4 [医療用具安全性情報]

  近視を対象としたエキシマレーザーに関する米国の最新情報について



 米国において、1995年秋以降、米国食品医薬品庁(FDA)により2種類の眼

科用エキシマレーザーが承認されたため、眼科用エキシマレーザーの流通・使用が活

発化している。このような眼科用エキシマレーザーの流通・使用の活発化に伴い、米

国においては患者等に誤解を生じさせるような広告、宣伝活動が横行するようになり、

本件に関する照会や苦情がFDAに寄せられるようになった。このため、FDAプレ

スオフィスでは、このような照会等に対する回答として、FDAトークペーパーを発

行した。

 我が国においては、眼科用エキシマレーザーは未だ医療用具として製造又は輸入の

承認は行われていないが、最近、眼科用エキシマレーザーによる近視矯正術が時々話

題となることに鑑み、FDAトークペーパーの内容を紹介する。



−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

FDAトークペーパー「近視を対象としたエキシマレーザーについての最新情報」

 (1996年5月20日付T96−36)



 FDAは、近視矯正用エキシマレーザーについて、一般に流布し、時として誤解を

生じやすい喧伝の活動に対する照会及び苦情を受けている。以下に示すものは、この

ような質問に対する回答となるものである。

 FDAは、昨年秋以降、PRK(屈折矯正角膜切除術)に用いるため、次の2種類

のレーザー装置を承認した。

1.名 称;SVS Apex エキシマレーザーシステム

 製造元;サミットテクノロジー社

 所在地;米国マサチューセッツ州ウォルサム

2.名 称;VISX エキシマレーザーシステム モデルB、C

 製造元;VISX社

 所在地;米国カリフォルニア州サンタクララ

 PRKは、エキシマレーザーを用いて角膜表層部の一部を蒸散させる術式のことで

ある。2種類のレーザー装置は、いずれも中程度又は軽度の近視を矯正するためのも

のとして承認されている。

 ここ数ヵ月間、この術式は米国中にますます広告され、喧伝されている。

 FDAと連邦貿易委員会(FTC)消費者保護局では、最近、眼科医等関係者(eye

care community)に対して、以下のように通告した。

 a.PRKに関する一切の広告及び喧伝の活動は、信頼するに足りるものでなけれ

  ばならず、かつ、真実に基づいたものでなければならない。

 b.消費者が適切な判断を下せるように、PRKの術式に関する十分な情報を提供

  しなければならない。

 5月7日付のFDA・FTCの連名通告では、「広告及び喧伝の活動は、詐欺行為

を防ぐため、PRKのリスクと限界に関する十分な情報を含んでいなければならない

。」としている。また、「『あなたの眼鏡を捨てなさい』といったような非現実的な

主張や成功率に関する事実に基づかない主張は、消費者に誤解を与えるものである。」

としている。

 事実、臨床研究では、次のような結果が出ている。

(1)約5%の患者については、術後、相変わらず常に近視用眼鏡が必要であった。

(2)15%に及ぶ患者については、運転の際など眼鏡が必要であった。

(3)多数の患者が術後に中程度の角膜混濁を経験したほか、グレアやハローの経験

  をした者もいた。

   なお、これらの症状は、ほとんどの患者について、術後6ヵ月以内に減少する

  か、又は消失した。

(4)約5%の患者について、最良矯正視力は術前より術後の方が僅かに劣っていた。

 両眼を同時に矯正するためにエキシマレーザーを使用することには、疑問が生じて

いる。製造業者が作成し、FDAが審査した患者向けパンフレットでは、視力を安定

させるため、片眼手術後、他眼を手術するまで3ヵ月は期間を置くように勧告されて

いる。

 LASIK(角膜表層の下部に対して実施される近視矯正術)を施すためにエキシ

マレーザーを使用することについても、疑問が生じている。この目的でレーザーを使

用することをFDAは審査検討しておらず、承認された使用方法ではない。

 各医師は自らの判断で、両眼を同時に矯正するためにレーザーを使用することも、

LASIKを施すことも可能である。このような使用方法は「医療行為」の範疇で実

施されるものであり、FDAによって規制されているものではない。しかしながら、

製造業者及び医師によって行われるレーザー治療術の喧伝及び広告の活動は、FDA

によって承認されている使用方法に限定されなければならない。

 エキシマレーザーは、強度の近視、遠視及び乱視の矯正に対しては、安全性、有効

性が確認されていない。読書のために眼鏡を必要としている人は、PRK術後も引き

続き眼鏡が必要であると考えられる。たとえPRKを受けたとしても、年をとるにつ

れて、老眼鏡が必要になるかもしれない。その上、PRK術後3年以上の長期的リス

クについては、研究されていない。

 PRKを受けようとする患者は、以下の内容を知っておくべきである。

 近視矯正のためのレーザー治療術を受けるかどうかを決めるにあたっては、次の事

項を十分に考慮した上でなければ判断してはならないこと。

 1.他の矯正方法の選択の適否

 2.この術式の潜在的なリスク

 近視矯正のためのレーザー治療術は、健康な眼に対して施されるものであって、一

度実施すると二度と眼を元の状態には戻せないものである。

 PRKは、管理不能の血管系疾患、自己免疫疾患、特定の眼疾患のある患者や妊婦

には適用すべきではない。近視矯正のためのRK(角膜前面放射状切開術)を受けた

ことのある患者がPRKを受けることは是非とも思い止まるべきである。臨床研究に

よるとRKを受けたことのある患者は、RKを受けたことのない患者に比べて、PR

K術後の視力が格段に悪くなると報告されている。

 PRKに対するエキシマレーザーの使用は、レーザー屈折矯正手術、レーザー装置

の校正及びレーザーの操作に熟練した者に制限されている。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−