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薬剤小委員会活動報告

UMIN薬剤小委員長
鹿児島大学医学部・歯学部附属病院副薬剤部長
下堂薗 権洋

1. はじめに

 UMINにおける薬剤小委員会の活動は、設立当初はUMIN全体の活動における牽引力として活動していたが、その後、社会ならびに医薬品に関わる情報基盤の整備に伴って、医薬品情報の入手方法も大きく変革し、薬剤小委員会の活動は拡大路線から、従来のシステムの維持管理へと変化してきた。このことは、大学病院薬剤部を取り巻く環境が、独立行政法人化をはさんで、この10年間で大きく変化したこととも大きく関係していると考える。具体的には、がん化学療法や無菌製剤への取り組み、医療安全への関与、チーム医療(ICT、NST、緩和ケア)への参加など多種多様な業務内容への対応、そして専門性を発揮するために、より高度な知識と技能の習得、病院経営などへの積極的な参画など、薬剤部存亡にもかかわるような大きな変革を経なければならなかった結果ともいえる。
 さらに、薬学教育6年制への移行により、平成22年度から導入される薬学生の実務実習を負担するという大きな業務が加わり、大学病院薬剤部はその職員数の増加はもとより、個々にかかる負担はこれまで以上に大きなものになるものと思われる。
 UMIN設立20周年という節目を迎えたが、まさに大学病院薬剤部もまた、多くの問題に対応するために英知を集約しなければならない時期であるともいえる。これからの10年後に向けて、UMINというネットワークを有効に利活用し、情報の共有化を図り、薬剤小委員会を最大限に生かすことを考えてみたい。


2. UMINの運営体制

 UMIN薬剤小委員会の担当者は、UMINのネットワーク化を始めるとともに活動を開始し、当時は全国8大学(北大、東北大、東大、名大、京大、阪大、九大と岡大)の担当者で発足した。その後、システムやデータベースを担当する大学の担当者が加わり、現在に至っている。一方、薬剤小委員会(拡大)、部長会議などを経て、委員長の選出とその任期が決められ、国立大学附属病院薬剤部長会議でUMINの薬剤部門代表委員を選出し、その委員の所属する薬剤部担当者が委員長となって運営を行っている。その任期は2年間となっており、現在、部門代表委員は鹿児島大学の山田勝士、薬剤小委員会委員長は下堂薗権洋が務めている。
 前述したように、国立大学附属病院薬剤部は、その職員数、職員の構成は著しく変化を来し、職員の離職・転職も進み、薬剤小委員会担当者ならびに拡大委員(各大学UMIN担当者)も大幅に入れ替わった。参考までに、平成8、13、18年度における職員数とその年齢(年代)の構成を紹介すると、平成8年度から18年度には職員数で3割増となっているが、20代の職員が最も多く約50%を占めるまでになった。薬薬連携や対外的な渉外などとともに薬剤部を取りまとめ、その技能やノウハウを伝えて屋台骨として活躍すべき40代は、平成8年度293名(26.8%)が平成18年度には185名(12.8%)まで激減している。大学は違っても共通の抱える問題を持つ薬剤部同士での連携や共同作業を行っていくことは、この若い職員へと急激に変わったことをもってしても必要であることがわかる。UMIN薬剤小委員会の役割も自ずと、この連携を図る媒体として活躍する場を移していくことが、今後の課題であると考える。


図 国立大学附属病院薬剤部職員数とその世代構成推移


3. UMIN薬剤小委員会の活動とサービス

 現在、UMIN薬剤小委員会の関係する利用サービスとして、各種メーリングリストがあり、一時期は頻繁に利用されたが、利用者がスムーズに交代されておらず、さらに初期のウイルス感染への対策不備からその利用は十分とは言えない。今後は、薬剤部担当者も含めメーリングリストを活用できるように、メンバー交代や参加者の拡大を図り、ホームページ構成も利用しやすくして便宜を図り、連携を深められるよう取り組みたい。
 以下に、現在利用している薬剤関連の利用できる情報内容を一覧表としてまとめた。


表1 UMIN薬剤小委員会専用ページ掲載情報
薬剤添付文書データベース(ダウンロードサービス)
(提供:医療情報システム開発センター)
薬剤情報担当者限定
臨床薬剤情報入力・検索システム
(提供:金沢大学病院薬剤部・医療情報部)
薬剤情報担当者限定

表2 UMIN−医薬品(医療材料)情報ページ掲載情報
中毒データベース検索システム
(提供:山口大学病院薬剤部)
一般公開
医薬品添付文書フルテキスト検索システム
(提供:医療情報システム開発センター)
国立大学登録者限定
薬剤情報標準化のためのデータベース
(薬剤小委員会薬剤情報データベース作業部会)
一般公開/登録者限定
疾患別服薬指導データベース検索システム
(提供:金沢大学医学部附属病院薬剤部)
登録者限定
薬剤情報提供データ
(提供:北海道大学病院薬剤部)
登録者限定
医薬品マスター
(提供:医療保険業務研究協会)
事務部幹部職員・薬剤情報担当者・医療情報部関係者限定
効能・効果 用語データベース
(UMIN薬剤小委員会薬剤データベース部会)
一般公開


4. UMIN薬剤小委員会の今後の活動

 UMIN設立20周年の年を薬剤小委員会の委員長として迎え、このネットワークを有効に利用するために、まず、小委員会委員を一新し、各大学の担当者も再度連絡を取りあえるように再整備を行った。そして、次に懸案の薬剤部に関わる諸問題に対処するために、このUMINを利活用できるように環境を変えていきたいと考えている。薬剤部の抱える問題に対応する担当者同士、すなわち、医療安全管理者・リスクマネージャー、がん化学療法担当者、ICT/感染制御部門担当者、救急部/ICU/手術部担当者、NST担当者、褥瘡ケア担当者、緩和ケア担当者、糖尿病療養担当者…などの情報交換を十分にできるようにしたい。
 そして、これから待ち受ける諸問題に共同で、時には競争して立ち向かい、日本の病院薬剤師をリードしていく病院薬剤部となれるように、UMINを通じた支援を行うとともに、UMIN設立20周年を機にこの実現を決意し、微力ながら努力していきたい。