第2回保健医療福祉サービスの情報化に関する懇談会議事概要 日時等 :平成7年3月10日(金) 15:30〜17:00      厚生省特別第一会議室 出席委員:石井委員、大山委員、黒木委員、佐谷委員、篠原委員、高橋(紘) 委員、      坪井委員、仲村委員、古川委員、吉田委員 1.事務局より、情報化に関する最近の動きとして以下の(1)-(3)の資料について、  また、フリートーキングのための参考資料として(4)及び(5)の資料についてそれ ぞれ説明が行われた。  (1)「厚生省行政情報化推進計画」(平成7年3月7日厚生省決定)  (2)「高度情報通信社会推進に向けた基本方針」(平成7年2月21日高度情報通信    社会推進本部決定)  (3)「情報社会に関する関係閣僚会合について」  (4)「情報化の意義等に関する関係審議会等の意見の概要」  (5)「保健医療福祉サービスと情報通信に関してこれまでに実施された意識調査の    概要」 2.高橋(紘) 委員より郵政省「高齢化社会における情報通信の在り方に関する調査  研究会」報告書についての紹介があった。 ○ この報告書は、高齢社会における情報通信技術を利用したアプリケーションの開  発についての政策ビジョンを調査・実験を踏まえてまとめたものである。   報告書では、「情報長寿社会」という概念を考え出し、具体的にはパーソナル・  ハンディ・フォンを利用した徘徊老人探査システムやテレビ電話を利用した在宅医  療システムについて実験を行った。また、介護の専門職や介護している家族に対し  て、将来どんな情報通信技術が可能になったらいいのかなどについて意識調査も行  った。 3.事務局の資料説明に対する質疑及び情報化の意義等に関するフリー・トーキング  が行われた。その概要は以下のとおり。 ○ 医療の情報化について医師の急激な意識改革が求められていることを感じている。  高齢の医師の多くはパソコンのキーボードを叩くこと自体に抵抗があるのではない  かと思うが、診察室や検査室などの医療現場にはすでにかなりパソコンなど情報機  器が配置され利用されている。   高度情報通信社会推進本部の報告書で指摘している病院等の待ち時間の短縮など  医療サービスの効率的な提供のためには必ずしも高度な情報化によらなくても、医  療制度や診療報酬の在り方を検討することによって対応できるものがあり、幅広く  考えていく必要があるのではないか。 ○ 保健医療福祉サービスの向上、あるいは新たなニーズへの対応等を図るためには、  保健医療福祉の情報を活用することがまず最初であり、コンピュータやネットワー  クは、あくまでもツールであることをはっきり位置づけるべきである。従来のシス  テムを見ると、ネットワークの制約や機械の能力を前提にシステムを組んできたが、  それではユーザーの立場に立ったものとはいえない。まずユーザーの立場に立って  どういうシステムが必要なのかを明らかにすべきである。そして、次に使えるシス  テムがあれば、それによりどういうサービスが実現できるのかを考えていくべきで  ある。   その際、厚生省は国民のすなわちユーザーの代表として技術基準を明確にして欲  しい。パソコンや情報システムはこういうことができないとだめだということを言  って欲しい。例えばその基準としては、(1)安全性の確保、(2)再現性の確保(情報 が流通によって変化しないこと)、(3)共通利用性の確保が考えられるが、これらの 条件を満たしたシステムは現在ほとんどない。 ○ 保健医療福祉の情報自体に価値があるのであって、システムそのものを作ること  を目的としているのではないことを念頭に議論を進めるべきである。 ○ 使いやすいコンピュータという問題については、使う人間の教育と機器の使い易  さは裏腹なものであり、何らかの形で機器に慣れることも必要ではないか。 ○ ウイズ・ネット(保健・福祉情報システム)については、お年寄りの相談のため  のデータベースを全国一本で作り、都道府県のシルバー110番で即時に回答でき  るシステムとして運用されているが、最初はこれができる、あれもできると思って  作られたが、実際にはあまり活用されていない面がある。システムを使う人がキー  ボードに馴れていない面があるのではないかとも思うが、情報化という便利なシス  テムを作ることが即それが使われることにはならないのではないか。情報化するこ  とと、それが便利だから使われることとの間には何かワンクッションあるように思  う。何がネックなのか、どんな工夫がいるのかを考えていく必要がある。 ○ 情報システムという手段を使って、国民全体のどの部分をどうするかのグランド  デザインがないといけないのではないか。情報システムの目的やどういう人たちが  使うのかといったシステムの分析が大事である。   保健の分野でいえば、その目的は健康の保持・増進であろうが、健康の定義は様  々である。WHOの定義によると、地域のすべての人たちがウエル・ビーングの状  態になることとされている。したがって、すべての地域住民がウエル・ビーングの  状態になるように個人と集団と環境への支援をすることが保健活動であると思う。  そういう観点から情報システムを一つの手段として考えた場合、  ・いつでも、どこでも健康の保持・増進を図るための健康生活情報を手に入れるこ   とができるシステムを構築すること、  ・健康増進に関する自助、共助を情報化がサポートする、すなわち意思決定をサポ   ートできるような生活指針情報システムを構築すること、  ・個々の住民の専門的ニーズに対応するためには個人の健康情報を経年的に蓄積・   還元するシステムを構築すること、  ・保健医療福祉計画の策定・評価など、地域における政策決定を支援するシステム   を構築すること、  ・保健所のコーディネーション機能を発揮できるような保健医療福祉情報システム   を構築すること、  が必要だろうと考えている。   厚生省は「健康」の定義をウエル・ビーングという状態になることと明らかにし  た上で、情報システムに関する保健医療福祉の役割分担や連携についての基本的な  ビジョンを明確にする必要があるのではないか。 ○ 情報化を実行するためには戦略が必要であり、長期、中期、短期の計画を描き出  すことが重要ではないか。   具体的な提案としては、個人情報の蓄積を情報システムで実現して欲しい。これ  が進むと診断治療の精密化が進むことになる。強制をするものではないが、自分の  病歴を全部ICカードに収めて残すことが子孫のためになるのではないか。   二つ目は、基幹病院間の通信回線の設置と情報化を推進して欲しい。がんのネッ  トワークのように疾病別ではなく、もっとネットワークを広げて行くべきである。   三点目は、病院のシステムズエンジニアは質が低い。優秀なエンジニアは金融分  野に派遣され、医療現場には良い人材がこない。病院職員でシステムを開発するよ  うな優秀な若者に対しては、そのシステムを国が普及させたり、適当な対価を開発  者に支払うような促進策も必要ではないか。 ○ 病院はオンラインシステムを導入すれば嫌でも使わざるを得ない状況になる。頭  で考えて「これは便利ですよ」と押しつけて、使わなくても全然不便ではないとい  うシステムは駄目ではないか。本省との保健所とのオンラインシステムにしても当  初は心配な点があったが、今ではちゃんと稼働している。高齢者層は難しいかもし  れないが、ある程度ターゲットを絞って必要な機械を配り、いじるような環境にす  ることが必要。   保健医療カードシステムはカードを持っていても本人が自分の情報を見れないシ  ステムになっている。そうではなく自分で情報が見れて情報化になじむ環境が必要  ではないか。 ○ 世論調査の資料で昭和60年の調査があるが、不足している情報の一番として在 宅診療が上がっている。この調査はニューメディアブーム当時の古い調査であり、 今はどうか。当時イメージしていた情報化の恩恵というものについて、国民の見方 は変わってきているのではないか。   その当時から国民が期待を捨てていった部分というものが何なのかを考えながら  情報化を進めていく必要がある。   東京ではどの医者に行っていいのか分からないくらい多様な施設があり、宣伝も  強い感じがして抵抗がある。一般の人が地域で平等に相談や診療を受けられるシス  テムがあれば良いのにと思う。むしろそういうシステムを期待し始めているのがこ  の10年の動きではないのか。 ○ 一点目は、個人情報の一元的な管理についての話だが、そのこと自体は技術的に  可能である。普及しないのは機器の共通利用性がないからであり、このために情報  を集める手間とコストが大変な負担となっている。今後導入する医療機器について  は、少なくとも共通利用できるインターフェイスを持つようにすることを明確に位  置づけていくことが必要である。   また、法律的には、現在、情報に所有権は認められないとされているが、こうし  たことが医療界の中ではいま一つ明確になっていないことも問題となっており、こ  の点も情報化を進める上での必要な観点である。   二つ目の基幹病院の通信回線の設置については、例えばがんセンターでの取組み  のように重要だと思うが、基幹病院だけを結ぶことが国民にとって良いサービスに  なるとは限らない面もある。かえって患者の基幹病院への集中を加速させることに  もなりかねない。ハイエンドな装置がある世界も必要だが、同時に簡単で、性能は  低いがサービスの質の向上に役立つものも必要である。こうした意味で光ファイバ  ーを使わなくても、公衆回線でやれることも考えていくべきではないかと考える。  三点目の人材の問題については、工学部の優秀な人材が医療の分 野に入ってきて  いない理由の一つとして、日本では医学系の者と工学系の者が上手く協力して仕事  をしにくい状況がある。アメリカでは両者はイーブンな関係の下で、自分が持って  いないものは 相手からもらってきてより良いものを作ろうという発想が明確にあ る。 ○ 医療に関する個人情報の共通利用性の確保を問題にするのは、他の多くの情報と  異なって医療情報そのものに情報としての価値があり、社会システムとしての医療  の中で資源として位置づける価値があるからだと考える。 ○ わが国においても医学系の者と工学系の者が対等に仕事をしている大学の研究セ  ンターがある。しかしながら病院になると工学系の人を置く場所がない。規則で決  めるなどの工夫がいるのではないかと思う。基幹病院の情報化はあくまでも現実性  を考えてのこと。拠点主義でモデルで実施して、情報化のメリットを見せるという  ことが必要ではないか。その上で中・長期計画として一般病院の情報化を進めてい  くべきではないか。 ○ 先端技術を扱っている人々に保健医療福祉は非常にアトラクティブな分野である  ことをきちんと提示する必要がある。福祉の情報化は既存のテクノロジーでは無理  であり、非常にフロンティアな領域であるということを逆に見せていくことで、良  い市場になれば自然と優秀な人材が集まるのではないか。   例えば、画像を一番上手く使わないといけないのが医療・福祉の分野である。   また、現場で地域の開業医の方と一緒に仕事をして感じたことは、医師が必要と  している情報は退院した患者をどこへ入れたらいいのかなどの福祉情報であり、一  方、ケースワーカーが必要としている情報は適正な質のいい医療情報であるという  ことである。医療と福祉はこのようにクロスオーバーしており、両者の言葉やテク  ノロジーの共通化が必要となっている分野である。福祉従事者にとっての保健医療  情報、保健医療従事者にとっての福祉情報という視点を是非入れて欲しい。 ○ 今の時代は先発が必ずしもうまくいっているとは限らない。古い時代に入れたシ  ステムはメーカーでもメンテナンスができなっている。そういう意味で、今システ  ムを導入することにはダウンサイジングで分散型でいい状況でできるというメリッ  トがある。 ○ 今回の地震で通信の認識が変わったと思う。電話だけでは不十分で、衛星も含め  た多様な無線、多様な通信手段を確保すべきという共通認識ができたが、これは良  いことである。 ○ 先程この10年間で情報化への期待が薄れたのではないかとの指摘があったが、  この10年のワープロ、ファックスの普及に見られるように、ベーシックなところ  では情報化は進んでいると思う。教育現場においてもパソコン設置が早いスピード  で進んでいる。中小企業や飲食屋がインターネットにホームページを設ける時代に  なった。学生の間では意識改革がどんどん進んでいる。 4.事務局より、懇談会の議事録及び主要な資料についてのパソコン通信による情報  提供を、(財)医療情報システム開発センターにお願いをし、近いうちにスタート  させたい旨の説明があった。 5.次回の懇談会は、4月12日午後3時から、次々回は4月28日の午後3時から  開催することとなった。