前に述べたような免許取得後の実際の医師の診療能力を考慮すると、臨床研修は  あくまで医師の自発的努力によって行われるものという現行の臨床研修制度は、適  切な医療の確保という観点からみると必ずしも十分なものではなくなってきている。  また、卒直後から専門分野のみの狭い領域の研修を行うことは、その分野の知識及  び技能しか持たない医師を養成することにもなると考えられる。   21世紀の高齢社会の到来を控え、全ての医師が全人的な診療能力を修得できる  研修を修了し、その後、患者とより良い信頼関係を築ける十分な診療能力を有する  医師として診療に従事することが望まれる。   このため、医師が診療に従事するに際し充実した研修体制を構築し、国民からよ  り一層の信頼を受けられる医師を養成することが必要と考えられる。これらを踏ま  えて、本部会は診療に従事しようとする全ての医師に関して、幅広い基本的な診療  能力を身につけることが出来るように、基本的には臨床研修を必修とするとともに、  その内容等の改善を図ることが望ましいと考える。   ただし、このためには別紙のとおり調査審議しなければならない課題が数多くあ  り、これらの課題を検討しつつ、必修とすることの是非及び必修とする場合のその  具体的な方法について、引き続き慎重に調査審議する必要があると考える。   特に、必修とする場合の方法については、制度上の措置とするのか、又は事実上  それが担保されるような措置を講ずることとするのかを検討するとともに、制度上  の措置とする場合には、臨床研修を修了していない者は、臨床研修病院等において、  かつ、指導医の指導監督の下において以外では、診療に従事しないこととするなど、  必修を法的に確保する制度のあり方について十分検討する必要がある。   研修内容、研修施設等については、一定の研修目標を達成できるよう、1 研修プ  ログラムの在り方、2 現在、ストレート方式、ローテイト方式及び総合診療方式に  区分されている研修方式の在り方、3 病床数、指導医数等に応じた研修医の受入れ  条件、4 臨床研修指定病院や大学附属病院の取扱い等について、十分検討すべきで  ある。   研修指導体制については、臨床研修病院を法的に位置付け指導医の定員化を図り、  その費用についても公的助成を図るとともに、指導医に対する研修の場の拡充や、  指導医の資格認定制度等も検討すべきである。   研修修了の認定方法については、必修化の趣旨、その方法等を踏まえて十分に検  討すべきである。   研修医の処遇改善等については、必要な財源確保ができるよう幅広い観点に立っ  て検討すべきである。なお、現状では、研修医が臨床研修中の病院以外の医療機関  において、非常勤等で診療に従事しているケースが見受けられ、このことが研修医  の生活の安定等を図るうえで補完的な役割を果たしているという実態がある。また、  そこで提供される医療の質やそれに対する経済的評価という点等で、こうした実態  が適切であるかどうかとの指摘もある。臨床研修を必修とすることになれば、こう  した実態面に大きな影響を与えることとなるが、こうした点についてどのように対  応するのか、また、この場合に、保健診療との関係をどのように考えるのかという  点についても検討が必要である。   なお、卒前の臨床実習と卒後の臨床研修の連携は重要であり、臨床研修を必修と  することになれば、例えば、卒前の臨床実習においては、基本的な知識・技能及び  態度を中心に学習させ、卒後の臨床研修においては、幅広い臨床経験を重ねること  により医学・医療の今日的な進歩を踏まえた日常の診療を可能とするような知識・  技能及び態度を修得させるなど、というように両者の関係をより整合性を持って整  理することが可能になるものと考えられる。