第7章 治験担当医師

1 治験担当医師は、治験の実施について予め当該医療機関の長の了承を得なけ ればならない。
2 治験担当医師は、GCP第14条第1項第1号を検討した上で、GCP第16条に基づき 被験者を選定しなければならない(第10章参照)。
3 治験担当医師は、被験者の安全性を確保し若しくは福祉を目的とするため又 はその権利を保護するための緊急の場合を除いて、治験実施計画書を遵守して治 験を実施しなければならない。
4 治験実施計画書について重大な変更(第4章の3参照)が行われる場合には、 治験担当医師は当該医療機関の長の了承を得なければならない。なお、治験実施 計画書の変更は、治験担当医師ではなく、治験総括医師が行うものである。
5 治験担当医師は、医療機関の長による決定(別紙1に様式の例を示す)及び治 験審査委員会の意見(別紙2に様式の例を示す)を治験総括医師に報告する。
  なお、別紙1及び別紙2を複写して提出することによって上記の報告をするこ とができる。
6 治験担当医師は、治験の実施中に重篤な副作用が発生した場合には、速やか にその所属する医療機関の長、治験総括医師及び治験依頼者に文書をもって報告 しなければならない(別紙4に様式の例を示す)。この「重篤な副作用」とは、 通常、治験薬等による副作用でないことが明らかなものを除く死亡、障害若しく はこれらにつながるおそれのある症状又は事故であって、治験担当医師が重篤と 認めたものである。
7 治験担当医師は、当該治験が長期(例えば、1年)に経過する場合等には、必 要に応じてその進行状況を治験審査委員会に報告する。
8 治験担当医師は、正確な症例記録を作成し、個々の被験者の治験の終了後速 やかに記名及び捺印し、治験総括医師に提出する。
  記載に際しては誤記等に注意し、訂正を要する場合には訂正印を押す。更に、 重要事項に関する訂正の場合には、訂正の理由及び日付を記載する。
9 症例記録の作成、取扱い等においては、被験者の秘密保持について配慮する 必要があり、通常、症例記録の記載は次のようにする。
(1) 被験者は診療録番号等で特定できる記載があればよく、氏名については イニシャル等でよい。
(2) 被験者の同意の記録は、その取得の状況(文書又は口頭、本人又は代理 人(代理人の場合は続柄等)、取得年月日等)が分かるようにする。
10 治験担当医師は、治験の終了後速やかに医療機関の長に治験終了報告書(必 要により、症例記録の写しを添える)を提出する。実際の書類の提出窓口は、医 療機関ごとで定めればよい。
なお、治験が中止された場合においても、同様の手続きを行う。
治験終了報告書の記載事項は主として以下の項目である。
ア 治験終了報告書の提出年月日
イ 治験依頼者の名称、所在地
ウ 治験課題名
エ 治験担当医師の記名、捺印(複数の場合には全員)
オ 治験対象者数
カ 治験成績の概要(有効性及び副作用、副作用があった場合にはその経過、 処置等も記載する)
キ 治験薬等の受領及び払い出しに関する記録
ク GCPの遵守状況(同意の取得、治験実施計画書の遵守、記録の保存、そ の他必要事項)
 なお、治験終了報告書の写しを治験総括医師及び治験依頼者に提出するこ とはGCP遵守の適切な確認資料となる。
  ケ その他
11 同一医療機関で複数の治験担当医師が治験に関与している場合には、上記1、 4、5、6、7及び10について個々の治験担当医師が重複して行う必要はなく、代表 者たる治験担当医師が行えばよい。この代表者たる治験担当医師とは、原則とし て、薬事法施行規則第68条に規定する治験の計画の届出で言う「治験の実施責任 医師」のことである。
(参考)薬事法施行規則第68条第1項第6号
    治験の依頼をしようとするものは、あらかじめ、治験の計画に関し、 次の事項を厚生大臣に届け出なければならない。
    6 治験の実施機関ごとの名称、所在地、治験の実施責任医師の氏名 及び治験薬等の予定交付数量 12 医療機関の長が治験担当医師であることがありうるが、この場合においても、 治験審査委員会の独立性は保証されなければならない。
13 治験担当医師は、医療機関の長、治験審査委員会、治験総括医師又は治験依 頼者等から調査・確認等の要請があった場合には、必要な措置を講ずること。
14 第1相試験における治験担当医師は、動物実験データから人間への外挿や薬 物動態について理解のできる医師であるべきで、ことに臨床薬理学に造詣の深い 医師が望ましい。更に当然のこととして、治験薬の種類によっては専門領域の医 師との協力も必要である。

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