活動報告 事務小委員会

事務小委員長
高知医科大学業務部医事課長

西 利夫

1.経緯

 大学医療情報ネットワークは、平成元年度に8大学・平成2年度に8大学の計16大学が接続されたことにより、平成2年10月開催の全国国立大学病院事務部長会議の議を受け、病院事務部として、大学医療情報ネットワーク運営委員会の中の事務小委員会に加わることを前提とし、平成2年12月25日に東京大学医学部附属病院で大学医療情報ネットワーク(事務部門)発足準備会が開催された。発足準備会は、北海道大学、東京大学、京都大学、大阪大学及び鹿児島大学で組織され、事務小委員会の性格、立場、権限等について種々意見交換が行われ、メンバー校は地方ブロックにはとらわれず、発足準備会の5大学に、中規模大学から群馬大学、新設医科大学から高知医科大学を加えた7大学とする。委員は、上記7大学の課長とし、1大学より2名程度出席させる。なお、事務部長は原則的に欠席とすることが決定された。また、このことは、平成3年2月14日開催の全国国立大学病院事務部長会議総務委員会に報告し、事務小委員会の設置が了承されたことにより、大学医療情報ネットワーク運営委員会事務小委員会が誕生することとなった。
 第1回事務小委員会は、平成3年2月20日に東京大学医学部附属病院で開催され、事務小委員会の位置付け・組織について協議の結果、@医療情報ネットワーク(UMIN)の事務部門での利用について検討し、その結果をUMIN運営委員会に具申することを目的とする。A検討内容については、その都度、全国国立大学病院事務部長会議総務委員会に報告するものとする。B事務小委員会はメンバー校7大学の21課長の官職委員でもって構成する。なお、委員会への参加は、毎回、当該大学の課長2名程度とする。C必要に応じて担当係長等をオブザーバーとして議事に参加させる。D事務小委員会の委員長は、国立大学附属病院医療情報部門連絡会議の会長校に大阪大学がなっていることなどを考慮し、大阪大学医事課長とする。E東京の持つ地理的条件等から、会場の手配等に当たっては東京大学がバックアップする。とのことが決定された。
 第2回事務小委員会(平成3年4月26日開催)から、国立大学附属病院医療情報部門連絡会議会長校が委員長となり、事務部門において活用を検討すべき事項の試案に基づき種々協議の結果、基本的な考え方として、当面できるものと将来できるものとに項目を整理し、検討を進めることとなった。その後、3回の事務小委員会を開催し、平成4年3月末にこれまでの検討状況の結果をまとめ、UMIN運営委員会に報告を行なっている。事務小委員会では、活用を検討すべき項目とは別に、病院経営分析等に役立てる目的から、病院資料のデータベース化について検討してはとの意見が出され、これについては、全国国立大学病院事務部長会議総務委員会を通じて文部省の意向を打診の上、進めていくこととなった。
 事務小委員会の発足時(平成2年度)には、UMINへの接続が16大学に過ぎなかったが、平成6年9月では、全国42大学に接続されていることから、第6回事務小委員会(平成6年9月8日)において、構成校の見直しなどを行った。見直しに当たっては、全国病院ブロック、使用電算機メーカー及び医療情報部の設置の有無等を勘案し、現在ブロックから1校しか参加していない北海道・東北ブロックから新たに東北大学、中部・近畿ブロックから名古屋大学、九州ブロックから熊本大学の3大学を追加し、構成校を10校とした。また、構成校(メンバー校)以外の大学から、国立大学附属病院医療情報部門連絡会議の会長が就任された場合は、会長在任期間中、当該大学に事務小委員会の構成校として参加願うものとした。さらに事務小委員会委員長は、事務小委員会設置当初の趣旨を尊重し、今後とも連絡会議の会長校にリンクさせて当該大学から選出することとした。これらの決定事項については、平成6年11月17日開催の全国国立大学病院事務部長会議総務委員会で了承され、現在の事務小委員会の基礎が確立されたものである。
 事務小委員会では、発足以来、UMINの事務部門での利用について検討を重ね、電子メールシステムの活用に関しては、当初、42大学の事務部長、三課長に官職指定利用者番号を付与していたが、平成9年3月歯学部附属病院、研究所附属病院、分院及び学務課に官職指定利用者番号の付与を拡大し、国立大学病院の情報交換網の整備を図ってきた。また、国立大学病院事務部門における各種共同利用システムについては、文部省高等教育局医学教育課大学病院指導室、UMIN事務局及び開発担当大学のご協力により、現在までに、文書広報システム、病院資料収集システム、物品マスターシステム、経営分析システム、治験管理システム及び予算資料収集システムが稼動しており、大学病院の運営改善に役立っているものと思われる。

2.現況

 事務小委員会の7年間の活動状況を踏まえ、第17回事務小委員会(平成10年5月21日開催)において、平成10年度以降の事務部門におけるUMINの利活用に係る各種業務の検討が行われ、平成10年度実施予定業務として、大学病院概況、病院用語集及び高度先進医療に関する情報提供が選定された。大学病院概況については、文部省高等教育局医学教育課大学病院指導室のご指導並びにUMIN事務局のご努力により、平成10年度よりUMIN上において作成されることになった。病院用語集については、北海道大学のご提供により、医学用語集(事務部門用)検索システムテスト版として稼動しており、用語・解説の追加及び修正については、全国の大学病院からの要望をまとめ、改訂版に反映することとしている。また、高度先進医療に関する情報提供については、平成10年12月1日現在の各国立大学病院の資料を収集し、UMIN事務局のご協力によりテスト版を作製することとしている。
 事務小委員会の組織は、平成6年11月17日開催の全国国立大学病院事務部長会議総務委員会の了承事項に基づき構成されてきたが、委員会の活性化のため、第17回事務小委員会において、新たに九州大学(前事務小委員長校)を構成校に加えることが承認された。また、歯学部の参加についても検討され、歯学部を持つ構成校等の担当課長に、オブザーバーとして委員会に出席してもらうこととなった。このことについては、平成10年5月22日開催の全国国立大学病院事務部長会議総務委員会に報告し、了承されたことにより、第18回事務小委員会(平成10年10月15日開催)から11大学が構成校となった。さらにオブザーバーとして、北海道大学、東北大学、東京医科歯科大学、大阪大学、九州大学及び鹿児島大学の歯学部担当課長に参加願い、UMINの利活用について検討を重ねることとなった。
 事務小委員会の発足以来、委員会規則等は整備されていなかったが、文部省高等教育局医学教育課大学病院指導室及び全国国立大学病院事務部長会議総務委員会にご相談の上、第19回事務小委員会(平成11年1月21日開催)において、事務小委員会内規の制定について協議された。委員会の組織に関しては、全国国立大学歯学部事務部長会議及び国立大学附置研究所附属病院事務(部)長会議にもご相談し、新たに歯学部事務部長会議が指定した大学の課長、附置研究所附属病院事務(部)長会議が指定した大学の課長を加えることとした。このことによって、文部省所管の全大学病院の意見等が事務小委員会に反映されるものと思われる。なお、この内規については、平成11年2月9日開催の全国国立大学病院事務部長会議総務委員会に報告し、了承された。

3.今後

 事務小委員会の今後の実施予定業務としては、平成11年度中の稼動を目途として、UMIN事務局のご協力を得ながら、「高度先進医療に関する情報提供」を行なうことにある。さらに事務部門におけるUMINの活用を促進するために、各大学病院から資料の提供を受け、医事紛争の事例の概略、発生年月日、診療科等が検索でき、類似事例の参照等訴訟事務の省力化が期待される「医事紛争に関する情報提供」及び病院業務の改善に資するための「会計検査に関する情報提供」など、各般にわたる情報提供業務の検討が考えられる。また、現在、事務小委員会の下に、物品(医療材料)マスター提供システムの問題点を検討するため、「実務担当者からなるワーキンググループ」が設けられており、その検討結果を踏まえ、委員会においてマスターの仕様等を決定することなどが考えられる。
 近年、各大学において事務組織の見直しが進められていることに関連し、係長・専門職員に対するUMIN官職指定利用者番号の付与希望が、事務小委員会に少なからず寄せられている。このため委員会としては、基本的に各大学の全ての係長・専門職員に、権限のない官職指定利用者番号を付与する方向で、検討しなければならないものと考えている。
 事務小委員会の運営に際しては、毎回会場の提供を願っている東京大学の関係者を始め、各構成校の委員各位及びUMIN事務局のご協力並びに、ご指導・ご助言を賜っている文部省高等教育局医学教育課大学病院指導室及び全国国立大学病院事務部長会議総務委員会に対しまして、心より厚く御礼を申し上げます。

(参考)

大学病院医療情報ネットワーク(UMIN)運営委員会
事務小委員会内規

 (趣旨)
第1条 この内規は、大学病院医療情報ネットワーク(UMIN)運    
  営委員会規則(平成11年4月1日施行)第9条の規定に基づき、  
  学病院医療情報ネットワーク(UMIN)運営委員会事務小委員会
  (以下「小委員会」という。)に関し必要な事項を定める。

 (審議事項)
第2条 小委員会は、次の各号に掲げる事項を審議する。
  (1)大学病院医療情報ネットワーク(UMIN)の運用に係る事務部 
    門の利用に関すること。
  (2)その他小委員会が必要と認める事項

 (組織)
第3条 小委員会は、次の各号に掲げる構成員をもって組織する。
  (1)小委員会委員長
  (2)全国国立大学病院事務部長会議総務委員会(以下「総務委員会」       
    という。)が指定した大学の課長及び室長
  (3)全国国立大学歯学部事務部長会議が指定した大学の課長
  (4)国立大学附置研究所附属病院事務(部)長会議が指定した大学 
    の課長又は事務長
  (5)その他小委員会委員長が必要と認める者

 (構成員以外の者の陪席)
第4条  小委員会委員長は、小委員会の同意を得て、構成員以外  
 の者を小委員会に陪席させることができる。

 (報告)
第5条 小委員会委員長は、小委員会の協議事項及び報告事項を総  
務委員会委員長に報告しなければならない。

(庶務)
第6条 小委員会の庶務は、小委員会委員長校において処理する。

(雑則)
第7条 この内規に定めるもののほか、必要な事項は、別に定める。

附 則
この内規は、平成11年4月1日から施行する。

活動報告 薬剤小委員会

前薬剤小委員長
金沢大学医学部附属病院薬剤部副薬剤部長

古川 裕之

1.これまでの経緯と現在

UMINの部門別作業グループとしての薬剤小委員会の活動は、1989年7月の第1回小委員会の開催に始まる。同年9月の第1回UMIN運営委員会において薬剤小委員会の設置が承認され、正式に委員会活動を開始した1)。初代委員長には、東京大学の折井孝男氏が就任した。以後、1997年2月末まで、長期にわたりUMINと薬剤小委員会の発展に寄与された。また、全国国立大学病院薬剤部長会代表の運営委員は、東京大学の中川冨士雄、伊賀立二の歴代薬剤部長が勤められた後、1997年3月からは金沢大学の市村藤雄薬剤部長が勤めた(1999年3月末まで)。
薬剤小委員会の活動は、薬剤情報の共有化と共同利用を目標に、主に@薬剤情報の提供、A薬剤情報の収集、B薬剤関連業務の合理化・効率化の3点に取り組んできた。

1.1.薬剤情報の提供(情報の共同利用)
必要性が高くて提供可能なデータベースを薬剤小委員会で調査・検討した結果2)3)、すぐに利用可能なものとして、日本医薬情報センター(JAPIC)と医療情報システム開発センター(MEDIS-DC)が作成した「医療用医薬品添付文書情報データベース(JAMES)」、「薬価改正情報データベース」と「医薬品等安全性情報(1997年6月までは「厚生省医薬品副作用情報」という名称)」の提供を開始した。続いて、新しい試みとして、島根医科大学の協力により、ファイル転送を利用した「輸液情報コンサルテーションシステム(ADMICS)」の提供4)を開始した(現在はサービス停止となっている)。また、次のステップとして、大学病院が独自に作成したデータベースの提供を開始した。まず、1992年に「中毒情報データベース5)(山口大学病院薬剤部作成)」、1994年に「服薬指導データベース6)7)(金沢大学病院薬剤部作成)」、そして、1998年7月に「薬剤情報提供データベース(北海道大学病院薬剤部作成)」の順に公開が行われ、現在も継続して情報更新が行われている。一方、いくつかの大学病院薬剤部(福井医科大学、鹿児島大学)のホームページとのリンクにより、それぞれの大学病院薬剤部が独自に作成した各種情報の利用も可能となっている。

1.1.1.医療用医薬品添付文書情報データベース(JAPIC&MEDIS-DC)
 本データベースは、「医療用医薬品添付文書」、厚生省発行の「緊急安全性情報」、「再評価結果」、「再審査結果」「医薬品等安全性情報」、日本公定書協会・日本製薬団体連合会発行の「DRUG SAFETY UPDATE」を情報源として17,000を越える製剤のデータから構成されている。本データベースは、多くの大学病院において、処方オーダリングシステムにおける医薬品情報提供用および病院医薬品集作成用の情報として活用されている。本データベースは、UMINホストコンピュータ更新(1998年)によりオンラインでのダウンロードが可能になったため、今後5年以内に各大学への磁気テープによる提供を中止することが予定されている。
ホストコンピュータ更新に伴い、検索機能が大きく改良されて全文キーワード検索が可能となりデータベースの利用性が向上している。しかしながら、厚生省が進めている1999年5月末からのインターネットを利用した添付文書情報の一般公開の進行に合わせて、UMINでも本データベースの活用方法を見直していくことが今後の課題である。

1.1.2.中毒情報データベース(山口大学医学部附属病院薬剤部)
中毒情報は、洗剤から医薬品まで23項目に分類され、タイトルを選択することにより情報参照が可能である。また、ダウンロード機能とメール機能を有しているので、利用者の必要に応じて情報の加工を行うことができる。本データベースは、@商品分類、A性状・成分、B毒性、C体内動態、D中毒症状、E治療法、F参考症例から構成され、1992年からUMINで公開されている。ホストコンピュータの更新に伴い検索機能が改良されて、1998年12月から「中毒データベース検索システム」として一般公開されている。最近、薬物(毒劇物)を使用した事件が多発しており、事件発生時の救急治療の有用な情報提供手段としての期待が高まっている。
また、UMINでは福井医科大学の「中毒リンク集」も一般公開されており、最近話題となった砒素化合物、アジド化合物やシアン化合物についての情報を参照できる。さらに、中毒情報を入手できる国内国外のホームページやデータベースとリンクされており、今後需要が高まると予想される薬物中毒情報の有用な情報源となる。

1.1.3. 服薬指導データベース(金沢大学医学部附属病院薬剤部)
本データベースは、「病気と治療薬剤についての必要な情報を簡単に参照できるハンドブックが手元にあったら力強い」という理由で企画した『疾患別服薬指導マニュアル』をデータベース化したものである。1994年7月より試作版(29疾患)をUMIN2上でGopher形式により公開してきたが、1996年4月より疾患数を86に拡大した。UMIN上での更新は行われていないが、データ更新は定期的に行われており、現在、92疾患についてのデータが蓄積されている。
本データベースの情報は、各疾患ごとに疾患の概要と治療薬剤の概要の2部分から構成されている。疾患の部分では、主要92疾患について、@疾患の概要と成因、A分類と症状、B合併症と対策、C治療薬剤の分類と特徴、D薬物療法以外の特記すべき治療法などの15項目について、治療薬剤の部分では、各疾患の治療における重要薬剤5〜6剤を選択し、@作用機序、A副作用と処置、B相互作用、C投与・剤形変更時の注意、D服薬指導、E飲み忘れや過量投与時の処置法と注意、F体内薬物動態など15項目を要約している。毎年データ更新を行い、信頼性確保のために本院専門医(約40名)のチェックを受けている。本データベースはダウンロード可能(UMIN3利用登録者限定)であり、LZH形式(パーソナルコンピュータ用)と tar+compress形式(UNIX用)の2通りで行うことができる。本データベースは、ダウンロード後、利用者の目的に応じて自由に情報追加や削除を行うことによって臨床業務と薬剤師の教育研修に活用されることを公開目的としている。

1.1.4.薬剤情報提供データベース(北海道大学医学部附属病院薬剤部)
本データベースは、北海道大学で採用している1304品目の医薬品について文書による患者への服薬説明に利用するためのもので、@薬品名称、A薬効、B特殊薬効、C副作用、D使用上の注意、 E保管時の注意、Fカラー画像(散剤・水剤は除く)から構成されている。今年7月からUMIN3での提供を開始した。ダウンロード可能であり、各施設の事情に応じて自由に加工できる。現在、データ更新は3カ月毎に行われている。

1.2.薬剤情報の収集(情報の共有化/共同利用) UMINが独自性を有するためには、魅力的な情報を提供する機能を持つことがひとつの条件である。医療分野において必要と思われるデータベースを検討し、必要であればデータベース(蓄積型データベース)作成にも取り組むことが重要である。薬剤小委員会では、臨床において有用と思われるデータベースとして、有害作用情報、注射薬配合変化情報、症例に関する情報の蓄積を検討している。同時に、すでに提供しているデータベースのメンテナンス方法についても検討している。
薬剤管理指導業務の拡大とともに臨床現場での情報収集が容易になったことや情報通信技術が向上したことから、病棟における薬物療法上の問題点(@注射薬の配合変化、A副作用と相互作用、B Problem List=薬剤管理指導記録中の薬物療法上の問題点と解決法の記録)についての情報を全国規模で収集・蓄積し、それらを共同利用することが可能な環境にある。

1.2.1.有害作用情報
1998年4月から、厚生省管轄の全国の病院をネットワークで結ぶHOSPnetが開設され、薬剤投与に伴う有害反応に関する情報を収集するシステムが稼動している8)。大学病院は有害作用モニターの重要施設であり、同様のシステムを早期に導入し、治験薬を含む有害作用(事象)に関する情報を収集・蓄積する必要がある。 薬剤小委員会においても、UMINを利用して副作用・相互作用情報をオンラインで収集する検討を進めてきたが、HOSPnetの計画が先行するとの判断から、同じシステムを利用する方向に軌道修正した。 HOSPnetでの経験によると、本システムで全国から収集したデータを有効に活用するためには、早急に使用用語の標準化が必要であり、この課題解決への協力を薬剤小委員会に求められている。

1.2.2.注射薬の配合変化情報
 注射薬の配合変化情報については、情報量が非常に不足している。薬剤小委員会では、発足当時からワーキング・グループを設置し、島根医科大学を中心に情報収集を進めている。また、薬剤部門だけでは不十分との判断から、看護小委員会にも協力を依頼し、臨床現場で経験する未知の配合変化を共通記録シートを用いた情報収集に取り組んだ9)。しかしながら、シートによる収集では情報蓄積が十分に行われなかったことから、注射医薬品配合変化に関する標準的情報項目を再検討し、配合変化実例をUMINに直接登録(SGML化)する方式についての検討を進めている10)。

1.2.3.Problem Listに関する情報
薬剤師が臨床で経験する症例における問題点(Problem List)とその対応についての記録を蓄積し、全国のすべての薬剤師が蓄積情報を共有化して臨床業務に活用するための試みである。 Problem Listのデータベース化は、薬剤管理指導業務を行うすべての薬剤師が情報を共有化でき、それぞれの病棟業務に活用できる点で有効な方法である11)。すでに、金沢大学においてパソコンレベルでの実験が終了し、UMINを利用して情報を全国規模で収集してデータベース化する方向で準備を進めている。全国規模での情報収集を行い、共同利用が可能で検索効率の高いデータベース化を実現するためには、入力方法と表現規則のルール化が重要であり、シンプルで例外の少ない入力方法と表現規則の検討を進めている。

1.3.薬剤関連業務の合理化
薬剤関連業務合理化を実現するためには、同一の目的を有する施設が共同で課題に取り組むこと、加工しやすい電子媒体(フロッピーディスク:FD)や通信手段で情報伝達を行うことが有効な方法であると思われる。このような観点から、薬剤小委員会では、現在と近未来に予想される全国的な問題点の検出を行い、その解決のためにいくつかの試みを行っている。

1.3.1.血液製剤に関する記録の管理・保管
 血液製剤に関する記録の管理・保管については、記録の保管期間が10年と長いことから電子的保存が有効であると思われる。また、記録のための作業を軽減するために製剤ロットのバーコード入力化が有効であるとの判断から2次元バーコード導入を提案した12)。バーコードについては、JANコード体系と併せて2001年に改定が予定されている。現在、厚生省委託事業『用語/コード標準化委員会(委員長:里村洋一・千葉大学医学部教授)』の下部組織である『医薬品コード検討委員会(土屋文人・帝京大学市原病院)』において、商品名や会社名に加えて、製造番号、製造日や有効期限などの商品属性情報を持つことにより確実かつ効率的に全医薬品を管理できるバーコード(例.可変長バーコードシンボル/EAN-128、2次元シンボル/QRコード)導入についての検討が進められており、その動向に併せて医療現場から見て必要と思われる提案を続けることが重要である。また、本問題についての全国立大学病院への調査は、UMINのメーリングリスト(各大学薬剤情報担当者)を用いることにより短時間で情報収集を行うことができた。同様の実験から、メーリングリストを利用した情報入手は緊急の調査手段として有用であり、今後も新たな問題解決に活用していく予定である。

1.3.2.新GCPに対応した治験薬管理
新GCPに対応した治験薬管理については、関連する資料が膨大なため、効率のよい管理のためには電子媒体の利用が有効である。国立大学の共通ソフト開発の中で、『治験管理システム(東京医科歯科大学)』が開発されたが、導入が予定通りには進んでおらず、実際の治験管理業務をサポートする上で、いくつかの課題に取り組んだ。
第1の試みとして、治験プロトコルと治験薬プロフィール情報の標準50項目について電子媒体(FD:MS-Excel)による治験依頼者からの提出を提案した13)。この提案は、治験責任・分担医師の治験薬処方時や薬剤師の治験薬調剤時にプロトコルと治験薬プロフィールを短時間で確認できること、また、治験審査委員会(IRB:Institutional Review Board)における審査時の補助資料として利用することを目的としている。金沢大学で行ったフィールドテストにおいては良好な結果が得られており、全国的な利用を働きかけている。このような標準情報項目の検討は、各医療施設からの個々の要求による治験依頼者の混乱を防止するだけでなく、臨床試験の円滑な進行に効果的に利用できる点からも必要と思われる。
第2の試みとして、治験依頼者間で様式が統一されていない有害事象報告の共通フォーマット化の提案を行った14)。この提案は、治験依頼者から大量に提出される有害事象報告の管理とIRBでの審査の効率化を目的としている。国内治験における有害事象報告は、厚生省で定めている「様式2.治験薬副作用、感染症症例票」で行われることが多いが、海外治験には統一した様式はない。世界規模での情報交換を考えると、国内と国外を問わず、同じ様式で統一する方が良いと思われる。提案した必要情報17項目は、金沢大学病院薬剤部で作成した原案をもとに治験依頼者と金沢大学病院の各診療科への調査を行い、その結果を反映したものである。標準項目については、1999年3月から利用可能なMedDRA(Medical Dictionary for Reguratory Activities)を使用するなど表現規則の統一を行い、電子媒体あるいはインターネットを利用した提供を検討する必要がある。
また、1999年2月には、全国の薬剤部治験担当者が参加する『治験に関する会議室』を設置し、治験全般についての情報交換および共通する問題点の検出・分析そして解決のために活用していく予定である。本会議室には文部省大学病院指導室からの参加もあり、担当者の声が直接文部省にも届くという画期的な会議室である。

1.3.3.UMIN薬剤カテゴリーコード
現在、薬効分類に利用されている「日本商品分類」には、@新しいメカニズムの薬剤を分類できない、A改訂時にコードが変わるという大きな問題点がある。これらの問題点を解決するために、「UMIN薬剤カテゴリーコード」を作成し提案し、UMIN上で公開している。本コード体系は、上記の2つの問題点を解決するため、英数5桁(大分類3桁+小分類2桁)で構成され、新しいメカニズムの薬剤の分類項目の設定が容易なこと、また、可能な限り作用メカニズム(受容体レベル)による分類が行われることから、病院情報システムにおける相互作用や薬剤重複などのチェック機能への利用を目的としたものである。2000年に総務庁において予定されている『日本商品分類』大改訂において本コード体系の基本原則が反映されることを期待し、広報活動を続けている。

2.今後

 高度な情報システムは、法律や経済とともに医療を変える重要因子である。したがって、今後も医療情報学分野における成果を医療の場に積極的に応用する試みを継続することにより、より質の高い医療を患者に提供する情報システムを確立することが必要である。

2.1. 問題解決集団としての役割  UMIN薬剤小委員会は、医療フィールドで発生する薬剤情報に関連する本質的な問題点を検出・分析し、有効な解決方法を提示できる作業グループとして今後も需要な役割を果たすことが求められている15)。10年の活動期間を有するUMIN薬剤小委員会ではあるが、各大学病院のUMIN利用環境と薬剤部のUMINに対する関心度には差があり、すべての大学病院薬剤部が積極的にUMINを利用しているとは言い難い。特に、大学病院の薬剤師にとっては、これからの3〜5年は非常に変化が大きい時期となることが予想される。早急に解決しなければならない問題も多数発生し、それらの問題の中には単独の大学で解決できないものも存在する。このような問題に対しては、物理的に離れていても同時に多数の大学が情報交換を実現できるUMINの様々な機能を有効に活用することが必要となる。全国国立大学病院薬剤部長会との緊密な連携を取りながら、薬剤小委員会が中心となって実際の作業グループとして活発な活動を展開していくことが重要であると思われる。

2.2 蓄積型データベースへの取り組み  今後、特に薬物療法に関連したテーマについて、全国の大学病院が協力して情報収集することが必要になると思われる。薬物療法において薬剤師が果たす役割は、薬物治療の有効性と安全性の監視と確保である。今後、薬剤師のベッドサイド業務は増大し、薬物治療において発生する様々な事象を検出・分析して客観的データとして記録することが求められる。これらの情報を全国規模で収集し、それらをデータベース化し、そのデータベースを共同利用することは患者に適正な薬物療法を行うために有効な手段となることが期待される。いくつかの大学がグループを作りメンテナンスを行うことにより、同時に複数のテーマに取り組むことが可能になる。大学の独自性へのこだわりが共同作業を進める上での障害となることが予想されるが、大きなテーマに対しては協力体制で取り組むことが必須となることを十分に理解する必要がある。また、データベースの今後のメンテナンス方法としては、データベースを管理する大学が簡単にデータを更新できるようなシステムにすることが望まれる16)。

2.3 通知の伝達と統計情報のオンライン登録  現在、事務部門においては、中央からの事務連絡はUMINを利用している。また、各種統計情報についてもオンライン登録となっているが、薬剤部門においては現在その両方が行われていない。薬剤部門においても、事務部門同様、各種通知にUMINを利用することは合理的であり、時間と経費節減のために必要と思われる。また、毎年実施される業務統計や実務担当官会議用の調査についても、UMINを利用したオンライン登録の導入を早急に検討すべきである。これらを実現することで、UMINへのアクセスが日常となり、薬剤部門においてUMINがより身近なものになり、活用範囲も増大することが期待される。

2.4.他の専門グループとの協力体制  正確で効率的な情報交換には電子的通信が効果的であり、それを実現するためには情報項目と表現規則および通信方法の「標準化」が必要である。UMIN薬剤小委員会では、活動開始当初から薬剤情報の共有化と共同利用を目的として、情報表現規則、情報伝達方法および情報収集方法の標準化に向けて取り組んできた。それらの検討結果と解決のための提案事項は、これまで可能な限り学会・論文等で発表を続けている15)。しかしながら、標準化は、薬剤部門だけの努力で実現できるものではない。幸い、医療情報学の分野は多くの専門性が同居している。今後は、薬剤部門以外の活発な専門作業グループ(例。日本医療情報学会の各委員会、厚生省科学研究グループなど)との協力関係を深め、次々に発生する諸問題解決に向けて、広い視野からの取り組みが特に必要になると思われる。
謝辞:薬剤小委員会のこれまでの活動に対しご理解とご支援をいただいた、開原成允、櫻井恒太郎歴代運営委員長をはじめとする運営委員の先生方、また、大江和彦、木内貴弘両先生をはじめとする歴代事務局の皆様に心より感謝いたします。

【参考文献】

1 折井孝男ほか:大学医療情報ネットワーク薬剤部門小委員会の活動とその報告.平成3年度国立大学附属病院医療情報システムシンポジウム演題論文集、pp135-138、1992
2 薬剤小委員会(折井孝男委員長)ほか:国立大学医療情報ネットワークで提供する薬剤情報の調査.平成元年度国立大学附属病院医療情報システムシンポジウム演題論文集、pp151-154、1990
3 薬剤小委員会(折井孝男委員長)ほか:医療情報ネットワークにおける薬剤情報の提供とその設計.第9回医療情報学連合大会論文集、pp157-160、1990
4 西村久雄ほか:大学医療情報ネットワークを利用した薬剤情報の共同利用の検討.病院薬学、19(3):248-254、1993
5 星田昭子ほか:山口県における「中毒情報提供システム」の評価.月刊薬事、33(11):2391-2398、1991
6 古川裕之ほか:UMIN3による薬剤情報の提供/服薬指導データベース.平成8年度国立大学附属病院医療情報システムシンポジウム演題論文集、pp73-76、1997
7 古川裕之ほか:医薬品情報を利用して見せる/ケースレポート6.金沢大学医学部附属病院.折井孝男編、これからの薬剤情報/あつめ方、よみ方、つたえ方、pp130-138、中山書店、1998
8 山本光昭:HOSPnet医薬品情報システム.月刊薬事、40(8):1923-1927、1998
9 西村久雄ほか:大学医療情報ネットワークにおける注射医薬品配合変化情報の収集.平成7年度国立大学附属病院医療情報システムシンポジウム演題論文集、pp129-131、1996
10 西村久雄ほか:UMINにおける注射医薬品配合変化情報収集の提案.平成9年度国立大学附属病院医療情報システムシンポジウム演題論文集、pp144-145、1998
11 旭 満里子ほか:薬剤管理指導で生じた薬物療法上の問題点と解決法に関するProblem Listのデータベース化と活用−その共同利用の提案−、病院薬学25(1):53-59、1999
12 下堂薗権洋:血液製剤管理システムの開発に向けて.平成9年度国立大学附属病院医療情報システムシンポジウム演題論文集、pp121-124、1998
13 古川裕之ほか:治験薬に関する標準情報項目の提案.平成9年度国立大学附属病院医療情報システムシンポジウム演題論文集、pp155-158、1998
14 川井絵美ほか:新GCPに基づいた治験薬の有害事象のデータベース化における問題点の分析.病院薬学25(2):196-203、1999
15 古川裕之:大学病院医療情報ネットワーク(UMIN)/医療フィールドにおける諸問題解決への新たなアプローチ.月刊薬事、40(11):2545-2548、1998
16 古川裕之ほか:UMINで利用可能な薬剤情報データベースと今後の課題.平成10年度国立大学附属病院医療情報システムシンポジウム演題論文集、pp36-39、1999


活動報告 看護小委員会

看護小委員長
東京大学医学部附属病院看護部長

入村瑠美子

1.経緯

看護小委員会が設立に至るまでの経緯は、全国国立大学病院看護部長会議の議事録等から以下のように要約できる。
平成元年3月に発足したUMIN運営委員会からの呼びかけに応えて看護部門における取組みは、平成2年5月、旭川で開催された第42回全国国立大学病院看護部長会議の中で、UMIN特別委員会として承認されたことに始まる。
当時、国立大学附属病院の看護部門では、香川医科大学の標準看護計画や鹿児島大学の看護度分類などをはじめとして、既に看護領域におけるコンピュータ化が進められており、全国的にみても情報化に対する看護職の関心は高く、大学間ネットワークの利用についての関心もありニーズは存在していた。
平成2年に活動を開始したUMIN看護小委員会は、委員会の目的として、「国立大学病院の看護業務の効率化と質の向上に資するため、UMINを利用することによって、各大学看護部間での情報交換をスムーズにできる可能性を検討し、実施への準備を行うこと」をあげている。
さらにUMINの利用方法と期待される効果については以下の具体的内容を明確に示している。

@ 各大学看護部の実態調査をUMIN上にのせる。
「期待される効果」として集計・分析が容易で正確になり、各大学看護部長の管理業務の資料として利用しやすくなる。

A 国内看護文献データベースを提供する。
「期待される効果」
当時、UMIN上からMEDLINEによって文献検索は可能だが国内看護文献がわずかしか含まれていない。日常の看護業務改善のための研究を推進するためには国内看護研究文献データが必要であり、看護職員の時間を効率的に活用するためにも端末からの検索は効果的である。

B 標準看護計画を提供する。
「期待される効果」
標準的な看護計画を検索できることによって、看護のレベル維持(質保証)が可能になり、現任教育にも活用できる。

C 看護技術支援システムを開発する。
「期待される効果」
できれば映像も含めた看護技術支援システムを提供することによって、看護技術の質保証、現任教育に資する。

D 物流システム等、事務部門等の他部門との関連事項について協力する。

以上の5項目については、現在に至るまで既に実現できているものもあり、当初目的としていた項目もある程度達成できており、そのまま看護小委員会活動の歴史と言えるのではないかと思う。
そして、当時の看護小委員会は、看護情報のシステム化に先進的に取組んでいる大学と在京3大学からなる香川医科大学・鹿児島大学・滋賀医科大学・京都大学・千葉大学・東京医科歯科大学・東京大学の看護部長が委員を担当し、構成されていた。
UMIN運営委員会には、平成2年度第1回からの小島通代看護部長会議会長が看護小委員会委員長として出席している。
平成3年頃より、香川医科大学病院の標準看護計画が東京大学の病棟の看護管理端末上から展開出来るなどの試みが開始され、さらに平成4年にはUMIN上に上記の香川医科大学の標準看護計画および鹿児島大学の看護度分類が看護領域における取り組みとして紹介され、全国の大学からUMINを介して参照可能になった。しかし、現実には利用環境不備などの問題があり、普及にはもう一歩という状況であった。
標準看護計画システムは看護内容そのものの電子化であり、管理帳票や勤務表作成システムとは異なった実際の看護場面で利用できるコンピュータ化の先駆けであり、強烈なインパクトがあった。現在、いくつかの大学で稼動している看護診断システムに大きく影響を及ぼしたと言える。また、鹿児島大学の看護度分類は看護を量として測定する基準であり、厚生省の看護度基準では反映されない患者情報を加味したものであった。

2.現状

1) 平成4年度以降の小委員会の経緯と歴代委員長
平成4年度以降、全国国立大学病院看護部長会議が組織の目的及び活動等に関する規程の見直しを行い、平成5年5月の全国会議において全面改訂を行った。平成10年5月には看護部長会議常置委員会がUMIN看護小委員会を担当し、常置委員会委員長が看護小委員長となることの申合わせが承認され現在に至っている。
平成4年7月、小島通代委員長の異動に伴い、後任は平成4年度から平成5年度まで京都大学の中原千恵子看護部長、続く平成7年度〜平成9年度まで看護小委員長は東京大学の森山弘子看護部長が務められた。

2)看護部門をとりまくコンピュータ化の影響
平成4年度以降の看護部門をとりまく状況は、UMINの利用を具体化することに優先して、各大学において看護情報のコンピュータ化が急速に進行した時期にあたり、日常の看護業務の中でコンピュータの利用が定着していく過程であった。この事は国立大学病院医療情報処理部門連絡会議への看護職の参加が年々増加し看護の演題発表も年々増えて多岐にわたり、現在では看護のセッションだけでも1日のプログラムを組めるほどであることに顕著である。

3)現状の活動
平成8年度に入り、大学病院看護部門においてUMINの利用が具体的・実用的になっている。

@平成8年度よりUMIN看護小委員会ホームページを開設
○ここでは看護部長会議関連の年間行事予定・特別検討委員会の課題および委員名簿、全国国立大学病院看護部長名簿を公開している。
○看護関連サイトを設け文部省・厚生省・看護協会のホームページにアクセスでき、看護関係の最新情報が収集できるようにした。
○各大学看護部長及び各担当副看護部長毎に官職指定アドレスを設定し、情報伝達やメール交換を容易にするためにUMIN利用環境の整備を行った。また、バックナンバーとして平成8年度・平成9年度の参照が可能であり、データの更新は東京大学が事務局を担当している。

A平成10年度より看護部実態調査をUMIN上で実施
○毎年7月1日に実施していた看護部実態調査を、各大学の端末からUMIN上でデータを直接入力こととした。この事により、集計作業の省力化とUMIN利用がより実用化された。
これまでの調査は年1回、調査表に記入する手作業としていたが、平成9年度より、表計算ソフトExcel上に各大学がデータを入力し、東京大学看護部でフロッピーにより一括集計とする方式に変更した。
さらに平成10年度より、UMIN上に看護部実態調査収集システムが大学病院総合医療情報収集システムの一つとして加わり、大学毎の集計及び集計状況が一覧できるようになった。実態調査の内容は看護職の勤務体制や夜勤回数、実習受入状況、採用状況等が含まれている。

3.今後の課題

1) 共通ソフト化への取組み
平成11年度より、看護部長会議特別委員会の中に共通ソフトに関する委員会を置き、看護部門において共通して利用可能な看護情報のコンピュータ化に関する検討開発を始める計画である。
現在、いくつかの大学で温度板システムや看護診断システムが動いているが、これまでは後続の大学がそれぞれ開発に労力と経費を要していた。
今後は共通ソフトの開発、利用を課題としてとりあげ、看護の質の標準化を図ると共に病院の運営改善に資するものとしていきたいと考えている。

2)MINCS等環境の積極的利用による職員教育への取組み
平成11年度よりMINCSが30大学に拡大される計画があるので、MINCSを看護職員の教育等に積極的に活用していきたいと考えている。
臨床における看護の質を高め、患者サービスに還元できる看護研究について現在では殆どの大学病院で取り組まれ、学会発表等の実績がある。
MINCSを大学病院の研究発表の場として大いに活用し、大学間の看護について情報交換を行うことを今年度は具体化していく計画である。大学附属病院の看護職員なら誰でも各大学からこの企画に参加できることは、現場を離れることの困難な技官職にとってはこの上ない大きなメリットである。
臓器移植や遺伝子治療等における看護や新しい試みの紹介、そして担当大学を会場とする講演会の開催などMINCSの有効活用を目指していきたいと考えている。


活動報告 検査小委員会

検査小委員長
浜松医科大学医学部附属病院検査部教授

菅野 剛史

1.経緯

検査小委員会は、運営委員会の中に特別に設定されていなかった。第一世代のUMINが国立大学の情報の流通に限定されていたためでもある。しかし、UMINの利用環境が整備され、websiteで利用されるようになるなど、公・私立大学を含め利用が可能になってきた。また一方では、臨床検査の領域でも標準化が推進され、施設間のデータの互換性が可能になるなど検査室側での環境が整えられてきた。したがって、これらが相俟って検査部の情報を相互に共有化して、効率よい検査部運営を図ることが可能となってくる。このような背景のもとに国立大学検査部会議では、平成9年の会議で、UMINの利用を推進することが提案され、UMIN利用のための作業グループが作成されることになった。この作業グル−プは、この決定を受けて作業を開始した。

1)UMINの利用について
@ UMINの利用を公・私立大学、場合によっては、臨床検査の関係者に全てが利用出来るようにする。
A 国立大学での利用に関しては、クローズドな環境を利用する。

2)利用できる資源と利用例
@ 検査部WGのホームページの立ち上げ
各大学でホームページを立ち上げているが、この中で検査部が関与しているDB、情報に関してはリンクを行う。

例:浜松医科大学検査部の基準範囲、新潟大学の検査マニュアル

A 国立大学検査部会議で作成されていた国立大学検査部統計などはクローズドな環境で中央化する。

B 臨床検査項目コードは臨床病理学会に利用を申し出る。
教育用症例に関しては、各自の提供の下で共同利用を考える。

C メーリングリストの作成

3)調査と作業の必要な事項
@ 各国立大学検査部でのUMINの利用状況のアンケート調査

A 検査部WGのホームページの立ち上げ

B 今後のWGの強化などが話し合われ、具体的にはUMIN運営委員会の小委員会としての機能を果たしていくこととなった。

2.現況

このような経緯で、UMIN WGは具体的な活動を開始した。まず、最初に試験的であるが、このWGのホームページを平成10年1月8日立ち上げることが出来た。この中ではじめに手がけたのは、臨床検査のホームページであることを考慮して、臨床検査関連の組織にリンクすることであった。それらは、臨床病理学会、臨床検査医会、臨床化学会、臨床検査自動化学会などの国内各学会、国際臨床化学連合(IFCC)、世界保健機構(WHO)、世界病理検査診断学学会連合(WASP)、米国臨床病理学会(ASCP)、米国臨床化学会(AACC)などの国外学会ならびに国際組織、米国臨床検査標準協議会(NCCLS)、などのNGO協会関係の組織であった。さらに、各検査部の持つDBとして、基準範囲(浜松医科大学)、微生物検査情報(佐賀医科大学)、検査マニュアル(新潟大学)、震災対策マニュアル(神戸大学)を加え、教育用症例としては日本大学のRCPCの症例、寄生虫学のアトラスなどを加えて内容を充実させつつある。この時点での試行期間をへて、UMINから正式のアドレスを頂いて平成9年4月21日には正式のアドレスに移行している。サイトは“http://square.umin.ac.jp/clin-lab/" である。

3.今後の問題

 今後は、この検査部会議のUMIN-WGが中心で、UMINを更に活用するような環境を作っていく予定であるが、UMINの運営委員会中の小委員会としてはこのWGが中心の組織で運用されると考えたい。特に中心的に考えたいのは、各検査部で持っている検査のDBを組み込むことである。また、共通するDBとして相互にDBを拡張していくことである。その候補として、感染症関連の部位別検出菌、菌種別感受性検査、などが挙げられる。このDBは今後の多剤耐性菌の動向を知る上でも、効果的な予防策を考える上でも重要なものであり、サーベイランスと同様な機能を持たせながら効率よい対応を考える上でも重要なものと考える。また、この件では薬剤小委員会の協力を仰ぐ事態は必須であり、今後の小委員会間の連携が要求される。また、基準範囲の問題としても、福岡県では、九州大学を中心として県単位での基準範囲の設定と運用が始まっている。これらの情報をDB上に展開し、各大学病院が共通の基準範囲を利用するような環境が出来上がることが望まれし、測定体系が検査で確立している検査項目は、施設間変動の収束を前提に、是非とも基準範囲を共有する現実がくることを期待したい。しかし、ここで課題となるのはDBの共有化するための、日常の検査の標準化である。過去のデータの継続性を維持しながら、新しい共有化の課題に対して、どれだけ臨床各科の協力が得られるかが最大の課題である。診療の上でのDBの活用の他に、教育用資源の共有も考慮する必要がある。日本大学の提供したRCPCの症例は、学生教育に利用することは可能であるし、佐賀医科大学から提供された微生物検査の情報の中には教育用のグラム染色の画像が取り込まれている。各大学が、教官の専門性を生かしながら、2症例ずつRCPCの症例を提供しあうだけで100例以上の教育用資源が蓄積される。卒前教育のみでなく卒後教育に対しても教育資材の宝庫となることは明らかである。画像・音声を含めてのマルチメディアの資源であることは当然のことであり、学生の利用できる環境の整備も重要な課題であると思われる。一方、これらの教育用資源は、収集の過程で研究用資源からの転用も考慮すべきであり、研究資源の蓄積には暗号化などの技術も要求されると考えられ、技術小委員会などからのバックアップが重要であると考えられる。ただし、これらの問題は、単に検査部小委員会の問題だけでなく、共通化できる部分を共有するような全体委員会での調整も必要であると考えている。しかし、更に要求されるのは、リンクしている各学会の特徴をどのように補間しあい、より充実した検査のホ−ムページを作り上げるかの課題である。例えば、基準範囲の問題にしても、もし、日本臨床検査標準協議会(JCCLS)が、この問題を取り上げ、日本での共通基準範囲を設定するならば、UMINは基準範囲に関してはJCCLSへリンクすることを考えればよいのであり、作業の分担について相互の情報交換が必要であると考えている。この作業をどこが取りまとめるか、運営委員会でも協議する必要があると考えている。


活動報告 技術小委員会

技術小委員長
東京大学医学部附属病院
中央医療情報部助教授

木内 貴弘

1.経緯

技術小委員会の設立の経緯は、他の小委員会とは大きく異なっている。これを説明するためには、UMIN設立当初のネットワーク接続の状況を説明しておく必要がある。UMINはN1というプロトコールを利用した大型汎用機のネットワークとして設立された。この当時は、メーカー毎に異なった接続プロトコールを使用しており、異機種を接続するということは非常に大変なことであると考えられていた。当時、国立大学病院では5メーカー(富士通、日本電気、日本IBM、住友電工、日立製作所)の病院情報システムが稼動していたが、UMINはこれらのすべてと接続する必要があった。N1は学術情報センターが採用していたため、各メーカーとも接続の実績を持っており、この時点で唯一の選択肢に近かった。N1接続のためには、接続用のDSUという機器とソフトの改修が必要である。このためのUMIN接続予算が文部省によってレンタル料という形で各大学病院に順次措置された。接続作業は、毎年予算のついた大学毎に数大学づつ行われてきた。
接続作業のためには、技術やノウハウが必要であるが、当時病院情報システムを外部と接続することはセキュリティ上の問題が大きいと考えられており、病院情報システムのメーカー側担当者は、外部への接続の経験がほとんどなかった。また接続作業はベンダー間の共同作業になるため、接続方法、作業分担、テスト方法等についてのベンダー間での打ち合わせが必要であった。更に技術的な問題点やベンダー側の要望についてもUMIN側で把握している必要があった。技術小委員会は、UMIN事務局とベンダー側がいっしょにこうしたことを話し合う「場」を提供するために設置された。こうした経緯から、技術小委員会のメンバーは、各ベンダーの担当者であり、実際の会合はUMIN事務局と技術小委員会との技術的な打ち合わせとして行われた。技術小委員会は、UMINの各大学病院への接続に伴ういろいろな技術的な問題を解決する場という意味で非常に重要で有用に機能したが、すべての大学病院がUMINに接続されて、新規接続がなくなった後には、開催の必要性が薄れていた。
インターネットの発展とそれに伴うオープンな技術の普及は医療情報ネットワークに大きな影響を及ぼした。今までの大型汎用機のシステムは、ハードウエアからOSまで各メーカーで独自のものであり、詳細な知識やノウハウはメーカー側が独占していて、大学側がシステムを開発したり、ネットワーク接続作業を行うことは困難であった。ネットワーク分野を中心にオープン技術の普及(ライセンス料が要求されず、各種文書、ソースコードが無償で利用できる)が急速に進展し、ネットワークの運用に関してはベンダーによる知識・ノウハウの独占はなくなり、大学側で積極的にソフト開発やハードウエアの接続の作業を行うことが可能になった。かえってメーカー側の方が技術・知識の吸収が遅れるという事態も生じてきた。このようなオープン技術の普及の中で、いち早く最新の技術を取り入れたり、実用に耐える安定した技術を選択したり、今後の技術的な面からの運用方針の策定を大学側でやらなければよいものがつくりにくくなっている。このような仕事は、実質的にUMIN事務局で行われてきた。しかしながら、提供サービス及び利用者・利用件数の増加によって、UMIN事務局の業務が増していること、技術が高度化・複雑化しており、ネットワーク技術といってもセキュリティ、ルーティング、マルチメディア通信等の専門分化がおこっていてUMIN事務局だけですべてを担当するのは困難であることから、技術についての問題を検討する専門の小委員会設置の必要が感じられるようになってきた。

2.現況

経緯に記述したようなオープンなネットワーク技術の普及を背景として、新しい小委員会をつくることが検討されたが、従来の技術小委員会が実質的に活動しなくなっている状況にあるため、これを改組・再発足させて、メーカー担当者中心のものから大学関係者中心のものに変更する方針がUMIN事務局により策定された。今後、メーカー側との協議が必要な場合には、適宜協議会を開催することでメーカー側の了承を得ることができた。平成10年1月の第18回運営委員会(鹿児島)でUMIN事務局から本件が提案されて、了承され、筆者が初代の新技術小委員長に就任した。早速、国立大学病院を中心として、技術的な能力の高く、見識のある方を人選して、小委員をお願いした。
平成10年の3月に、第1回の技術小委員会が東京大学で開催された。設立の経緯の説明の後、セキュリティ保護技術、プログラム構築技術について活発な討議が行われた。随時メーリングリストを利用して意見の交換を行っている。
平成11年3月に第2回目の技術小委員会が開催された。ここでは、UMINで導入を計画している暗号と認証技術を利用した仮想医療情報ネットワーク(VPN = Virtual Private Network)が大きな技術的検討課題となっている。これには、採用するソフトの仕様だけではなく、各大学におけるファイアーウォールの運用体制やセキュリティ保護の体制も含めた形で検討される必要がある。現在、運用法やガイドラインの作成が進められている。

3.今後

技術の進歩は今後も継続しておこると予想され、技術小委員会の課題はつきない。まだ小委員会が発足して1年であり、十分な成果があがっているともいえないが、今後の活動の指針として従来のものに加えて以下の2つを考えている。

1)データベースの標準化への取り組み
UMINで提供しているデータベースの仕様については従来UMIN事務局内で検討されて開発されてきた。しかしながら、UMINで国立大学病院に提供していることの影響力は非常に大きく、仕様の策定には注意が必要である。例えば、医療材料マスターデータベースの仕様を策定してUMINで提供しているが、各ベンダーが各大学で稼動する物流管理システムのデータベースの仕様をUMIN仕様にあわせるようになってきている。国立大学病院には主な病院情報システムベンダーがすべて入っているため、どのベンダーもそれに合わせた製品を他の病院にも提供できるようになってきている。また大学病院は最も病院情報システムの活用が進んでおり、地域のリーダーとなっている。このため、各地域の病院がこれと同じ仕様を採用することがおこりやすい。このようにUMINで採用した仕様が事実上の標準になってしまうことが考えられ、このためより多くの意見を吸収できる技術小委員会で取り組むことが必要と考えられる。医療材料マスターの他には、学会演題抄録データベースの仕様策定も当面の大きな課題である。UMINのオンライン抄録登録システムを利用する学会が増えているが、UMINで策定した仕様で各学会にデータが渡されるために、1)印刷会社はUMIN仕様のデータから抄録集をつくるプログラムを作りはじめていること、2)CD-ROMを製作する会社はUMIN仕様のデータを標準にCD-ROM検索プログラムを開発しはじめている。データの仕様(例えば最大共著者数等)が決まれば、印刷会社、CD-ROM製作会社ともソフト開発コストの軽減が可能で、結果的に学会側も利益を得ることができるようになる。UMIN仕様を利用する学会が増えると、これが事実上の標準になってしまう可能性がある。

2)他の小委員会への協力
事務・薬剤・看護・検査の各小委員会は、各々の分野の専門家の集まりであり、各々の分野の専門的知識と技能を有している。しかしながら、提案してもらったアイディアを実際のコンピュータシステムやデータベースとして実現するためにはいろいろな技術的な問題は解決する必要がある。技術小委員会は、こうした意味で他の小委員会を援助できる役割を果たすことが必要であり、今後の重要な機能と考えている。