1.ロキシスロマイシンと血小板減少症 医 薬 品:ロキシスロマイシン 対 策 :使用上の注意の改訂、症例の紹介 情報の概要:ロキシスロマイシンの副作用としては「血液」の項に「ときに好酸球増 多、白血球減少があらわれることがある」と記載して注意を喚起してき た。 因果関係は必ずしも明らかではないが、ロキシスロマイシンの投与後 に血小板減少症が発現したとする症例が報告された。現在までに報告さ れた症例数は少ないものの、そのうち1症例は再投与により血小板減少 が再発したと報告されていることから判断して、当症例ではロキシスロ マイシンと血小板減少症の発現との関係は否定できない。 以上のことから、重大な副作用の項に血小板減少症を追記し、本剤の 適正な使用を促すための情報提供を行うよう関係企業に対して指導を行 った。 2.アロプリノールとシクロホスファミドの相互作用による血液障害 医 薬 品:アロプリノール、シクロホスファミド 対 策 :使用上の注意の改訂、症例の紹介 情報の概要:高尿酸血症に対しアロプリノール投与中の患者にシクロホスファミドを 併用したところ、白血球減少が発現した症例が報告された。また、海外 においても、アロプリノールとシクロホスファミドの併用によりシクロ ホスファミドの半減期が延長すると報告されている。 このため、アロプリノールとシクロホスファミドとの併用によりシク ロホスファミドの作用を増強し、重篤な血液障害が発現する可能性があ るため、相互作用の項に両剤の相互作用を追加し、注意を喚起する改訂 を行った。 3.[解説] 医薬品の適正使用のために 血漿分画製剤とパルボウイルスB19感染リスクについて 4.使用上の注意の改訂について(その101)−(本文省略) =========================== [情報の概要]END 1.ロキシスロマイシンと血小板減少症 +−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ | 成分名 | 該当商品名 | +−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ |ロキシスロマイシン |ルリッド(ルセル森下) | +−−−−+−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ |薬効分類|マクロライド系抗生物質 | +−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ |効能効果|ロキシスロマイシン感性のブドウ球菌属、レンサ球菌属(腸球菌を除| | |く)、肺炎球菌、マイコプラズマ・ニューモニア、ブランハメラ・カ| | |タラーリスによる下記感染症 | | | ・毛嚢(包)炎、せつ、せつ腫症、癰、丹毒、蜂巣炎、リンパ管(| | | 節)炎、ひょう疽、化膿性爪囲炎、皮下膿瘍、汗腺炎、集簇性ざ| | | 瘡、感染性粉瘤 | | | ・咽喉頭炎、急性気管支炎、扁桃炎、細菌性肺炎、マイコプラズマ| | | 肺炎 | | | ・中耳炎、副鼻腔炎 | | | ・歯周組織炎、歯冠周囲炎、顎炎 | +−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ (1)症例の紹介 ロキシスロマイシンは平成3年1月に承認された経口の抗生物質であり、咽喉頭炎、 急性気管支炎、副鼻腔炎、毛嚢炎等の呼吸器系及び皮膚科系を中心とした感染症の治 療に広く用いられてきた。本剤はマクロライド系抗生物質に分類され、その作用機序 は、病原体細胞に対する蛋白合成阻害によるものと考えられている。 本剤の副作用のうち血液障害に関しては、好酸球増多及び白血球減少が知られてお り、使用上の注意に記載して医療従事者の注意を喚起してきたところであるが、本剤 との因果関係は明確ではないが本剤の投与により血小板減少症が発現したとする症例 が4例報告されたことから、平成8年11月に使用上の注意に追記し、医療従事者の 注意を喚起することになった。 報告された症例の性別は男性3例、女性1例であり、年齢は39〜85歳であった が、4例中3例が65歳以上の高齢者での報告であった。投与開始から症状発現まで の日数は4〜33日であったが、1例を除いて10日以上経過してからの発現であっ た。また、4例中3例については血小板減少の発現が知られている薬剤が併用されて おり、併用薬の関与も疑われるが、いずれの症例もロキシスロマイシン投与後に血小 板減少が発現していること、また、1例は再投与により再発したとの報告であったこ とから、時間的経過等より本剤との関連は否定できないものと思われる。 報告された症例の一部を紹介する(表1)。 (2)安全対策 これまでにロキシスロマイシンの重大な副作用としては、「ショック、出血性大腸 炎、間質性肺炎」を平成7年7月に使用上の注意に追記しており、また、血液系の副 作用についてはその他の副作用の項に「ときに好酸球増多、白血球減少があらわれる ことがある。」と記載して医療従事者の注意を喚起してきた。 今回、因果関係は必ずしも明らかではないが、ロキシスロマイシンの投与後に血小 板減少症が発現したとする症例が報告された。現在までに報告された症例数は少ない ものの、そのうち1症例は再投与により血小板減少が再発したと報告されていること から判断して、当症例ではロキシスロマイシンと血小板減少症の発現との関係は否定 できない。 一般的に血小板数が10万/μL以下に減少した状態を血小板減少というが、臨床 所見としては、血小板数が3万以下では紫斑や歯肉出血等の皮下、粘膜出血が出現し、 1万以下になると頭蓋内出血、消化管出血等の重症出血を合併することがあるとされ ている。 なお、出血症状は強度の血小板減少例においてのみ出現するため、軽度及び中等度 の減少では認められないことが多く、血小板数の算定により初めて診断可能となるた め、早期発見のためには血液検査の実施が重要である。 このように重症の血小板減少例では、重篤な転帰をとる可能性もあることから、本 剤においても他の抗生物質と同様に血小板減少症が発現する可能性が否定できないこ とに十分留意し、本剤の投与に際しては、定期的に検査を行うなど観察を十分に行い、 検査値の異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行う必要がある。 以上のことから、重大な副作用の項に血小板減少症を追記し、本剤の適正な使用を 促すための情報提供を行うよう関係企業に対して指導を行った。 <<使用上の注意(下線部追加改訂部分)>> <ロキシスロマイシン> 副作用 (1)重大な副作用 血小板減少症:血小板減少症があらわれることがあるので、定期的に検査を行う 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 など観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 置を行うこと。 〜〜〜〜〜〜〜 表1 症例の概要 +−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ |No.1 企業報告| +−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ |患者 性 女 | | 年齢 39歳 | | 使用理由[合併症] 扁桃炎[皮膚筋炎疑い] | +−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ |1日投与量・投与期間:300mg、4日間、(休薬7日間)、3日間 | +−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ |副作用−経過及び処置 | |扁桃炎に対してロキシスロマイシンの投与を開始した。投与3日目、血液検査で血| |小板数が16.4万から14.4万と減少を認めた。症状改善しないため、セファ| |ゾリンナトリウムに変更して3日間投与し、症状が軽減した。 | |扁桃炎が再発したため、ロキシスロマイシンの再投与を開始。再投与3日目、血液| |検査で1.5万と血小板減少を認めた。再検査結果にて1.3万であったため、薬| |剤の投与を中止した。 | |投与中止翌日、鼻出血及び筋電図検査施行部位に紫斑を認めた。鼻タンポンにて止| |血。血小板数0.4万であったため、ステロイドパルス療法並びに血小板輸血を施| |行。 | |投与中止2日目、血小板数1.4万。鼻出血及び紫斑の新生は認めず。ステロイド| |パルス療法、血小板輸血。 | |投与中止3日目、血小板数1.7万。ステロイドパルス療法、血小板輸血。 | |投与中止4日目、血小板数4.4万。以降、血小板輸血を中止し、プレドニゾロン| |内服開始。 | |投与中止7日目、血小板数0.6万。出血症状は認めず。以降、血液内科に転科。| |投与中止36日目、血小板数15.2万と回復。 | | | |臨床検査値 | |−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−| | 血小板数(X10000) | |−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−| | 投与前日 16.4 | | 投与2日目 16.7 | | 投与3日目 14.4 | | 再投与3日目 1.5 | | 中止翌日 0.4 | | 中止2日目 1.4 | | 中止3日目 1.7 | | 中止4日目 4.4 | | 中止7日目 0.6 | | 中止36日目 15.2 | +−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ |併用薬:セフジニル、セファゾリンナトリウム、ロキソプロフェンナトリウム、 | | フマル酸クレマスチン、プレドニゾロン、テプレノン | +−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ |No.2 企業報告| +−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ |患者 性 男 | | 年齢 79歳 | | 使用理由[合併症] 肺炎、慢性閉塞性肺疾患[陳旧性肺結核、急性右心| | 不全、便秘] | +−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ |1日投与量・投与期間:300mg、65日間 | +−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ |副作用−経過及び処置 | |慢性閉塞性肺疾患、肺炎、急性右心不全に対して加療を受けていた。 | |解熱、炎症所見の低下を認めたため、注射用抗生物質からロキシスロマイシンに変| |更した。 | |投与2日目、血小板数40.6万。 | |投与16日目、血小板数29.7万。 | |投与33日目、血小板数が10.7万と減少を認めた。 | |投与44日目、血小板数9.1万。 | |投与62日目、血小板数6.5万。出血傾向は認められなかった。 | |投与65日目、CRPの正常化を確認し、ロキシスロマイシンを中止した。 | |投与中止11日目、炎症所見が再発したため、レボフロキサシンを投与開始した。| |投与中止21日目、血小板数11.5万。 | |投与中止46日目、血小板数20.1万と回復を認めた。 | | | |臨床検査値 | |−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−| | 血小板数(X10000) | |−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−| | 投与6日前 29.4 | | 投与2日目 40.6 | | 投与16日目 29.7 | | 投与33日目 10.7 | | 投与44日目 9.1 | | 投与62日目 6.5 | | 中止21日目 11.5 | | 中止46日目 20.1 | +−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ |併用薬:フロセミド、ジゴキシン、酸化マグネシウム、パンテチン、 | | センノシド、ピコスルファートナトリウム、レボフロキサシン | +−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+