(1) 被験者の同意は自発的な意思を前提としている以上、被験者の選択に当 たっては被験者の同意能力が前提となる。すなわち、被験者が治験の意義を理解 し、自分の利害を勘案して判断し、自分の意思を自由に表明する能力を有するこ とが必要である。このため、同意の能力を欠く患者については、当該治験の目的 上、被験者とすることがやむを得ない場合を除き、原則として被験者としない。3 例外的に、同意の能力を欠く患者を被験者とする場合は、GCP第17条第2項に よるものとするが、さらに配慮すべき事項は次のようになる。
(2) 経済的理由又は従属関係によって同意の任意性が損われるおそれのある 者を対象とする場合には、特に慎重な配慮が必要である。
(1) 精神障害の治療を目的とする医薬品の治験において、精神障害患者を被 験者にせざるを得ない場合。4 GCP第17条第2項の「法定代理人等被験者に代わって同意を成し得る者」とし ては、下記により考慮する。
可能な限り被験者に説明し、その同意を得るよう努力することが必要である。
被験者から治験の遂行に必要な安定した同意が得られる場合には、法定代 理人等被験者に代わって同意を成し得る者(代理人)の同意は必要ない。治験の 遂行に必要な安定した同意が得られない場合には、代理人の同意が必要になる。
(2) 意識障害の治療を目的とする医薬品の治験において、意識障害患者を被 験者にせざるを得ない場合。
意識障害患者は、原則として精神障害患者の場合と同様に取り扱ってよい。 (3) 小児用の医薬品に関する治験において、未成年者を被験者にせざるを得 ない場合。
代理人の同意を得る。被験者が説明を理解できる能力を有する場合には、 その範囲で被験者の同意をも得るべきである。
(1) 法定代理人とは、未成年者については親権者又は後見人、禁治産者につ いては後見人がそれにあたる。 (2) 法定代理人以外には誰が同意しうるか。親権者になっていない親、後見 人になっていない配偶者などのほか、事情によっては子については監護者、精神 障害者については保護義務者またはそれに相当する者なども、可能的範囲にふく まれる。すなわち、被験者の最善の利益をはかりうる人であればよく、かつそう でなければならない。すなわち、この場合の同意者は、抽象的な関係により一律 に劃すべきものではなく、むしろ両者の生活の実質や精神的共同関係からみて、 被験者の最善の利益を測りうる者が適当というべきであろう。5 同意を得るに際しては、個々の治験毎に作成されたGCP第18条の内容を含む説 明文書に基づき、治験担当医師が被験者に説明するものとする。説明文書は、予 め治験審査委員会の承認を得ておかなければならない(第3章、第4章及び第6章 参照)。
(3) その意味では形式的には法定代理人であっても、当然に代理権をもって いるのでなく、上記(2)のような実質をもつ者に限られるべきであろう。
(参考)薬事法施行規則第67条第5号
治験の依頼先に対し、治験の内容等を説明することが医療上好まし くないと担当医師が判断する場合等を除き、治験の内容等を被験者(被験者が同 意の能力を欠く場合はこれに代わつて同意をなし得る者)に説明し、その同意を 得るよう要請すること。