まず、第一は運営費交付金の支援だけでは継続できなくなった「オンライン演題登録システム」の存続についてです。以前より木内センター長と、東大病院におけるUMIN関連予算についてご相談をしてきました。様々な文部科学省及び厚生労働省の予算による財政支援によってUMINは発展を支えられてきましたが、国立大学病院関係者以外にも利用者が拡大し、求められる機能も充実する中で、今後も要望に応えるには、もはや財源的限界にある事を木内センター長から、お聞きしてきました。
苦しい財政状況の中で、2017年度には、翌年度をもってオンライン演題登録システムの運用を終了することを決断せざる終えない状況であることもお聞きしました。国立大学病院向けにスタートしてきたUMINの活動が、全国的な医学系学会の基盤インフラとして拡大してきた実績は、国立大学病院の機関が全国を牽引してきた歴史的証明であり、それを中止せざるを得なくなった木内センター長の苦渋の決断だと感じました。2017年当時、政府は税収が伸び悩む中で社会保障費は拡大し、景気は回復基調であるが国債の発行費も拡大し、国全体の予算状況は厳しいものとなっていました。
UMINのオンライン演題登録システムは新しくできた学会活動や地方での研究活動を無償で支える貴重なシステムです。私は文部科学省と厚生労働省にも相談し、日本医師会と日本医学会に協力を要請するため訪問しました。日本医師会と日本医学会の代表理事にご相談した結果、有償化でも存続させてほしいとのご意思を確認したため、日本医師会と日本医学会から全国の学会と関係する地方学会にも有償化に対する協力の依頼文書を発出していただきました。その後、UMINのシステムの改造による合理化も有り、センターの皆様の努力で極めて安価な利用料による存続が可能となりました。
もし、UMINの「オンライン演題登録システム」の利用ができず、民間会社が運営する同様のシステムに移行した場合は、かなり高額な費用負担となるため、一部の財源が豊かな学会等を除き、草の根的な医学の研究活動の芽が摘まれることになって、医学系研究のすそ野が狭くなる、との危機感がありましたが、無事回避できました。
第二のUMIN活動の重大さを実感したのは、医学教育モデル・コア・カリキュラムに対応した「臨床教育評価システム」を作り上げ運用を開始されたことです。
このシステムは卒前臨床実習(文部科学省所管)と卒後臨床研修・後期研修(厚生労働省所管)の評価をシームレスに連携するために作られました。この研修評価システムは運用が開始されれば、国立大学病院だけでなく医師の研修制度を実施する全ての病院で、将来に渡って、サービスの中断は出来ません。安定的で継続的な運用には、運営費・開発費の確保が必要です。そこで、国立大学病院も含め全ての研修実施病院にも安価な受益者負担を求める事としました。
そうなると、東京大学医学部附属病院の機関でもあるUMINでは、各病院に対して請求書を発行して、利用料金を徴収し運用する事が、大学以外の国公私立の病院には説明が難しく、かつ、年度の整理からも会計処理が複雑化するため、取りあえず、国立大学病院長会議が利用料を受領して、同額をUMINへ支払う事にしました。
現在も国立大学病院長会議事務局が、UMIN事務局と連携して各病院の利用料の集金代行業務を行っています。この利用料金は、安定運用の費用と、5年に一度のコアカリ(卒前)・ガイドライン(卒後)の改訂に伴う大規模な新規開発費用と、ハードウエアの更新費用として、UMIN予算の中で継続的に積み立てられ執行されています。
以上、私が関係した2点についてUMINの活動が国立大学病院以外の医学教育と医学研究を支える重要なインフラとして貢献していることを説明しました。これ以外にも様々な機能を発揮しているUMINが今後どのように充実して、新しい役割を果たしていくかに期待しつつ、今後ともUMIN活動を側面から支援していきたいと決意しております。