
35・30周年記念誌
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東京大学医学部・大学院医学系研究科よりのご挨拶
東京大学大学院医学系研究科長・医学部長
南學 正臣
大学病院医療情報ネットワーク(UMIN)設立35周年に際し、心からのお祝いを申し上げます。新型コロナウイルス感染症の広がりのために、30周年記念行事は中止になり、今回は、35・30周年記念行事として開催されることになったとお聞きしました。あの苦しかった新型コロナ感染の始まりから、既にもう5年も経ったのかと感慨深い思いです。
UMINは、研究、教育・研修、診療、病院運営管理にまたがる、約35もの情報サービスを提供し、月間約1億ページ、会員登録数約55万名というサービスは、驚異的なものです。このようにたくさんの利用者が利用する多様な医学・医療系情報サービスを総合的に提供している組織は、国際的にみても他に類例がないと思います。これらの成果は、歴代の附属病院長、UMIN協議会長(運営委員長)、UMIN小委員長、UMINセンタースタッフをはじめとするすべてのUMIN関係者の長年に渡るご尽力の成果と考えています。また、UMINの教授、准教授ポストは両方とも純増で獲得されたもので、特に故開原成允先生と木内貴弘先生のご貢献は大きく、お二人の御尽力によるUMINの発展に深い敬意と祝意を表させて頂きます。
日本では、UMINのような特定の学問分野を専ら対象とした全国レベルの公的情報サービスセンターを持っているのは、医学系のみであるとお聞きしています。医学系では、附属病院という、他の学部にはない特殊な組織が非常に重要な枠割を果たしています。大学病院では、研究、教育だけではなく、診療がおこなわれており、医療情報が存在します。このために、大学病院のネットワークとして、医学系だけに特別にUMINの設立が認められたのだと考えています。事実、大学病院において、医療情報を収集して行う臨床・疫学研究、医学生・臨床研修医の経験内容を収集して行う臨床実習評価・臨床研修評価等は、他の学部には見られない活動です。
医学部では、医学生の臨床実習は教育上非常に重要な役割を果たしており、臨床実習の内容を正確に客観的に記述し、臨床実習修了や卒業の要件を満たすかどうかを評価していくことが重視されます。私が医学生の頃は、臨床実習に際して、客観的な経験・学習内容の記録はなされず、出席をとるくらいしか評価がありませんでした。UMINで運用されているCC-EPOCは、医学生の臨床実習の経験症例・症候・手技等をスマートフォンで即時に記録が可能となっています。また評価項目に対して、医学生の自己評価、指導医の評価等が逐次その場で入力されています。CC-EPOCにより、臨床実習の客観的な記録や評価が可能となりました。本学でもCC-EPOCを導入しておりCC-EPOCにより、医学生の経験や能力の全国レベルでの位置づけも可能となり、臨床実習カリキュラムの作成にあたり、参考としています。卒後臨床研修用のPG-EPOCと、CC-EPOCは相互に連携して活用できるように作られており、卒前から卒後までのシームレスな教育・研修の評価が可能となっています。これらの連携データを今後も一層活用して、臨床教育、臨床研修の改善に役立てたいと存じます。
私自身の個人的なUMINとの関わりは、UMINの電子メールの活用で、本当に長い間、使わせていただきました。またUMINオンライン演題登録システムで何度も自分の演題を登録させて頂きました。このような使いやすいシステムが無料で提供されていたのは本当に驚きでした。運営費交付金の削減に伴い、2018年度をもってオンライン演題登録システムの運用を終了するアナウンスがございましたが、多くの学会および日本医師会と日本医学会からの運用の継続の要望があり、再検討して頂き、サービスを継続して頂けていることは本当に有難く思っております。また、私の専門とする腎臓病の関係では、2007年度より、UMINにお願いして、「わが国の腎疾患患者における腎生検ならびに総合データベース構築腎疾患データベース(J-RBR/J-KDR)」の構築と運用を行い、現在までに約7万4千例余の症例を収集しています。私が会頭をつとめております、東京大学医学部同窓会の鉄門倶楽部でも、会員専用ホームページサービス、会員専用メーリングリストを無料で使わせていただいています。鉄門倶楽部の会員を代表し、深く感謝申し上げます。
東京大学大学院医学系研究科・医学部としても、附属病院でUMINをお引き受けし、発展させてきたことは大きな誇りです。UMINのますますの発展を願い、附属病院でのUMINの活動を継続して支援していきたいと考えています。今後ともUMIN関係者のご活躍を期待するとともに、多くの医学・医療関係者による継続的なご支援・ご協力をよろしくお願い申し上げます。