5 近未来の保健医療情報システム ○ 情報処理技術の活用を通じて保健医療サービスをより望ましいものとするため、  情報化社会における保健医療の姿を念頭に置きつつ、保健医療情報システムの展開  を考えることとした。ここでは21世紀初頭における保健医療情報システムに関す  るビジョンを描く。   なお、保健医療情報システムが保健医療サービスの提供を支援するものであるこ  とは論を待たないが、他の技術と同様、結果として情報システムが保健医療サービ  ス提供形態に影響を与えることも予想される。 5.1 保健医療情報システムの方向性 ○ 今後の保健医療システムの発展の方向性を、国民(患者を含む)からの要望、保  健医療関係者からの要望、技術環境の変化の三方向から考える。 5.1.1 国民からの要望 (1)専門的高度保健医療サービスへの志向   全人的、包括的な保健医療サービスとともに、専門的で高度な保健医療サービス  を受けることができる体制を要望する国民の声はますます強くなるものと予想され  る。従って、保健医療機関間の連携の強化がより求められる。 (2)在宅医療への志向   自宅にいながら保健医療サービスを受けられる在宅医療への指向はさらに強くな  り、保健医療機関と家庭との連携が求められるようになる。 (3)保健医療情報への関心の高まり   保健医療に関する情報を求める国民の要望がますます高まることが予想され、そ  のための情報システムが必要となる。 5.1.2 保健医療関係者からの要望 (1)医学知識のデータベースの構築と活用   保健医療関係者の間で、新しい医療知識の必要性が高まり、そのためのデータベ  ースが必要となる。 (2)研究者支援情報システム   複数の施設による共同研究に必要な情報を研究参加者に提供する情報システムが  医学研究に活用されるようになるとともに、その研究成果が速やかに臨床医に還元  される情報システムへの要望が高まる。 (3)政策決定のためのデータベースの構築と活用   意思決定者の客観的意思決定を客観的データに基づいて支援する必要が高まり、  そのためのデータベースが求められる。 (4)患者情報の形態の変化   疾病の予防や治験をより充実させるとともに、健康状態の動的な予測を行うため、  個人の健康情報を時系列に従って包括的に整理される必要性が高まり、新しい形態  の病歴データの蓄積方法への期待要望が高まる。 5.1.3 情報処理技術の進歩が保健医療サービスにもたらす変化 (1)情報環境の変化   保健医療現場での情報利用環境は大幅に改善され、特に操作性の改善などによっ  て患者情報の電子化が進展することが予想される。その結果、21世紀初頭には臨  床医の過半数が情報機器を診療に用いるようになるなど情報が保健医療の現場で広  く用いられるようになる。 (2)ベッドサイド端末機の普及   入院患者や在宅患者がベッドサイドで情報機器を利用して医療情報を入手するよ  うになることが予想される。 (3)広帯域伝送路の確保   保健医療情報活用のためのインフラストラクチャーとして、情報の広帯域伝送路  が整備されることが予想される。 (4)高度医療情報処理   情報の高度利用が進み、画像処理や人工知能などに基づく診断(Computer Aided  Diagnosis: CAD)や治験が行われるようになる。 5.2 21世紀初頭に求められる保健医療情報システムの具体的イメージ ○ 5.1における各項目事項をもとに、21世紀初頭に求められる保健医療情報シ  ステムの具体的イメージを描くと以下の通りになる。 5.2.1 総合保健医療福祉情報ネットワーク(図3) ○ 民間・行政、サービスの提供側・利用側などの区分に関わらず、保健医療福祉に  関係する全ての知識、個人が情報のネットワークによって結ばれるようになり、そ  の間の文字、音声、画像などを含む情報交換の一部がこの情報ネットワークを行わ  れることが予想される。例えば、保健医療間傾斜の間では、他の医療機関への患者  紹介、専門医への相談、訪問看護の際の患者情報の報告などについて、また、保健  医療関係者と国民との間では、在宅患者の状況把握、救急時の相談などに利用され  る。 ○ 国際化が進展する中で、医学研究、災害支援、国際協力などの目的に利用できる  情報は、国際的なネットワーク上で利用できるようになる。 5.2.2 保健医療関連のデータベースの構築と活用 ○ 上記のネットワークの基盤として各種データベースが構築される。データベース  は全国レベルまたは地域レベルで設置されるもの、利用者が国民または保健医療関  係者であるもの、データの内容が患者データまたは保健医療サービス支援データで  あるもの、目的が診療用または管理用であるもの、使用料を要するものまたは不要  なものなど、様々な形態が有り得る。国民や保健医療関係者が、このデータベース  を介してネットワークを必要に応じて頻繁に利用するようになることが予想される。   以下に、データベースの代表例を列挙する。  ・個人健康情報データベース:    病歴や医薬品使用歴などがICカードをはじめとする標準化された可搬型媒体   や保健医療機関の持つデータベースセンターなどに蓄積され、これらが、保健医   療サービスに携わる限定された人によって一定のルールに基づいて利用可能とな   る。  ・保健医療サービス支援のための広域データベース:    画像情報を含め、日常の診療活動で有用な教科書や参照情報を納めたデータベ   ースが構築され、遠隔地からでもこれらの情報を取得できるようになる。  ・国民向け健康相談データベース:    各家庭の電話、ファクシミリ、パソコン通信などを介して、健康相談、在宅ケ   ア、救急医療サービスなどを容易にうけることができるシステムが普及し、これ   らのシステムの運用も保健医療関係者の重要な責務となる。  ・医学研究用データベース:    複数の医学研究者が参加する医学研究データは、データベースの形で蓄積され、   情報ネットワークによって参加医学研究者によって利用されるようになる。