1.塩酸カルテオロール点眼液と気管支喘息
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| 成分名            | 該当商品名             |
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|塩酸カルテオロール       |ミケラン点眼液(大塚製薬)      |
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|薬効分類等|β−遮断薬                         |
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|効能効果  |緑内障、高眼圧症                      |
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(1)症例の紹介
 現在、緑内障・高眼圧症の治療には、β−遮断薬の点眼剤が第一選択薬として広く
使用されており、マレイン酸チモロール、塩酸カルテオロール、塩酸ベフノロール、
塩酸ベタキソロールが承認されている。
 これらβ−遮断薬の点眼剤の眼圧下降作用機序は、交感神経β−受容体遮断作用に
よる房水産生抑制と考えられている。
 β−遮断薬の点眼剤は全身移行することが知られており、眼局所作用のみならず全
身的な副作用についても注意する必要がある。点眼後の副作用発現を最小限にとどめ
るために、全身性吸収を減少させる作用のある点眼後の涙嚢部の圧迫が推奨されてい
る。
 本剤の全身性吸収によると思われる副作用には、不整脈、うっ血性心不全等が知ら
れているが、特に、気管支喘息や閉塞性肺疾患のある患者では、その気管支収縮作用
により、重篤な喘息発作、呼吸困難等が起こることが知られている。
 なお、マレイン酸チモロールでは、気管支喘息等の重篤な呼吸器系の副作用が報告
されており、本情報No.54(昭和57年4月号)でマレイン酸チモロール点眼液
による呼吸・循環器障害について注意喚起が行われている。
 また、塩酸カルテオロールや塩酸ベフノロール、及びβ1 −選択性で呼吸器に及ぼ
す影響が少ないと考えられている塩酸ベタキソロールにおいても呼吸困難等の呼吸器
系副作用が報告されており、使用上の注意に記載し注意喚起がなされている。
 今般、気管支喘息の既往歴のある患者に、塩酸カルテオロールを点眼したところ気
管支喘息が発現したことから、使用上の注意を改訂したので、報告された症例の一部
を紹介するとともに、β−遮断薬の点眼剤による気管支喘息について再度注意喚起を
行うものである(表1)。
 
表1 症例の概要
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|No.1                             企業報告|
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|患者 性          男                      |
|   年齢         70                     |
|   使用理由(合併症)  正常眼圧緑内障                |
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|投与量:適量                               |
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|副作用−経過及び処置                           |
|正常眼圧緑内障の治療のため、0.25%マレイン酸チモロール1日2回の点眼を|
|開始した。点眼時の充血、疼痛などの刺激症状が出現したため、点眼を1%塩酸カ|
|ルテオロール点眼液に変更した。塩酸カルテオロール点眼開始約4ヵ月後、呼吸困|
|難が出現し、慢性気管支炎と診断され、気管支拡張剤、去たん剤が処方された。以|
|後、夜間の咳嗽は増悪と軽快を繰り返した。点眼開始約1年後、塩酸カルテオロー|
|ル点眼を中止した。中止後、呼吸困難、咳嗽などの症状はすべて消失した。   |
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|併用薬:なし                               |
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|No.2                             企業報告|
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|患者 性          男                      |
|   年齢         39                     |
|   使用理由(合併症)  高眼圧症(アレルギー性結膜炎)        |
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|投与量:4滴                               |
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|副作用−経過及び処置                           |
|3年前に喘息発作の既往歴のある患者に、高眼圧症の治療のため、2%塩酸カルテ|
|オロールの点眼を開始した。本剤の投与6日目に喘息発現、救急外来受診しその日|
|に軽快した。11日目に喘息発作発現、救急外来受診、全肺野に喘鳴があり、動脈血|
|ガス分析でPaO2 68mmHg、PaCO2 47mmHgであるため、入院。ス|
|テロイドの点滴で軽快した。                        |
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|併用薬:クロモグリク酸ナトリウム                     |
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(2)安全対策
 現在までの使用上の注意等による注意喚起の内容は次のとおりである。
1.マレイン酸チモロールについては、使用上の注意の「禁忌」に「気管支喘息、又は
 その既往歴のある患者、気管支痙攣、重篤な慢性閉塞性肺疾患のある患者」、「副
 作用」の項に「気管支痙攣、呼吸困難」を記載。
2.塩酸ベフノロールについては、使用上の注意の「禁忌」に「気管支喘息、気管支痙
 攣、重篤な慢性閉塞性肺疾患のある患者」、「副作用」の項に「喘息発作」を記載。
3.塩酸ベタキソロールについては、「慎重投与」の項に「喘息、気管支痙攣、あるい
 はコントロール不十分な閉塞性肺疾患のある患者」、副作用の項に「呼吸困難」を
 記載。
4.塩酸カルテオロールについては、「禁忌」に「気管支喘息、気管支痙攣のある患者
 」、「副作用」の項に「呼吸困難」を記載。
 今般、気管支喘息の既往歴のある患者に、塩酸カルテオロールを点眼したところ気
管支喘息が発現したとする症例が報告されたことから、「禁忌」、「副作用」の項を
改訂し、一層の注意喚起を行うこととした。β−遮断薬の点眼剤を使用する際には、
気管支喘息などの全身的な副作用を起こすことがあるので十分な注意が必要である。
 
<<使用上の注意(下線部追加改訂部分)>>
<塩酸カルテオロール>
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| 禁忌                         |
|  気管支喘息、気管支痙攣又はそれらの既往歴のある患者 |
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副作用
(1)重大な副作用
 喘息発作:まれに喘息発作を誘発することがある。
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