回旋異常  分娩に際し、児頭は一定の機序に従って回旋運動を行ない、産道を 通過し娩出にいたる。その経過中、回旋方向や胎位・胎勢に異常をき たすものを回旋異常といい、主に以下のものに分類される。 1 反屈位:第一回旋とは児頭が小斜径周囲で骨盤を通過するために 前屈し、頭部が胸壁に密着するものであるが、ときにこれと逆に児頭 が伸展反屈し、後頭が後方に退き、頤部が胸壁より離れる姿勢をとる ことがある。これを反屈位という。原因としては、胎児側では前頸部 の腫瘍・無脳児・羊頭児など児頭の奇形、母体側では、狭骨盤・骨盤 内腫瘍・懸垂腹・前置胎盤・広骨盤・分娩開始時における直腸や膀胱 の充満などがあげられる。前頭位は、軽度の反屈位で、前頭すなわち 大泉門が先進するものであり、娩出面は額後頭平面となるため、児頭 骨盤不均衡となりやすく、児頭の骨盤通過にかなり時間を要するとと もに、高度の軟産道裂傷、続発性微弱陣痛による弛緩出血を起こすこ とがある。また児については遷延分娩による仮死の危険性が大きい。 額位は、額が母体の前方に向かい先進するものであり、頸管の開大に 時間を要し、早期破水や臍帯脱出をおこしやすい。また微弱陣痛どな ることが多い。児が小さい場合は自然分娩可能だが、一般には遂娩手 術を必要とする場合が多い。そのため児の予後はたいへん悪く、分娩 の遷延、頭蓋の圧迫、手術操作などのため死亡することが多い。母体 についても分娩遷延、軟産道裂傷、子宮内感染、子宮破裂などにより 予後不良となることが多い。頭位は、屈曲の程度が極度に達し、顔面 ことに頤部が先進するもので、先進部の頚管への適合が不十分となり 頚管の開大に時間を要し分娩は遷延、微弱陣痛や早期破水をおこしや すい。児については、仮死、頭蓋内出血などを合併しやすい。 2 後方後頭位: 後頭が先進するが、第2回旋が逆になり後頭が後 方に回旋し、児の顔面が前方を向くものをいう。児頭が骨盤内に緊密 に固定しないため、早期破水をおこしやすく、微弱陣痛になりやすい このため分娩は遷延気味となり、また児頭が後頭前頭平面をもって骨 盤を通過するため会陰裂傷を伴うことが多い。また児は仮死で生まれ る確率がやや高くなる。 3 高在縦定位: 児頭が骨盤に進入する際、矢状縫合が入口の前後 径に一致したまま児頭が下降せず分娩が遷延するものをいう。児頭が 小さいか、骨盤が大きい時はこの定位のまま進行、自然分娩の経過を とるが、その他では矯正しない限り分娩は停止する。 4 低在横定位: 分娩第2期中に児頭の第2回旋がおこらず、矢状 縫合が骨盤の横径に一致したままの状態をいい、分娩が停止となる。