4 保健医療情報システムを取り巻く技術の動向 ○ ここでは、保健医療情報システムに関連した最近の技術動向を簡略に記す。 4.1 保健医療情報システム発展の歴史(図1) (1)第1世代保健医療情報システム   保健医療分野の現場におけるコンピュータ利用の開始は1950年代から60年  代に遡る。診療報酬請求に伴う膨大な事務作業の効率化を目的として導入された経  緯があり、この世代の情報システムは一般に診療行為、会計情報、患者基本情報、  来院情報、病名情報など窓口業務に関連した情報の処理に用いられてきた。   また、心電図自動解析システムなど、医療へのコンピュータの利用が開始された。 (2)第2世代保健医療情報システム   医師や看護婦などの発生源入力に基づくオーダエントリーシステムの導入によっ  て、病院総合情報システムとして病棟、診察室、臨床検査部、放射線部などの情報  化が開始された。また、救急医療や地域医療の場での情報化の取り組みも始められ  た。 4.2 21世紀に向けての情報処理技術の動向(図2) ○ 情報処理技術の進歩は極めて急速であり、情報処理関連分野の産業構造も大きく  変化しつつある。保健医療分野における情報化という観点から情報処理技術の動向  をまとめると、技術革新や産業構造の変化によって、製造者主導による保健医療施  設内の事務処理効率化のための情報システムから、利用者を中心とした保健医療福  祉の連携に基づく総合的な情報システムへと変化していく状況にあることが理解さ  れる。 4.2.1 情報処理における技術革新の波 ○ 21世紀に求められる保健医療情報システムの構築に関連した情報処理技術の中  で、以下の各項目が重要である。 (1)ネットワーク化   従来、情報システムは部局内に限定された形での運用が前提となっていたが、ネ  ットワーク技術の向上によって、情報の分散処理、共通利用を図ることが容易にな  ってきた。保健医療分野の基礎的技術として、オンライン・システムにおける標準  化とプライバシーの保護を含むセキュリティー対策が重要な課題となっている。 (2)オープン化   製造者の異なるハードウェア及びソフトウェアを組み合わせて、データの共通利  用を図るシステム構築が進められている。 (3)ダウンサイジング化(小型化)   コンピュータの価格の低下や高性能化に伴い、予算別及び目的別計画に対応した  段階的なシステム整備が可能となるとともに、データ処理・管理の分散化が一層推  進されている。 (4)マルチメディア化(文字、画像、音声の利用)   多様な媒体を用いてより密度の高い情報を効果的に活用するため、文字・画像・  音声などを総合的に取り扱えるマルチメディアに大きな期待が寄せられている。 4.2.2 情報処理関連産業の構造変化 ○ 情報処理技術の進歩によって、以下のような産業構造の変化が起きている。 (1)ソフトウェアの重視   利用者側の目的意識が最優先事項となり、目的達成のためにはいかなるソフトウ  ェアを開発する必要があるかという姿勢が問われている。ハードウェアはソフトウ  ェアを問題なく稼働させるための道具であるとの認識が広まりつつある。 (2)シングルベンダからマルチベンダ(システムインテグレータ、ソフトウェア) へ   保健医療機関がそれぞれ独自のシステムを導入している現状においては、利用者  は半永久的に固有の製造者に依存せざるを得ない。今後は市場原理に基づく技術革  新を妨げない程度において、各製造者が標準仕様に則ったシステム開発を行い、同  一のフォーマット上でデータベースを共通利用しようという動きがある。 (3)製造者間の合従連衡   近年、各製造者間の技術連携が盛んに行われている。各々の特意分野を活かし、  新たな技術を開発しようという姿勢が見られる。 4.3 21世紀の医療情報システムを支える情報処理関連技術 ○ 以下の情報処理関連技術が保健医療分野における情報化を支援することが予想さ  れる。 (1)高度情報通信インフラ(高度ネットワークシステム)   光ファイバーなどを用いた高速・大容量通信網の整備が行われ、保健医療機関、  研究機関、行政機関やデータベース、さらには家庭をも連結することによって、情  報の共通利用が実現可能となる。 (2)携帯型複合情報端末(マルチメディア端末)、高性能パソコン   小型化・低価格化した情報端末を各保健医療関係者や住民などが所有・使用する  ことにより、膨大なデータの分散処理・分散保有が可能となり、情報へのアクセス  も容易となる。これらの情報端末には画像、波形(心電図、脳波など)、文字、音  (心音、肺音)を総合的に取り扱う媒体としてマルチメディアが有効である。 (3)高性能ワークステーション   高性能ワークステーションの活用により、マルチメディアなどの実現が可能とな  る。 (4)オブジェクト指向データベース   蓄積された膨大なデータを効率的に処理し、利用者側の意思決定(治験方針や政  策決定など)の補助となるようなデータベース構築を目指した基盤技術開発が進め  られる。 (5)グループウェアシステム   異なる施設の所有するハードウェア及びソフトウェア両面での共通利用を図るた  め、いわゆる業界標準を用いて構築されたオープンシステムが普及する。 (6)バーチャル・リアリティーシステム   治験のシュミレーションや患者のリハビリテーションなどに高性能のコンピュー  タにより開発されたバーチャル・リアリティーの技術を活用する。