教育においては,従来からの教材・教具に加え,マルチメディア等の新しい機能を 持つ情報媒体を教材・教具等として活用できるようになりつつある。このことは,今 日の教育・学習の方法を改善していく上で,様々な可能性を持つと考えられる。同時 に,情報媒体を通して処理された情報は,もとより実体をすべて伝えるものではなく, 教育の本質ともいうべき人間による教育を機器等の作用に置き換えることができない ことは当然である。このため,教育・指導に当たる者や学習者の人間的な交流全体の 中で,適切かつ主体的な活用が行われることによってはじめて,教育の場でマルチメ ディアの特性が生かされていくこととなる。 このようなマルチメディアの適切な活用は,教育の専門家である教員と成長途上の 児童生徒間のふれあいなど,人間同士の直接的な交わりを通じた教育の場である学校 等の教育環境や教育活動の質的充実につながり,さらには,生涯にわたる学習や地域 を超えた情報交流の一層の広がりに貢献することによって,人々の学習活動の内容を より豊かなものにしていくことに寄与することが期待できる。これらを踏まえ,教育・ 学習の質的充実に資する多様な教材・教具を提供する立場から,マルチメディアの適 切な活用を図っていくことが,今後の重要な課題になっていると考える。 初等中等教育においては,児童生徒が社会の変化に主体的に対応できる能力の育成 を基本とし,個人として,また国民として必要とされる基礎的・基本的な内容を身に つけ,自ら学ぶ意欲や,思考力,判断力,表現力等を養うことを主眼とする教育が, 現行の学習指導要領に基づいて進められている。授業等における情報媒体・手段の利 用についても,この目的に沿って,児童生徒の自発的な学習意欲を喚起し,教科等の 指導の効果を高め,個に応じた指導を行うという観点からなされることが必要である。 このような方向で個を生かす学習活動の充実を図るため,児童生徒の思考を助ける道 具,表現する道具,コミュニケーションの道具としてのマルチメディアの活用など, 様々な活用の在り方が考えられる。 高等教育においては,現在,教育の個性化,教育研究の高度化,組織運営の活性化 を目指した戦後最大ともいうべき改革が進行中である。各大学におけるカリキュラム 改革,教育方法の改善,生涯学習ニーズへの対応,社会への情報発信,大学間交流, 世界的な教育研究情報の交流や留学生交流などの国際交流等の一層の推進に資するよ う,情報通信基盤の充実,マルチメディアの活用の充実を図っていくことが求められ る。また,高度情報通信社会の発展基盤を支える高度情報化関連の幅広い教育研究の 展開と専門的な人材の育成が期待される。 様々な年齢層やライフスタイルの人々を対象とする社会教育においては,マルチメ ディアを活用した学習プログラムの開発や学習相談機能の充実など,人々の学習ニー ズの高度化,多様化,個別化に対応し,各々の効果的な学習を可能にするマルチメデ ィアの活用の促進が望まれるとともに,文化活動,スポーツ活動の促進や質的向上を 図る上でも,同様の観点からの取組が期待される。また,社会教育施設におけるコン ピュータ講座の開設など,マルチメディアの利用に関する学習機会の提供の促進も求 められる。 さらに,教育・学術・文化・スポーツにわたる諸活動の機会に関する情報の提供や 内容に関する情報の流通など,人々が共通の興味・関心や必要に応じて幅広い情報を 共有し,交流できる情報通信ネットワークシステムの形成に努めていく必要がある。 なお,これら全体を通じ,例えば,漢字,かなによる文化などに象徴される,日本 の言語文化や,人々の伝統文化,生活文化の基盤との調和等に十分配慮した活用方法 や,ハードウェア,ソフトウェアの研究開発について,関係者において常に意を用い ていくことが望まれる。