▲UMIN二十周年記念誌 TOP へ戻る



UMINにお世話になって10年余り

東京大学大学院医学系研究科臨床疫学研究システム学特任教授
山崎 力


 UMIN20周年おめでとうございます。私がUMINに初めてお世話になったのは、1997年の日本循環器学会オンライン演題登録システムの開発、運用のときでしたが、その後1999年にランダム割付介入試験のオンライン割付システム、2000年の前向きコホート研究のオンライン登録システムと連続して、しかも各々第一例目としてシステムを作成していただきました。現在このオンラインシステムが日本中でどのくらい活用されているかその詳細は知りませんが、いずれのシステムも日本の臨床疫学研究における標準システムとなっていることは間違いないと思います。その最初を経験させていただいたことを大変誇りにも思っています。
 1999年4月に薬剤疫学講座に所属することになり、臨床疫学の勉強を一からやり直そうか、と思っていたころ、放射線科の中川恵一先生から「黄斑変性症の放射線治療に関するランダム割付介入試験をやりたいので、割付担当になってくれないか」という電話がありました。電話か電子メールで登録医師から連絡が来たらその場でサイコロをふってその結果を回答する、といったことが最初の構想でしたが、こういったことならコンピューターにやってもらった方が正確にできると考え、薬剤疫学の真向かいの部屋にいらした木内貴弘先生に相談したところ、「既にこういったシステムは考案済みで最小化法を用いた割付システムなら数日以内で提供可能だ」「じゃあ、お願いします」といった調子で始まりました。割付に必要な医療情報をオンラインで入力し、最後に登録ボタンを押せば「A治療」「B治療」の割付結果が瞬時に表示されると同時にあらかじめ登録された電子メールアドレスにその結果が送付される、また割付された全症例の一覧がオンラインで閲覧できる、といった現在最も使われているシステムが最初から出来上がっていたのです。
 それから少し遅れて2000年、永井良三循環器内科教授を中心に、すべての都道府県の循環器科をもつ約200病院に参加いただきJCAD(Japanese Coronary Artery Disease)Studyという前向きコホート研究を行うことになりました。これは、狭心症または心筋梗塞患者の臨床情報を半年毎に3年間継続して集めるというもので最終的には10,000人近い患者登録が予想されていました。この登録をオンラインで行うシステムについても木内先生に相談したところ、ふたつ返事で快諾いただき、あっという間に完成していたという記憶があります。当時オンライン登録で前向きなコホート研究を行っているという話は見たことも聞いたこともなく、こういった新しいやり方に理解を示した一線の循環器科専門医自らがオンライン登録を積極的に行ったため最終的に13,000人以上の患者の前向きコホート研究となりました。予想以上に成功した要因として、使い易く完成度の高いことが第一に挙げられるのではないかと思います。オンライン登録の臨床疫学研究がごく一般的となった今、当時のシステムを改めて見ての実感です。2000年から2004年にかけて頻繁に登録医師に集まってもらって研究推進のための会議を開きましたが、東京、名古屋、京都と木内先生には毎回その会議に出席して頂き、世界初のオンラインによる臨床疫学研究の成功に向けて叱咤激励して頂いたことも成功への大きなサポートになりました。
 UMINの益々のご発展を祈念いたします。