第2章 医療機関

I 医療機関の要件

 1 治験は医療法上の医業又は歯科医業に該当するので、治験を行う場所は医 療機関でなければならない。
 2 治験を実施する医療機関は、十分な臨床観察及び試験検査を行うことができ、 かつ、緊急時に必要な措置を採ることができるなど当該治験を適切に実施し得る ものでなければならず、通例、下記の要件を満たすことが必要である。
 (1) 治験を科学的に、かつ、安全に実施するための設備が備わっていること。
 (2) 治験審査委員会が設置されていること。
 (3) 治験担当医師はもちろんのこと、治験に関係する薬剤師、検査技師、放 射線技師及び看護職員等必要な職員が十分揃っていること。
 (4) 治験薬管理者が治験薬等の性質及び治験実施計画書を理解し、治験薬等 の適切な保管、管理及び調剤等を実施し得ること。
 (5) 記録等の保存が適切に行い得ること。
(参考)薬事法施行規則第18条の3第2項
前項各号に掲げる資料を作成するために必要とされる試験は、試 験成績の信頼性を確保するために必要な施設、機器、職員等を有し、かつ、適正 に運営管理されていると認められる試験施設等において実施されなければならな い。
 3 治験依頼者の社内診療所は、第三者性に問題があるので、名実ともに治験依 頼者から独立した医療機関で行うことが望ましい。

II 医療機関の長

 1 医療機関の長とは、一般的には医療法上の管理者(病院長、診療所長)を 指す。
 2 治験を実施しようとする医療機関の長は、次のような規定等を作成する。
 (1) 治験の実施に必要な事務手続きについて、文書により定める。
 (2) 治験審査委員会の運営に関する規定を文書により定める(第4章参照)。
 (3) 治験薬等を保管、管理させるため治験薬管理者を置く。治験薬管理者に
は原則として薬剤師をあてるが、治験担当医師をあてる場合もある(第11章参照)。
 (4) 記録等の保管の方法を定め、保管責任者を置く(第13章)。
 3 医療機関の長は、治験の実施等について治験審査委員会の意見を求め、そ の意見に基づいて治験担当医師に対し治験の実施を了承し、又は必要な指示を与 える。通例、下記のように決定される。
 (1) 治験審査委員会が当該治験を承認した場合には、医療機関の長は承認又 は不承認を決定し、治験担当医師に対し、必要な指示を与える。
 (2) 治験審査委員会が当該治験を不承認とした場合には、医療機関の長も不 承認とする。なお、治験実施計画書の重大な変更についても医療機関の長は、治 験審査委員会の意見を求め、その意見に基づいて治験担当医師に対し、必要な指 示を与える。
 4 治験の実施に関する医療機関の長による決定は、治験担当医師及び治験依 頼者に対し文書で通知する(別紙1に様式の例を示す)。
 5 医療機関の長が治験担当医師に治験の実施に関する通知をする際、治験審 査委員会の意見も添付する(別紙2に様式の例を示す)。
 6 医療機関の長は、治験担当医師から副作用に関する報告を受けた場合、当 該治験担当医師に対し適切な指示を与える等の必要な措置を講ずる。また、重篤 な副作用の場合には、治験の継続等について治験審査委員会の意見を求め(第4 章Iの3参照)、その意見に基づいて当該治験担当医師に対し、必要な指示を与え る。
 7 医療機関の長は、治験終了後、治験担当医師の報告を受け、治験の終了を 確認することとされているが、治験終了後の手続きについても定めておく必要が ある。
 8 医療機関の長は、治験担当医師が提出した治験終了報告書中のGCPの遵守状 況等に関する記述(第7章の10参照)に基づき、必要に応じ、治験依頼者に対し 当該治験がGCPに適合している旨の証明をすることができる。

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