3[解説]医薬品の適正使用のために
新生児の動脈管開存症とメフェナム酸
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| 成分名 | 該当商品名 |
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|メフェナム酸 |ポンタールシロップ3.25%(三共)他|
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|副作用 |壊死性腸炎、壊死性腸炎穿孔 |
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(1)製剤と症例の紹介
メフェナム酸(シロップ)は昭和52年12月に承認された、急性上気道炎(急性
気管支炎を伴う急性上気道炎を含む)の解熱・鎮痛を効能とする薬剤である。
本剤の適応ではないが超未熟児の動脈管開存症の治療目的で使用され、重篤な症状
を呈した症例が7例(急性腎不全が1例、壊死性腸炎(穿孔を含む)が6例)報告さ
れている。そのうち壊死性腸炎(穿孔を含む)で3例、壊死性腸炎穿孔発症後の脳室
内出血で1例の計4例の死亡が報告されているので、その詳細等について紹介する。
報告された症例には脳室内出血、心不全、高ビリルビン血症を併発している例や、
新生児呼吸窮迫症候群に合併した動脈管開存症など、極めて身体状態の悪い患者が多
い。投与期間は1〜2日以内であり、投与開始されてから2〜13日目で症状が発現
している。この壊死性腸炎の原因は、超未熟児のためかあるいは動脈管開存症のため
の腸管虚血であるか不明である。
症例の一部を紹介する(表1)。
(参考)
動脈管開存症(Patent Ductus Arteriosus:PDA)とは、正常では生後2ヵ月以内
に線維性の索(動脈管索)に変化するはずの下行大動脈と左肺動脈を連絡する動脈管
が生後閉鎖しないために、動脈管を通じて体循環肺循環の短絡などの血流障害を生じ
るもので、新生児における全心奇形の中では比較的多い疾患である。本患者の診断は
臨床症状(呼吸困難、連続性心雑音、precordial pulsation、心肥大、肺うっ血)又
は超音波検査法(超音波ドップラー法で動脈管開存を介した左−右シャントの存在)
にて確定診断ができる。治療方法としては薬物療法としてインドメタシン静注用の投
与があるが、薬物療法が無効あるいは動脈管依存性の先天性心疾患(肺動脈閉鎖、重
症大動脈縮窄症など)や重篤な腎機能障害、消化管出血等を併発している場合は外科
的に動脈管を結紮する方法がある。なお、動脈管開存症に対しては平成6年12月に
インドメタシン静注用が適応を承認されている。
表1 症例の概要
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|No.1 企業報告|
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|患者 性 女 |
| 年齢 7日 |
| 使用理由[合併症] 動脈管開存症[気胸、脳室内出血] |
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|1日投与量・投与期間:1.3mg、1日 |
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|副作用−経過及び処置 |
|出生時体重670gで直後より人工呼吸器を使用し、塩酸ドパミンとアンピシリン|
|を投与開始した。 |
|2日目に気胸、脳室内出血が認められ、3日目に動脈管開存症が発症した。 |
|4日目、動脈管開存症が次第に悪化したため、メフェナム酸を投与。投与後動脈管|
|は閉鎖したが、排便は減少、腸ぜん動音も聞こえなくなった。 |
|8日目、腹壁が全体的に暗緑色となる。 |
|9日目、急激に血圧が低下し、塩酸ドパミン等にも反応がなくなり死亡した。 |
|剖検にて回腸に穿孔が1ヵ所確認され、死因は壊死性腸炎による消化管穿孔と思わ|
|れた。 |
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|併用薬:塩酸ドパミン、アンピシリン、インスリン |
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|No.2 企業報告|
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|患者 性 男 |
| 年齢 16日 |
| 使用理由[合併症] 動脈管開存症[心不全、遅延性呼吸窮迫症] |
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|1日投与量・投与期間:1.3mg、2日 |
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|副作用−経過及び処置 |
|超未熟児として出生し、塩酸ドパミンの投与を開始した。 |
|4日目、動脈管開存症との診断がなされたためメフェナム酸の投与を開始した。 |
|5日目、アスピリンDL−リジンを更に追加投与した。 |
|15日目、腹部膨満が出現し、胸部X線上に拡張ループを確認し、壊死性腸炎穿孔|
|と診断した。腹腔ドレーンにより治療したが、その後に死亡した。 |
|死因は壊死性腸炎であった。 |
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|併用薬:アスピリンDL−リジン、塩酸ドパミン |
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