平成9年6月
文部省高等教育局
医学教育課

T. 大学病院の概要

1 病 院 数(平成8年7月1日現在)
区 分 国 立 公 立 私 立
大 学 数 42 29 79
医学部病院 46 10 72 128
歯学部病院 11 21 33
研究所病院
62 11 93 166
(医学教育課調)

2 1病院当病床数(平成8年7月1日現在)
(単位:床)
区 分 国 立 公 立 私 立
医学部病院 696 844 683 700
歯学部病院 42 60 76 64
研究所病院 124 124
1病院平均 534 772 546 556
(医学教育課調)

3 1病院当患者数(平成7年度)
(単位:人)
区 分 患者延べ数 1日当たり
入 院 外 来 入 院 外 来
医学部病院 213,911 360,319 584 1,345
歯学部病院 16,394 138,751 46 541
研究所病院 28,240 22,716 77 93
1病院平均 169,053 306,104 462 1,148
(医学教育課調)


U. 実習・研修の状況

大学病院では、医学部・歯学部学生の臨床実習のほかに、医師・歯科医師の卒後の臨床研修や薬剤師や看護婦などのコ・メディカル・スタッフに対する卒前の実習や卒後の研修も行っており、広く医療人の育成の場としての役割を果たすようになっています。

1 医師の卒後臨床研修状況

区 分 2年度 3年度 4年度 5年度 6年度
研修対象者数(A) 16,492 15,948 16,072 16,491 16,476
研 修 者 数 (B) 13,170 13,130 13,204 13,875 13,663
研修率(B)/(A) 79.9% 82.3% 82.2% 84.1% 82.9%
大学病院(C) 10,346 10,342 10,502 10,818 10,665
研修率(C)/(B) 78.6% 78.8% 79.5% 78.0% 78.1%
国立病院・療養所 606 620 642 664 674
公私立の指定病院 2,218 2,168 2,060 2,393 2,324
(出典)臨床研修ガイドブック(厚生省健康政策局医事課監修)
2 コ・メディカル・スタッフの実習・研修の受入状況

(単位:人)
区 分 受託実習生 病院研修生
薬 剤 師 2,229 497 2,726
保 健 婦 478 24 502
助 産 婦 860 17 877
看 護 婦(士) 23,269 963 24,232
診療放射線技師 1,649 52 1,701
臨床検査技師 1,918 149 2,067
栄 養 士 1,262 26 1,288
理 学 療 法 士 986 115 1,101
作 業 療 法 士 381 390
歯 科 衛 生 士 4,343 89 4,432
歯 科 技 工 士 351 143 494
そ の 他 2,087 327 2,414
合 計 39,813 2,411 42,224
(医学教育課調)


V. 臨床研究の動向

大学病院における臨床研究は、ガンなどのように生命の危機を脅かすような病気のみならず、患者の生活を著しく損なう慢性疾患など多岐にわたる様々な病気について、原因の究明、診断や治療方法の開発、病気の予防方法など、我が国の医学・医療をリードする先進的な研究を行っています。

○ 高度先進医療の承認状況

先進的な医療技術でその技術と病院の医療スタッフ及び施設・設備面等の要件を満たしたものが承認を受けて高度先進医療として保険の対象となります。大学病院は全て承認を受け、様々な高度先進医療を実施しています。

(平成9年2月1日現在)

区 分 高度先進医療数 大学病院承認数 主な高度先進医療
医 科 37種類 36種類 延141病院 生体部分肝移植手術,造血器腫瘍のDNA診断
歯 科 8種類 8種類 延 27病院 インプラント義歯、顎顔面補綴
45種類 44種類 延168病院

○ 新しい診断方法の確立

様々な病気に対する診断方法の確立は、病気の原因究明や適切な治療を行うために必要なもので、大学病院ではいろいろな病気について患者さんが苦しむことなく、早く、正確な診断ができるように、新しい診断方法が研究されています。

(具体例)

▽ 超音波内視鏡検査
先から超音波を出せる特殊な胃カメラを使って体の内部の様子を今までよりずっと正確に診断できる検査方法です。
▽ 血管内超音波診断法
超音波を出せる細い管を血管の中に入れて、血管の中の異常を正確に診断する方法です。
▽ 造血器腫瘍のDNA診断
血液のガンともいわれる白血病やリンパ腫などの病気には、実は細かな病気のタイプがたくさんあり、タイプによって病気の進み方や薬の効き目も違うことが知られています。このタイプの区別を遺伝子を分析することによって正確に行おうというのが造血器腫瘍のDNA診断です。この結果、一番よい治療方法を簡単に選ぶことができるようになりました。
○ 新しい治療方法の開発
新しい治療法の確立は、治療の効果を高めることはもちろん、患者の負担軽減を図るためにも必要なことで、大学病院においては、いろいろな治療方法の開発・研究を行っています。その主なものとして次のようなものがあげられます。

(具体例)

▽ レーザー血管形成術
先端からレーザーを出せる細い管を血管の中に入れ、血管内部の状態を観察しながら病気の部分に正確にレーザーを当てて治療を行う方法です。
▽ 腹腔鏡・胸腔鏡手術
腹部や胸部の手術を、内部を観察できる細い管(内視鏡)を見ながら大きな傷を作らずに行う方法は、腹腔鏡手術、胸腔鏡手術と呼ばれ、最近広く行われるようになってきました。大学病院ではもっと多くの病気についてこのような手術を行うことができるように、手術の方法や手術に使う機械の研究を行っています。
▽ 定位放射線治療
脳の内部の病気には放射線を利用した治療が行われることがありますが、この場合には病気の部分にいかに正確に放射線を当てるかが問題となります。定位放射線治療とは、放射線を病気の部分に集中して正確に当てることができる新しい治療方法です。この方法によって必要のない部分に当たる放射線の量はずっと少なくなりました。
▽ 生体移植
重い病気のため、内臓の働きが悪くなった場合、内蔵をもらって移植しなければ助からない場合があります。唯一の治療方法として、変わりに他の生きている人の臓器をもらって移植する手術です。肝臓の生体移植が代表的なもので、 日本国内でもすでに300例以上が行われています。専門的な技術と設備が必要な治療であり、国内の生体移植のほとんどが大学病院で行われています。

W. 医療について

1 高度な医療の提供の状況
大学病院では、一般の診療機関では診断・治療が困難な重症や難治性疾患の患者に対して、高度な医療を提供しています。

@ 入院患者の症度別状況
大学病院に入院している患者の症度別状況を見ると、常に生命の危険を伴う病状の患者が10%以上を占め、中等症、難症の患者を含めると約75%となります。このように大学病院では重症、難症の患者に対し高度な医療を提供し、様々な疾病の治療にあたっています。

重 症:生命の危険を伴う病状
中等症:長期の治療により軽快する見込みのある病状
難 症:生命の危険はないが、全治の見込みのない病状
軽 症:比較的短期間の治療で回復の見込みのある病状
その他:主として検査入院

A 入院患者の疾病別状況
大学病院に入院している患者の疾病分類別の状況は、一般の病院に比べ圧倒的にガンなどの患者が多く入院しています。このことからも大学病院での重症者に対する高度医療の実施状況が伺えます。
ガンなどの患者の割合
大学病院26%
一般病院11%
B エイズ拠点病院指定状況
エイズ拠点病院は、各都道府県毎にエイズ診療の拠点となる病院を指定し、指定されたエイズ拠点病院を中心として患者の受入やエイズ診療の研究・開発・啓蒙を行うもので、大学病院のほとんどがエイズ拠点病院に指定されています。このように、大学病院は難治性疾患の治療の拠点となっています。

エイズ拠点病院に指定されている大学病院

(平成9年6月現在)

エイズ拠点病院数 79病院中74病
うち、地方ブロック拠点病
79病院中 4病
2 患者本位の医療の状況

@診療体制の見直し
・患者にわかりやすい臓器別の診療科への見直しを進めています。
(移行のイメージ図)

・初診の患者や受診する診療科がわからない患者の対応にあたる総合診療部を設け ています。
(総合診療部の役割)
初診患者の診療、各専門診療科への紹介
プライマリ・ケアに関する臨床実習・研修の実施
A 患者サービスの体制づくりの状況
ほとんどの大学病院において、患者の受診のための相談窓口となる総合案内窓口を設置しています。その窓口では、医師や看護婦が患者の病状等を聴き、適切な診療案内を行っています。また、再来診療の予約制の実施、気持ちよく診療が受けられるよう窓口の職員を対象とした接遇研修の実施やボランティアの受入などにより、患者サービスの向上に努めています。

B 外国語による対応状況

国際化が進む中で、外国人の受診の機会が多くなってきていますが、言葉の違いから意志疎通が十分に行えないことが問題となってきています。大学病院での外国語による対応の状況を見ますと、英語についてはほとんどの大学病院で対応が可能であり、他の外国語においても、留学生やボランティアの協力を得ながら対応が可能となってきています。

主な外国語の対応状況(79病院中)
区 分 英語 独語 仏語 中国語 韓国語 スペイン語
対応可能な病院数 77病院 61病院 39病院 42病院 13病院 10病院

C 外来診療時間の状況(平均待ち時間)

コンピュータによる時間単位の予約制の実施や投薬、検査などのオーダリング・システムの導入などにより、待ち時間も確実に減少してきています。「3時間待ちの3分診療」も21世紀を前にして解消されてきています。

D 医療情報システムの充実
大学病院では、コンピュータを利用した医療情報システムを充実させることにより、診療のあらゆる部分において情報の正確・迅速・共有化を図り、診療の質の向上や患者サービスの向上を図っています。
・診療予約、料金計算の正確・迅速化
・検査、放射線撮影、薬剤処方、給食等のオーダーを医師が直接入力することによ る正確・迅速な情報の伝達・実施
・検査情報、画像情報、服薬情報等を活用した診療レベルの向上
・患者別情報の把握や人員配置計画に活用した看護業務の効率化、質の向上

E 院内学級の設置状況

大学病院に入院されている患者の中には、疾病上長期間の入院が必要な患者もおられ、特に小・中学校の児童・生徒の場合は、学校で授業が受けられない状態が長く続くことが問題となっております。
このため、大学病院ではこのような長期入院の児童・生徒を対象として、病院内で授業を受けられるよう、院内学級の設置が各教育委員会と共同で進められています。このことにより、治療を受けながら勉強できる体制が整いつつあります。
区 分 設置済 未設置
病 院 数 68病院 11病院

F 患者への適切な情報提供
治療の際のインフォームド・コンセント、処方された薬の説明や服用上の注意事 項などの服薬指導など、患者への様々な情報を適切に提供してきています。

G 患者アメニティーの改善に配慮した病院施設の改善
病室の個室化・居住性の向上、患者食堂、談話室、患者家族控室等の整備など施 設設備面での患者アメニティーの向上を進めてきています。