お わ り に 高齢者介護をめぐる問題は、我が国のみならず、高齢化の進む欧米諸国においても 重要な制作課題となっており、最近ではスウェーデンのエーデル改革やイギリスのコ ミュニティ・ケア改革、ドイツにおける公的介護保健制度の創設など、各国において も高齢社会を展望した様々な改革が進められている。 本報告書が提言した新介護システムは、社会連帯を基礎とした高齢者の自立支援と いう点で、そうした大きな流れと基本的に同じ方向を目ざすものであると言うことが できる。高齢者が自らの知識と経験を活かして社会に積極的に参加し、たとえ介護が 必要となっても、できる限り自立し、自分の生活を楽しむことができるような長寿社 会の実現は、世界に共通する願いである。 新介護システムは、社会保健方式を導入することにより、高齢者自身がサービスを 選択するシステムを確立し、広範なサービス利用を図るとともに、ケアマネジメント の導入等により、在宅及び施設サービスの質的な向上を目指すものである。最近の各 方面においても、公的介護保健に対する関心が高まっていることがうかがえる。 また、こうしたシステムが円滑に機能するためには、それを支えるだけの介護サー ビスが量的に整備されていることが必要であることは言うまでもない。このため、新 介護システムの創設へ向けての検討と併せて、高齢者介護サービス基盤の一層の整備 促進に取り組むことが強く望まれる。 新介護システムの創設は、既存制度の再編成を通じて、制度分立に伴う不整合や弊 害を是正し、我が国社会保障制度全体の機能強化と効率化を推進するようなものでな ければならない。なかでも、これまで介護費用の大きな部分を担ってきた医療保険制 度や老人保健制度について、本格的な高齢社会における役割と在り方についての新た な途を開くものであることが期待される。 この報告書を契機に、新介護システムの創設へ向けて本格的な検討が開始されるこ とを切に望むものである。