2.高齢者自身による選択 (「与えられる福祉」から「選ぶ福祉」へ) ・ 高齢者は社会的にも、経済的にも自立した存在であることが望まれる。社会の 中心的担い手として行動し、発言し、自己決定してきた市民が、ある一定年齢を 過ぎると、制度的には行政処分の対象とされ、その反射的利益(行政処分の結果 として受ける利益)を受けるに過ぎなくなるというのは、成熟社会にふさわしい 姿とは言えない。 社会環境の変化を踏まえ、介護が必要となった場合には、高齢者が自らの意思 に基づいて、利用するサービスや生活する環境を選択し、決定することを基本に 据えたシステムを構築すべきである。 (選択を可能とする条件) ・ こうしたシステムを構築するにあたっては、高齢者の選択に基づく自己決定を 実効あるものとする観点から、次のような点に配慮する必要がある。 1. 所得の多寡や家族形態等に関わりなく、サービスを必要とする全ての高齢者 が利用できること(サービスの普遍性) 2. サービスを受ける場所やその種類・内容によって、利用手続きや利用者負担 に不合理な格差がなく、公平であること(サービスの公平性) 3. サービスの内容や質が社会的に妥当な標準に沿うものであり、かつそれが適 切に評価されること(サービスの妥当性) 4. 利用者側に十分な情報が提供されるとともに、専門家が高齢者や家族を支援 するような体制が整備されていること(サービスの専門性) (緊急的な保護措置) ・ サービス利用の必要性が高いにもかかわらず、放置されていたり、時には虐待 されていたり、あるいは本人や家族が利用を拒否しているようなケースなどにお いては、本人の自己決定にも限界がある。 このような自己決定に馴染まないような場合については、緊急性があって、高 齢者本人の福祉のために必要であることが明らかな時には、例外的に、行政機関 が適切なサービス利用を確保できるような仕組みが必要である。