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UMINセンター20周年に寄せて

株式会社日立製作所
元UMIN担当システムエンジニア
大塚 健一


 UMINセンター20周年、誠におめでとうございます。
 私がSEとしてUMINセンターに常駐するようになりましたのは、2001年8月のことですので、それから早いもので丸7年が経過致しました。その間、UMINセンターは、登録利用者数は約3倍の30万人、Web参照件数も約8倍の月間4,000万ページビューをこえるなど、めざましい発展を遂げて参りました。現場で日々システムの運用・開発にあたる一技術者として、これほど勇気づけられ、また幸福なことはございません。
 UMINセンターは、SEにとって本当の意味で技術の宝庫ともいうべき場所です。サーバ、ストレージ、ネットワーク、DBMSといった基本的なインフラはもとより、アプリケーション開発・運用、また、それらのマネジメントなど、多くを現場のSEでこなしております。それに加え、UMINセンターではセンター長の方針のもと、積極的に若手にも責任ある仕事を任せて頂き、私も実際に様々な貴重な経験をさせて頂くことができました。
 ちょうど、赴任直後の2001年8月は、翌年1月稼働の第4期システムの建設が始まる直前で、私も間もなく新システムの建設作業に従事し、主にOS周りを担当することになりました。第4期システムでは、従来の汎用機(H9000 VR370)を中心としたシステムから、ラックマウントPCサーバへとシステム構成が大幅に刷新され、OSも大規模システムには導入実績がまだ少なかったLinuxへと一新されました。今でこそ当たり前のように基幹システムにも導入されているLinuxですが、その当時は、ようやく大規模システムにも適用可能なLinuxカーネルが登場し始めたばかり…という時期でしたから、UMINセンターのシステムに、実績の少ないOSを採用するというのは、それだけでもなかなか骨の折れる作業でしたが、一方で、取り組み甲斐のある作業でもありました。ひとたび問題が発生すると、原因究明のために昼夜を忘れて働くといったこともありましたが、これに限らず、SE全員がチームとして協力して事にあたり解決に至ることができますと、自然と湧き上がる感動を覚えたものでした。
 その後、建設が一段落致しますと、システムの稼働維持に加え、演題登録抄録システムの運用・開発、新ドメイン(@umin.net)メールシステムの設計・構築、地域医療ネットワークとのVPN相互接続などを担当した後、幸いにも、再び現在稼働中の第5期システムの建設に携わることができました。
 第5期システムでは、第4期システムの考え方を踏襲して基幹システムやネットワークの冗長化と大幅な性能向上を図り、ブロードバンド化による高速通信のニーズに対応しつつ、サーバのダウンサイジング、ストレージの統合や最適配置などでシステムを一層効率化するとともに、昨今の時代の流れに合わせて、電子メールの送受信プロトコルなどの暗号化、SPAMフィルタの導入などにより、セキュリティ面の強化を図っています。
 それに致しましても、技術の進歩とは本当に早いものです。7年前というと、一般家庭のネットワーク環境がISDN回線からADSLへと切り替わり始めたばかりの時期でした。Linuxも個人用途や中小規模ならともかく、大規模システムにはこれからという時期だったのですが、いずれも今ではごく当たり前のように使われております。むしろ、通信に関して言えばADSLは光ネットワークや無線通信へ、OSもそれ自体は新バージョンが出たからといって昔ほどは大きな話題とはならず、システムの統合や仮想化、あるいはSaaS (Software as a Service)、PaaS (Platform as a Service)といったクラウドコンピューティングの概念が話題に上るようになってきました。
 このような急激な環境の変化の中で、果たして次のシステム更新時期、あるいはその次の更新時期にUMINセンターのシステムはどのような形になっているのでしょうか。これを正確に予想することはなかなか難しいのですが、SE一同、技術者として常にアンテナを高くもって、次の時代にふさわしい、利用者の皆様にとって使いやすいシステム作り、アプリケーション作りを、心がけて参りたいと考えております。
 とはいえ、私個人は2008年10月一杯でUMINセンターを離れ、後任に道を譲ることとなりました。長く現場におりますと愛着や思い入れもあり、直接、次のシステム更新に関与できないのは誠に残念ではありますが、SEの陣容が代わってもこれまでの伝統を受け継ぎつつ、新しいDNAを入れてより良いシステムへと昇華させてくれるものと思います。
 UMINセンター在任中の7年間、センター長をはじめとする先生方や事務局の皆様、利用者の皆様から叱咤激励を頂きながら、多くのことを勉強させて頂きました。厳しくも、非常にアットホームな雰囲気のあるUMINセンターで得られた経験は、決して大げさな表現というわけでなく、技術者として、人間として、私にとって生涯の糧となるものと確信しております。
 UMINセンターが、日本の医学・医療界の発展のために果たすべき役割は、今後一層、大きくなっていくものと思います。ますますの発展を願ってやみません。