第4章 治験審査委員会

I 医療機関における治験審査委員会

 1 治験審査委員会においては、主として治験の目的、計画及び実施並びに倫 理性の面から当該治験を実施することの妥当性を検討する。

 2 治験を実施することの妥当性の判断は、当該医療期間内に設置され、その 状況をよく知っている治験審査委員会で行うことが最も適切かつ効果的と考えら れる。

 3 治験審査委員会の運営について明確にするため、医療機関の長は、次の事 項を含む治験審査委員会規定を文書により定める。

(1) 委員の指名

 委員は、医療機関の長が指名する。

(2) 構成

 医学、歯学又は薬学に関する専門知識を有する委員は、原則として医療機 関内の医師、歯科医師又は薬剤師の中から選出し、薬理学又は臨床薬理学の専門 知識を有する者を委員に加えることが望ましい。なお、当該医療機関内において 専門家が確保できない場合に、当該医療機関外の者を委員として委嘱することは 差し支えない。医学、歯学又は薬学の専門家以外の委員は、非専門家として被験 者の人権保護等倫理面での審議を期待するものであり、識見の高い一般人等の参 加が望まれる。治験審査委員会は、合計5人以上の委員で組織する。

(3) 委員長の選任

 治験審査委員会の委員長の選任方法を定めておく。

(4) 当該治験の担当医師である委員の出席

 当該治験の担当医師である委員は、説明するために出席することはできる が、審議、採決に参加することはできない。

(5) 開催

 必要に応じ開催の定例日、成立要件等について定めておく。

(6) 審議等

ア 治験を実施することの妥当性についての審議
 治験依頼者から提出された資料(第3章参照)により次の事項について 審議する。なお、必要に応じ治験担当医師の説明を求める。
 (ア) 治験の目的及び計画(治験実施計画書における被験者の選択基準、 除外基準、試験方法、併用禁止薬、中止基準等)並びに実施が妥当なものである こと。
 (イ) 同意を得るに際しての説明文書(第3章、第6章及び第10章参照)の 内容が適切であること。
 (ウ) 同意を得る方法が適切であること。
    被験者の同意は、原則として文書で得るべきであるが口頭で同意を得 ることがある場合には、その旨治験審査委員会の確認を得ておくこと。また、同 意の能力を欠く等により被験者本人の同意を得ることは困難であるが、当該治験 の目的上それらの被験者を対象とした治験を実施することがやむを得ない場合に は、法定代理人等被験者に代わって同意を成し得る者(以下「代理人」という。 第10章の4参照)の同意を得る旨治験審査委員会の確認を得ておくこと。
 (エ) 治験実施計画書の重大な変更の妥当性について確認すること。
    治験実施計画書の重大な変更とは、投与量の大幅な変更、検査の大幅 な増加等のように主として被験者に対する条件が厳しくなる可能性がある場合等、 有効性・安全性の評価方法の基本的方針の変更を含む治験実施計画書の大きな変 更が該当する。
イ 治験の実施中又は終了時に行う調査、審議
 治験審査委員会は、治験の実施中又は終了時に次の事項について治験担 当医師から適宜報告を受け、また、必要に応じて、自ら調査を行うことができる。
 (ア) 被験者の治験参加の同意が適切に得られていること。
 (イ) 治験の進行状況等が適切であること。
 (ウ) 治験の実施中に生じた重篤な副作用等について医療機関の長の求め に応じ、当該治験の継続等について意見を述べること。

(7) 採決の方法及び審議結果

ア 治験を実施することの妥当性等についての採決の方法を定めておく。
イ (6)アの審議結果については、下記の例示を参考として定めておく。
 (ア) 承認する
 (イ) 修正を行った上で承認する
 (ウ) 保留とする
 (エ) 不承認とする

(8) 意見の提出

 治験審査委員会は、審議結果等を取りまとめ、医療機関の長に意見を提出 する(第5章(4)の審議等の記録参照)。

 4 治験審査委員会は、医療機関の長、治験担当医師及び治験依頼者から独立 したものでなければならない。このため、医療機関の長が自ら治験審査委員会の 委員となることは適当でない。

II 共同の治験審査委員会

 1 治験の審査は、治験を実施する個々の医療機関内に設置された治験審査委 員会で行うのが原則であるが、医療機関が小規模等のため、単独の治験審査委員 会の設置が困難な場合に、例外的に個々の治験ごとに参加医療機関が次のような 共同の治験審査委員会を設置することを認めたものである。
 (1) 一般用医薬品の治験を行う場合のように、小規模な医療機関を中心に 行う時には、治験に参加する複数の医療機関の長の協議により、共同の治験審査 委員会を設置し、当該治験について審議を受けることができる。
 (2) 大規模な医療機関が中心となって、小規模な医療機関とともに治験を 行う時には、小規模な医療機関の長が大規模な医療機関の長に委託し、大規模な 医療機関の治験審査委員会において当該治験についての審議を受けることができ る。

 2 上記1の(2)の場合においては、小規模な医療機関の長は、大規模な医療機 関の治験審査委員会の構成及び活動状況について、十分な情報を得、把握してお かなければならない。また、大規模な医療機関の治験審査委員会は、小規模な医 療機関の状況について十分な情報を得たうえで審議することとし、審議の結果を 小規模な医療機関の長に文書で報告する。

 3 共同の治験審査委員会の構成及び業務については、個々の医療機関内に設 置された治験審査委員会に準ずるが、上記1の(1)の場合の委員の構成については、 治験に参加する医療機関に所属する者以外の専門家を委員に委嘱しても差し支え ない。

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