2.抗消化性潰瘍薬(プロトンポンプインヒビター)による血液障害について
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| 成分名            | 該当商品名             |
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|オメプラゾール         |オメプラール(藤沢薬品)       |
|                |オメプラゾン(吉富製薬)       |
|ランソプラゾール        |タケプロン(武田薬品)        |
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|薬効分類 |プロトンポンプインヒビター                 |
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|効能効果  |胃潰瘍、十二指腸潰瘍、吻合部潰瘍、逆流性食道炎、      |
|     |Zollinger−Ellison症候群                  |
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 プロトンポンプインヒビターは、胃粘膜の壁細胞の胃酸分泌最終段階を担っている
プロトンポンプであるH+ 、K+ −ATPase活性を抑制し、これにより胃酸分泌
を抑える作用を示す医薬品である。胃潰瘍、十二指腸潰瘍等の治療に用いられ、我が
国ではオメプラゾールとランソプラゾールがそれぞれ平成3年1月と平成4年10月に
承認されている。
 プロトンポンプインヒビターは、まれに白血球減少などの血液障害があらわれるこ
とが知られており、既に使用上の注意に必要な注意が記載されている。しかし、一人
の患者に赤血球減少、白血球減少及び血小板減少など二系統以上の血液障害が発現す
る症例や、赤芽球癆を示した症例などが報告されている。これら副作用を示した症例
は、潰瘍からの出血などでそもそも貧血傾向が認められるケースや、合併症として肝
障害を伴っているケースなどが多く、重い血液障害発現とプロトンポンプインヒビタ
ーの因果関係の判断は必ずしも明らかではないが、血液障害について使用にあたって
十分な注意が必要であり、慎重な観察と、投薬中止などの適切な処置が重要である。
 報告された症例の一部を紹介する(表2)。
 
表2 症例の概要
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|No.1                             企業報告|
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|患者 性          女                      |
|   年齢         52                     |
|   使用理由(合併症)  胃潰瘍(慢性肝炎、不眠)           |
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|1日投与量・投与期間:20mg、15日間                 |
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|副作用−経過及び措置                           |
|胃潰瘍治療のため、オメプラゾール、レバミピドの投与を開始した。投与開始前の|
|血液検査値は正常であった。投与開始15日目、汎血球減少が発現したため投与を|
|中止した。                                |
|投与中止2日目、汎血球減少は回復していない。               |
|                                     |
|臨床検査値                                |
|−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−|
|            投与前日  投与7  投与15日目   中止後2  |
|                  日目   (投与中止日)  日目    |
|−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−|
|赤血球数(x10000/mm3)  359    337    280      290    |
|白血球数(/mm3)     4200    3600    2600      2400    |
|血小板数(x10000/mm3) 17.7    12.8    3.9      4.2    |
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|併用薬:レバミピド、グリチルリチン・DL−メチオニン配合剤、       |
|    ミソプロストール、アルギン酸ナトリウム、ブロチゾラム       |
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|No.2                             企業報告|
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|患者 性          女                      |
|   年齢         58                     |
|   使用理由(合併症)  胃潰瘍                    |
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|1日投与量・投与期間:投与量不明、(1カプセル)36日間         |
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|副作用−経過及び措置                           |
|胃潰瘍にてランソプラゾール等の投与を開始した。              |
|投与開始28日目、血液検査にて正球性正色素性貧血が認められたので、骨髄穿刺|
|を施行したところ赤血球系のみの抑制を確認し、赤芽球癆が疑われた。     |
|翌日、洗浄赤血球を800ml輸血するが貧血は改善しなかった。       |
|エリスロポエチンは698mU/mlと高値を示し、腎性貧血は否定。     |
|投与開始36日目、ランソプラゾールの投与を中止した。           |
|投与中止25日目、骨髄穿刺を施行。赤芽球癆は改善していた。        |
|                                     |
|臨床検査値                                |
|−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−|
|             投与開始 投与開始 投与開始 投与  投与中止 |
|             15日目  28日目  32日目  中止日 10日目  |
|−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−|
|ヘマトクリット(%)    29.2   19.9   −    18.4   29.7  |
|ヘモグロビン(g/dl)     8.4    6.0   −    5.5   8.7  |
|有核細胞数(×10000/mm3)  −    −   21.7    −    −   |
|巨核球数(/mm3)       −    −    105    −    −   |
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|併用薬:塩酸セフォチアム、エカベトナトリウム、マレイン酸イルソグラジン、 |
|    アルギン酸ナトリウム、含糖酸化鉄、                |
|    水酸化アルミニウムゲル・水酸化マグネシウム            |
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