
35・30周年記念誌
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UMIN35周年のお祝い UMINとの関わりを通して
大学病院医療情報ネットワーク協議会長
香川大学医学部附属病院副病院長(研究担当)
横井 英人
この度はUMINの節目をお祝いすることができることを大変嬉しく存じます。この機会に過去の資料を見てみると、インターネットの普及前からUMINが活動していたことに気づかされ、その長きにわたっての医学・医療への貢献の大きさが忍ばれます。
私個人としては、組織が変わっても利用できるウェブ上で使えるメールサービスや、平成20年に始められたウェブ会議システム(UMICS=University hospital Medical Internet Conference System)などを利用させていただき、その当時、大変助かったことを覚えています。特にウェブ会議システムはその頃は費用的にこなれておらず、部署単位で導入するにはハードルが高かったことから、大きな福音でした。このような通信インフラと言える基礎的なサービスを先駆的に提供して頂いたことは、多くの医療スタッフにとっても非常に有用であったことは間違いないと思います。
年余を経て、サービス内容はだんだん変わってきていますが、その時点での技術や社会情勢に合わせて対応がなされてきています。私自身は2012年に一度UMIN協議会長を拝命して以来、今期から2度目を務めさせて頂いておりますが、10年以上前に行われていた議事内容と、現在の議事内容の違いに改めて時代の変遷を感じております。
若い人を中心にデジタルネイティブと呼ばれる世代が育ち、アナログ運用が根強く残っていた医療分野にも、電子処方箋やマイナ保険証といった技術が導入され、医療DXが本格化しております。
医療に於いて発生する情報の多くは診療情報であり、患者さんの個人情報もしくはそれに準ずる情報がその主たるものです。今後はゲノム情報も重要な情報としてここに加わってくるでしょう。これらは要配慮個人情報として、厳格な取り決めの下に扱う必要があり、また一方、研究などのために有効に利用できるよう、その有用性確保も考慮すべきものです。卑劣なサイバー犯罪からこれらのデータを守り、そしてその価値を高く保つようにすることこそが、真の意味の医療DXです。
黎明期に作られた様々な医療情報システムは、それぞれ工夫を凝らし、独自の進歩を成し遂げてきました。各々が魅力的なシステムに育った半面、データがサイロ化する(それぞれのシステムの中でしか利用できない状態となる)問題をも引き起こしました。
これを解決するため、我々はデータ標準化を喫緊の課題として捉え、標準データの運用をサスティナブルに続けていく、相互運用性を前提とした、無理のないシステムへの移行をする必要に迫られています。
UMINセンターは、特に臨床研究の標準を検討するコンソーシアムであるCDISCについて早くから知見を集め、臨床研究の礎となる症例登録・割付システム(INDICE系システム)や症例データシェアリングシステムを立ち上げるなど、日本の臨床研究に大きな貢献をしてきました。この分野に於いてはUMINが、CDISCをはじめとしたデータ標準化活動と一層連携して、これから発展、活発化することを期待しております。その他、近年はEPOCと呼ばれるオンライン臨床教育評価システムを運用し、研修医教育のためのインフラ構築にも協力して、UMINセンターの存在はいよいよ、医療に於いて欠くべからざるものになっています。次の10年も、たゆまない技術革新のもと、更なるご発展を遂げ、大学病院をはじめとした医療界を支える活動がますます活発になることを祈念して、お祝いの言葉とさせていただきます。