35・30周年記念誌

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UMIN 35周年のお祝いと更なる将来への期待

元UMIN協議会会長
筑波大学医学医療系医療情報マネジメント学教授
大原 信

 UMIN発足35周年おめでとうございます。
 UMINのこれまでの歩みなどは多くの方が語られると思いますので、ここでは個人的なUMINとの付き合いを述べさせていただきます。私がUMINと初めて出会った(?)のは1997年で、まだ医療情報分野での仕事をする前の消化器内科医時代、国立大蔵病院に内科医員として勤務していた時でした。1996年の4月に東大から院長として開原成允先生が国立小児病院と国立大蔵病院を統廃合して国立成育医療センター(以下成育)を創設する使命を帯びて着任されたことがきっかけです。私は両病院の医師の中から先生に指名されて、1997年に情報システム準備室に配属されました。研修医時代からMACオタクだったこと、臨床医として専門としていた炎症性腸疾患患者とパソコン通信を通じてやり取りをする試みを行っていたことなどが知られたからだと思っています。院長室と直接つながる応接室にデスクを置かれ、先生から「成育はペーパーレスの電子カルテで運用します。そのシステム構築の準備を手伝って下さい」と指示を受けたのでした。その日から殆ど毎朝、先生から様々な講義(?)を受け、後は泥縄式で勉強しました。当時の国立病院は、開原先生と国立大阪病院長であった井上通敏先生を中心に全国の国立病院をネットワークで結ぶHOSP netを構築して、急速に情報化が進められていた時期でもありました。開原先生はご自身で開発されたUMINメールを愛用されており、携帯電話も持たれていたのですが、ご自身が発信する以外は電源を切られており、一方通行の連絡専用でしたので、面談以外の連絡はメールということになります。HOSP netのメールの使い勝手が悪く困っていたので相談すると、「UMINメールが大学所属以外の医療従事者にも解放されているよ」と教えてくださいました。早速申し込んで使い始めました(所属を国立病院で登録するとUMINメールのアドレスは、「xxxx-kkr@umin.ac.jp」とされてしまい、共済組合か、とかなりがっかりしました)。今は筑波大学に所属していますが、UMINアドレスはこの「-kkr」を継続使用していました。UMINアドレスを取得した時から、私のPCのブラウザの起動画面は全てUMINのホームページに設定しており、これは今でも変わりません。その後、2002年に成育が創立され、「電子カルテ」運用が始まると病院の医療情報室に配属されて、正式に医療情報分野に転身することになりました。
 UMINとの本格的な付き合いは、成育から2005年に筑波大学に医療情報部副部長として異動してからとなります。当時の医療情報部長の五十嵐先生がUMIN協議会長をされていたこともあり、より身近な存在となりました。附属病院の一角にはMINCS用のパラボラアンテナが設置されておりました。一般ユーザーにとってUMINの主な用途はメールだったと思いますが、その他の多くの機能に触れました。一般ユーザーのメールは廃止されましたが、それらは年々充実してきております。個人的には、木内先生にお誘いいただき、オンライン臨床評価システム(EPOC)のEPOC2個人情報保護・研究倫理W Gに参加させていただいたことが非常に勉強になり有意義でした。EPOCにより、医学生時代からUMINに触れ、医師となってからも活用できる継続性が担保出来たことはUMINにとっても大いなる飛躍だったと思います。また2022年から2024年にUMIN協議会長を務めさせていただきました。通常二期4年間のところ一期のみで、あまりお役に立てませんでしたが、この間、決して表には出て来ない木内先生の献身的な運営と多大な努力を知りました。無事に(?)務めることが出来たことを感謝しております。
 UMINの将来への期待ですが、この数年、我々を取り巻く環境は一層激しく変化してきております。医療分野へのA Iの本格的な活用、国策としての医療DXの推進から医師の働き方改革、医療機関を標的としたサイバー攻撃の多発と多種多様な問題が山積しています。医学研究と教育を目的として様々なサービスを提供してきたUMINですが、一ユーザーとしては、これらの課題に対しても能動的な何らかの発信、情報提供、あるいはサービスがあればと思います。限られた予算で限られた人材ではなかなか困難なことだとは承知しておりますが、ネットワークを活用して全国の優秀な人達の力を集めれば可能だと思います。また、発足からの経緯を考えると仕方のないことと思いますが、国立大学のみではなく、私学の方を加えるなどして、より幅の広い活動を行っていく時期ではないかと考えます。唯一のアカデミアが管理運営する医療系教育・研究プロバイダとして今後も一層の発展と飛躍を期待いたします。