
35・30周年記念誌
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UMIN 35周年のお祝いと更なる将来への期待
CRSキューブAPAC株式会社
元東京大学医学部附属病院臨床研究推進センター
浜野 英哲
UMIN設立35周年、誠におめでとうございます。なかなかこういった長文を書く機会も経験もない人間ですので、今回は最近はやりのAIの力も借りつつ、一臨床研究データマネージャーとしての経験を通して、UMINセンターとの関わりについて振り返りたいと思います。
私が東大病院臨床研究推進センターのデータマネージャーとして勤務していた頃、臨床研究のデータをどう管理してもらうか、ということは非常に大きな課題でした。Excelファイルや紙によるデータ管理には限界があり、EDCの普及は必須事項でした。しかし、アカデミアの世界では予算の制約が常に大きな障壁となり、高価な商用EDCシステムの導入は困難でした。そのため、私たちはより安価で効果的な選択肢を探していく必要がありました。
このような状況下で、UMINが提供するINDICE Cloudに注目したのは自然な流れでした。INDICEは元々割付システムとして公開されていますが、最低限の症例情報を収集でき、しかも無料で利用できるという大きな利点がありました。小規模の臨床研究には特に魅力的な選択肢でした。
しかし、詳細な仕様を検討してみると、監査証跡への対応が不十分という課題が浮かび上がりました。臨床研究法や倫理指針では監査証跡の記録が必須とされているため、特定臨床研究や倫理指針下の研究での利用には大きな障壁となっていました。
この課題を解決するため、同じ東京大学という縁を活かし、直接木内先生にご相談させていただきました。木内先生の対応は印象的でした。問題の本質を迅速に理解し、具体的な解決策を模索する姿勢は、まさにアカデミアの強みを体現していました。
臨床研究法や倫理指針に基づく監査証跡の記録機能の必要性を説明すると、木内先生はすぐに反応してくださいました。新規入力や変更の記録、その理由の記載など、詳細な要求事項をお伝えすると、驚くべきスピードで対応が進みました。
わずか3ヶ月足らずで必要な機能の実装を完了されたことは、UMINのスピード感と柔軟性がしっかり発揮されたよい事例だと思っています。この迅速な対応により、INDICEは小規模研究での利用が可能となり、実際に臨床研究推進センターでも、その後いくつかの研究で活用させていただくことができました。
現在、私は東大からEDCベンダーに活動の軸足を移しています。立場は変わりましたが、この経験から学んだことは多く、日々の業務に活かされています。UMINとの協力経験は、ユーザーニーズへの迅速な対応の重要性を改めて強く認識させていただきました。
現在の立場は、UMINとはある意味でライバルの関係にあるかもしれません。しかし、アカデミアの臨床研究推進という大きな目標においては、志を同じくする同志でもあると考えています。敵として対立するのではなく、競い合い、より高みを目指していくことができればと考えております。
UMINの35年の歩みは、日本の臨床研究の発展と密接に結びついていると感じています。INDICEの改善事例は、その柔軟性と進化の一端を示すものです。
今後の臨床研究の質の向上と効率化に向けて、私たちも異なる立場から協力し、新たな取り組みを行っていければと考えています。具体的なアイデアはまだ固まっていませんが、また、UMINを訪問させていただき、さまざまな可能性について議論できれば幸いです。
最後になりますが、UMINの今後の発展と、臨床研究コミュニティ全体の更なる進化を心から願っています。異なる立場からではありますが、日本の臨床研究の発展に貢献していきたいと考えておりますので、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。