞれの時代のニーズに合わせて、システムや組織は変更していくべきものと思いますが、上記の大きな目的に関しては変わらず、それぞれの時代の要請に応えて、多くの医療者・医学関係者のためになる組織であり続けていただきたいと願っております。これからも変わらず大学病院間の医療、教育、学術及び業務上の改善・協力の促進を図るための事業・組織としてUMINが益々発展していくことを期待し、お祝いの言葉に代えさせていただきたいと思います。