【新介護システムの基本理念ー高齢者の自立支援】 (新介護システムの創設) ・ かつてのように高齢者が限られた存在であった時代とは異なり、今や国民の半 数以上が80歳を迎える社会となっている。しかも、年金制度は成熟化が進み、高 齢者の経済的な自立への支えとして機能しつつある。このような中にあって、高 齢者が自らの有する能力を最大限活かし、自ら望む環境で、人生を尊厳を持って 過ごすことができるような長寿社会の実現が強く求められている。 そのためには、これまで述べてきたように、介護に関連する既存制度の枠組み の中での対応では限界があることから、新たな基本理念の下で関連制度を再編成 し、21世紀に向けた「新介護システム」の創設を目指すことが適当である。 (高齢者の自立支援) ・ 今後の高齢者介護の基本理念は、高齢者が自らの意思に基づき、自立した質の 高い生活を送ることができるように支援すること、つまり『高齢者の自立支援』 である。 従来の高齢者介護は、どちらかと言えば、高齢者の身体を清潔に保ち、食事や 入浴等の面倒をみるといった「お世話」の面にとどまりがちであった。今後は、 重度の障害を有する高齢者であっても、例えば、車椅子で外出し、好きな買い物 ができ、友人に会い、地域社会の一員として様々な活動に参加するなど、自分の 生活を楽しむことができるような、自立した生活の実現を積極的に支援すること が、介護の基本理念として置かれるべきである。 ・ したがって、新介護システムは、こうした基本理念を踏まえ、1.予防とリハビ リテーションの重視、2.高齢者自身による選択、3.在宅ケアの推進、4.利用社本 位のサービス提供、5.社会連帯による支え合い、6.介護基盤の整備、7.重層的で 効率的なシステム、を基本的な考え方とすることが求められる。