
35・30周年記念誌
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UMIN 35周年のお祝いと更なる将来への期待
滋賀医科大学理事・副学長、事務局長
前東京大学医学部附属病院病院長補佐・事務部長
元文部科学省高等教育局医学教育課課長補佐
岩瀬 鎮男
大学病院医療情報ネットワーク(UMIN)の運用開始35周年をお祝い申し上げます。
私のUMINとの係わりは、1996年(平成8年)に文部省高等教育局医学教育課大学病院指導室に異動した時からです。当時の大学病院指導室には、文部省の中で数少ない専用PCが配置されており、前任からの引継ぎの際に大変驚いた記憶があります。後にそのPCは東京大学医学部附属病院の中央医療情報部の配慮により設置していただいた物であることを知りました。実務においては、前年度(平成7年度)から稼働を開始した「文部省文書広報システム」により、文部省や厚生省からの大学病院宛ての通知文書は、それまで全て紙媒体で郵送していたところを、電子化しオンラインでの通知へと変更したことによる印刷の労力と紙の節減は多大なものでした。また、翌年度(平成9年度)からの「患者票等収集システム」の導入により、毎月各大学病院から患者数や稼働率、平均在院日数等のデータをFAXで収集し集計していた形を、各大学病院の担当から直接、システムにデータ入力をいただくことで、スピードと正確性が格段に増し、集計への労力は大幅な削減となりました。更に翌々年度(平成10年度)には「大学病院概況収集システム」の稼働も開始されました。これほどのデータを収集・管理し活用している組織は、当時の文部省内にはありませんでしたので、他部署の同僚等が大変驚いたことを記憶しております。
この文部省、その後の文部科学省在籍中にあった“超”先進的な取り組みは、私の文部行政事務官としてのその後に多大な影響を与えました。
一つの例としては、膨大な情報量と分析力、そしてスピードによって、二度目の医学教育課大学病院指導室勤務となっていた2003年度(平成15年度)の業務の中で、翌年度(平成16年度)からの国立大学法人化に伴う予算システム(病院経営改善係数の設定)の検討に際しても、大変助けられました。42の国立大学病院全てに一律の係数2%(対病院収入額に対する効率化係数)では無く、7大学には課さない整理が生まれたのも、日頃からの情報収集と蓄積の賜物でした。大学病院別の様々な実績数値から、日頃からの効率的な運用状況を分析するとともに、附属病院再開発事業に伴う財政投融資の返済状況を勘案し、係数の設定について財務省主計局へ粘り強く説明・交渉し、成立に至りました。予算成立後に財務省主計局の担当官に挨拶に行った際、「想像を超える分析データの提供に驚愕していた」旨をお聞きし、改めて、UMIN事業の取り組みの素晴らしさを実感し、そして、その継続の必要性を認識したことを覚えております。
その後、三度目の関係となった2019年(平成31年)4月に東京大学医学部附属病院に着任したのは、新型コロナウイルス対応の真っただ中でした。以前からの経費削減とセキュリティの問題でUMINの運営は大変厳しい状況下にありました。そのような中であっても、様々な事業を着実に展開・継続しておられたことに感激しました。また、再開発中の東京大学医学部附属病院の中で耐震性に問題のあった建物内にUMIN電算機室があったことから、いつ大規模地震災害が来るのかと心配していたのですが、2023年(令和5年)に無事に耐震強度を証明された建物に移転されたとの報告をいただき、ホッとしたところです。
近年の我が国の財政状況は大変厳しく、長年の経済低迷の影響と世界情勢の不安定により、物価・燃料費の高騰、そして働き方改革による人件費の増により、大学経営は大変厳しくなっております。しかしUMIN事業は、時代に応じた変化・進化をして来られており、今後も引き続き、我が国の大学病院を多方面からご支援いただくことを期待しております。
最後に、この度のUMIN運用開始35周年を心からお祝いするとともに、本事業の今後益々の発展を祈念申し上げます。