3.4 博物館情報 普通博物館という名称は考古資料や生活資料を陳列している場所として狭い意味に 使われている。しかし美術館,水族館,動物園,植物園,科学館,なども博物館の範 疇である。そこでは対象の違いはあっても,さまざまなモノを集め,それをある種の 体系にしたがって展示をし,そのモノの世界をより良く理解させるようにする施設で ある。 したがって博物館ではまずモノを集めることが重要である。しかし単にモノがあっ てそれが適当に並べられているだけでは不十分である。各々のモノについて更に詳し い知識,情報が必要である。それは,名称(学名),収集地,分布状況,年代,など 基本的なものもあるが,対象とする分野によって必要な項目は異なっている。 普通どこの博物館でもその館が対象にしているモノに対して情報カード,ある いは資料カードが用意されている。そこにはいろいろな項目がかかれている。名称ど の基本情報はカードに記入されているが,そのほかの情報となるとほとんど記入され ていないのが現状である。ましてやコンピュータ化がなされている場合は少ない。 情報カードの作成ができていない原因のひとつは,分類ということにこだわってい るからである。図書の場合にはUDCやNDCなど分類体系ができている。ところが 考古学資料や民族学資料などは,分類体系は研究がある程度進んでからでき上がるも のである。しかし分類項目が定まらないとデータ化が行えないとしてデッドロックに 陥っている場合が多い。カードだけで検索をしようとすれば分類がしっかりしていな いと捜しにくいということになる。しかしコンピュータを使って検索する場合には, その情報カードに含まれている文字列すべてが検索の対象になるから,断片的なデー タであっても活用可能なのである。そこがカードのみのシステムとコンピュータ・シ ステムとの大きな違いの一つである。 それと関係して大小さまざまな博物館で情報化が進んでいない要因として標準化と いうことにこだわっているところがある。図書の分類体系と同様の標準的な項目をす べての博物館で共通に利用できるのをまっているというケースがある。標準化はそれ ができるに越したことはない。なかなか足並みが揃うものではない。それをまつてい たのでは資料がどんどんたまる一方である。 もちろんコンピュータを使ってのデータベースのことを全く無視したデータ作成は 困るが,各博物館でデータフォーマットが異なっていても構わないのである。とにか くそれぞれの博物館でコンピュータにデータを入れて検索できる体制にあれば,他の 博物館とのネットワークによって相互利用ができるようにできるのである。 記述データだけではなく博物館では画像データが重要になる。対象物の姿が表示さ れるような情報化が望まれる。それは平面的な画像であったり,立体的な画像であっ たりする。普通どの博物館でも展示されているモノの数は収蔵品のごく一部である。 そこでコンピュータやハイビジョンによって展示場にないものの情報を提供すること が考えられている。また展示場や収蔵庫に距離を置いて存在しているものを相互に比 較したいということがある。現在の物理的な空間ではそれは容易ではないが,コンピュー タによる画像であれば隣接して並べることができる。