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UMIN20周年に寄せて

株式会社日立製作所
元UMIN担当システムエンジニア
門川 英男


 私がUMINの担当SEとして着任したのは2000年6月のことです。それから、2007年9月までの約7年間はいろいろな出来事がありましたが、その内の2つをご紹介したいと思います。
 1つ目は、第4期システムのリプレースについてです。2000年当時は第3期システムが稼動しており、メインのシステムはHP-UXやSolarisといった大型のUNIXサーバ数台でシステムが構成されていました。1台のサーバで多くのサービスを提供しており、慢性的なリソース不足といった状態でした。
 そのような状況の中で、SEとしては移行作業の安全性を重視し、現在のシステムを踏襲したUNIXサーバを中心としたシステムを検討していましたが、要求仕様における第4期システムのシステム構成は分散型の大規模なLinuxシステムでした。
 今でこそLinuxは広く普及しインターネットでも豊富な情報が公開されておりますが(むしろLinuxに関する情報が他のUNIXシステムを凌駕していますが)、当時としてはUMINのような大規模なシステムをLinuxサーバで構築した実績はほぼない状況でした。
 また、従来のUNIXサーバはハードとOSは一体で開発されており、ベンダーによるサポートやトラブルの発生に備えて診断ツール等が用意されていましたが、Linuxの場合はSEが自力で障害箇所の切り分けを行なわなければなりませんでした。
 特にシステム構築時は知識も経験も少なく、高負荷になると落ちるLinuxサーバとの戦いでした。また、従来の堅牢性を謳う高信頼性設計のサーバと違い、メモリ、ハードディスクの初期不良が多発しました。そのような状況も、カーネルのバージョンアップ、全サーバのハードチェックを重ねることでシステム品質の向上を図り、また作業を進めていくことでSEのスキルも向上し安定稼働を始めました。
 今にして思えば、先進的な技術に挑戦し医療情報分野をリードしていく、UMINセンターの役割に合致するシステムだと思います。
 2つ目は、EPOC、DEBUTの開発についてです。比較的、抱えている仕事が少なさそうだという理由で、担当者に選ばれたと記憶しています(本人的には十分な量の仕事はありましたが)。始めはこれほど大掛りなシステムになるとは思わずにいましたが、私がUMINに携わった期間の8割はEPOCとDEBUTの開発に費やすことになりました。
 EPOC、DEBUTは、臨床研修が必修化され医師の基本的臨床能力の達成度を評価するシステムです。それまで、各研修病院独自のシステムはあったようですが、全国の研修病院が共通で利用できる評価システムはありませんでした。
 開発はプロトタイプを作成し、それを基に打合せを行なうかたちで進められました。そのため、大変な面もありましたが、自分なりの考えを盛り込むこともでき、やりがいのあるものでした。帰宅する途中も、あれこれとプログラムやシステムのことを考えながら帰ったことが思い出されます。運用開始直前は、年末年始をUMINで過ごし、徹夜をしながら運用にこぎつけました。
 このように、新しい技術に取り組むことや、モノを作りそれが動くということは非常に面白く、時間を忘れて作業することもしばしばありました。夜遅く帰宅する日や、休みが取れない時期もありましたが、あまり辛いと感じなかったように思います。そのような環境で仕事が出来たことは、SE・技術者として幸せだったと思います。
 2007年には第5期となるシステムが稼働しました。また、SEも新しい若い世代へ交代しました。UMINのSEには、これまでUMINを築いてきた諸先輩方の姿勢を受け継ぎ、UMINが常に時代の最先端を走れるよう、新しい提案を創造し続けてくれることを期待します。