1.パニペネム・ベタミプロン及びメロペネムとバルプロ酸ナトリウムの相互作用に

 よるてんかんの発作

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| 成分名            | 該当商品名             |

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|パニペネム・ベタミプロン    |カルベニン点滴用(三共)       |

|メロペネム三水和物       |メロペン点滴用(住友製薬)      |

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|薬効分類|カルバペネム系抗生物質                    |

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|効能効果|ブドウ球菌属、・・・等のうち本剤感性菌による感染症:敗血症等 |

|    | (詳細略)                         |

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| 成分名            | 該当商品名             |

+−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+

|バルプロ酸ナトリウム      |デパケン錠・細粒・シロップ(協和醗酵)|

|                |他                  |

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|薬効分類|抗てんかん剤                         |

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|効能効果|各種てんかん(小発作、焦点発作、精神運動発作並びに混合発作)及|

|    |びてんかんに伴う性格行動障害(不機嫌、易怒性等)の治療    |

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(1)症例の紹介

 パニペネム・ベタミプロン及びメロペネムは、いずれもカルバペネム系抗生物質で

あり、平成5年(1993年)10月と平成7年(1995年)6月に承認されてい

る。またバルプロ酸ナトリウムは、昭和49年(1974年)5月に承認された広く

使用されている抗てんかん剤である。

 バルプロ酸ナトリウムによりてんかんの発作が抑えられている症例に、パニペネム・

ベタミプロン又はメロペネムを併用したところバルプロ酸の血中濃度が急激に低下し、

てんかんの発作が再発した。パニペネム・ベタミプロン又はメロペネムの投与中止に

より、バルプロ酸の血中濃度は速やかに上昇し、てんかんの発作は消失したとの報告

があった。

 サルによる動物実験で、パニペネム・ベタミプロン及びパニペネムがバルプロ酸の

血中濃度を低下させることが確認された(図1)。

 症例の一部を紹介する(表1)。



図1 併用時の血漿中バルプロ酸濃度(文献1)

       (省略)



表1 症例の概要

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|No.1                             企業報告|

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|患者 性          女                      |

|   年齢         12歳                    |

|   使用理由       肺炎、難治性てんかん             |

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|1日投与量・投与期間:パニペネム・ベタミプロン 1500mg、14日間  |

|           メロペネム 1200mg、11日間         |

|           バルプロ酸ナトリウム 1100mg、継続      |

+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+

|副作用−経過及び処置                           |

|けいれんに対してバルプロ酸ナトリウム及びフェニトインを投与していた。   |

|肺炎の治療のためパニペネム・ベタミプロンを投与したところ3日目に眼振発作が|

|頻発しバルプロ酸の血中濃度が10μg/ml以下となった。パニペネム・ベタミ|

|プロンの投与を中止したところ発作は減少し、バルプロ酸の血中濃度は上昇した。|

|その後、4日目に再発した肺炎の治療にメロペネムを投与したところ、眼振発作が|

|頻発し、バルプロ酸の血中濃度が10μg/ml以下となった。メロペネムの投与を中止|

|したところバルプロ酸の血中濃度は上昇し、7日後には発作は減少した。    |

|*カルバペネム投与とバルプロ酸血中濃度推移(μg/ml)           |

|  パニペネム・ベタミプロン投与5日前49.0−>投与3〜16日目10.0|

|  以下→投与終了5日目33.0                     |

|  メロペネム投与6日前33.0−>投与4〜11日目10.0以下→投与終了|

|  3日目18.0→7日目44.0                    |

|転帰:回復                                |

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|併用薬:塩酸エペリゾン、フェニトイン                   |

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|No.2                             企業報告|

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|患者 性          男                      |

|   年齢         10歳                    |

|   使用理由       膿胸、てんかん                |

+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+

|1日投与量・投与期間:パニペネム・ベタミプロン 1200mg、48日間  |

|           バルプロ酸ナトリウム 380−>420mg、継続  |

+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+

|副作用−経過及び処置                           |

|もともと、けいれんのコントロール不良の患者であるが、バルプロ酸ナトリウムに|

|パニペネム・ベタミプロンを300mg×4/日投与したところ、けいれんの回数が増加|

|しバルプロ酸の血中濃度が低下していた。パニペネム・ベタミプロンの投与中止後|

|にバルプロ酸の血中濃度は上昇し、本剤投与中止6日目に、けいれん発作は消失し|

|た。                                   |

|*パニペネム・ベタミプロン投与とバルプロ酸血中濃度推移(μg/ml)     |

|  投与前70.7−>投与16日目4.6−>35日目2.0−>      |

|  48日目3.3→投与中止3日後25.8−>9日後45.8       |

|転帰:回復                                |

+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+

|併用薬:リン酸クリンダマイシン、カルバマゼピン、クロナゼパム       |

+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+



(2)安全対策

 バルプロ酸の血中濃度維持はてんかんの発作の抑制に重要であり、他剤との相互作

用による血中濃度低下は臨床上重要であり、パニペネム・ベタミプロン、メロペネム

及びバルプロ酸ナトリウム製剤の使用上の注意の「禁忌」と「相互作用」の項に併用

しないことを記載することとした。



<<使用上の注意(下線部追加改訂部分)>>

<パニペネム・ベタミプロン、メロペネム>

+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+

| 禁忌(次の患者には投与しないこと)                   |

|  バルプロ酸ナトリウム投与中の患者[本剤の併用により、バルプロ酸の血中 |

|  〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 |

|  濃度が低下し、てんかんの発作が再発することがある。]         |

|  〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜         |

+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+



相互作用

併用しないこと

〜〜〜〜〜〜〜

 バルプロ酸ナトリウム[本剤との併用により、バルプロ酸の血中濃度が低下し、て

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 んかんの発作が再発することがある。]

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



<バルプロ酸ナトリウム>

+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+

| 禁忌(次の患者には投与しないこと)                   |

|  本剤投与中はパニペネム・ベタミプロン、メロペネムを併用しないこと。  |

|  〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  |

|  [併用により、本剤の血中濃度が低下し、てんかんの発作が再発することが |

|  〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 |

|  ある。]                               |

|  〜〜〜                                |

+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+



相互作用

(1)併用しないこと

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

  パニペネム・ベタミプロン、メロペネム[本剤の血中濃度が低下し、てんかんの

  〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

  発作が再発することがある。]

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<参考文献>

1)三共研究所報告資料