(1)臨床研修の制度的位置付け    医師法上、医師国家試験に合格し医師免許を取得した者は、直ちに単独で全て   の医行為を行える医師として扱われるが、この考え方は、医師として日常遭遇す   る疾患についての診療に必要な知識と技能の多くは、卒前の臨床教育(技能につ   いては特に臨床実習)で修得するので、その成果を医師国家試験で判定し、これ   に合格して免許を取得すれば診療に従事する医師として必要な知識・技能を有す   ることになるというものである。    このような中で、臨床研修は前述のとおり、免許取得後の医師の自発的努力に   よって行われるものとして、医師法に位置付けられており、その目的は、教育・   研修に関する高い機能を有する病院において、適切な指導責任者の下に、卒前の   臨床教育で得た幅広い知識及び技能を基礎に、診療に関する知識及び技能を実地   に練磨するとともに、医師としての資質の向上を図るというものである。 (2)臨床研修の制度的課題    近年の医学・医療の進歩に伴い医学生が学ぶべき事項は増加し、その内容も高   度化、多様化してきている。このため、医学生が修得すべき基本的な知識及び技   能も増大してきた。    一方卒前の臨床実習は臨床教育の中でも重要な位置付けがなされており、今後   ともその充実を図っていくことが望まれるが、平成3年5月の臨床実習検討委員   会(厚生省健康政策局長の私的諮問委員会)の最終報告において、臨床実習で医   学生に許容される医行為は、一定の条件下で侵襲性のそれほど高くないものに限   られ、その意義は単に技術の修得を目的とするものではなく、医師としての自覚   を養うことが重要であるとされている。他方、医療技術の進歩には日々めざまし   いものがある今日、医師が診療行為を行うに当たっては、一層広範な知識及び技   能が必要とされており、このためには一定期間の臨床研修を行うことが不可欠と   いえる状況になってきている。    このように医学・医療の進歩等とともに現在の卒前の臨床教育では、臨床医と   して日常遭遇する疾患に対する必要な知識及び技能を修得するのに必ずしも十分   ではなくなってきており、現実には、医師として必要な臨床面での知識及び技能   の多くは臨床研修によって修得されている。すなわち現在の臨床研修制度は、医   師として医学・医療の進歩を日常の診療に反映させ得る基本的診療能力を修得さ   せる役割を担っているといえる。    なお、臨床研修制度については、従来から研修医の処遇改善、研修指導体制の   充実及び研修内容の充実、改善等をいかに図るかが大きな課題となっている。    研修内容の充実、改善については、本年度から研修プログラムによる研修が開   始されたところであるが、今後、大学附属病院における研修プログラムの作成や   それに基づく卒後臨床研修目標の達成を積極的に推進することが必要である。さ   らに研修内容を充実、改善するためにも、研修医の処遇改善、研修指導体制の充   実を図る必要があると考える。