3.イソプロピルウノプロストンと角膜障害
+−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
| 成分名            | 該当商品名             |
+−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|イソプロピルウノプロストン   |レスキュラ点眼液(上野製薬)     |
+−−−−−+−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|薬効分類等|代謝型プロスタグランジン系緑内障・高眼圧症治療剤      |
+−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|効能効果  |緑内障、高眼圧症                      |
+−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
 
(1)症例の紹介
 緑内障は、緑内障性視神経萎縮に起因する視野異常を来す疾患であり、多くは眼圧
上昇が視野萎縮の原因である。原発性(開放隅角、閉塞隅角)緑内障、続発性緑内障、
先天的緑内障などに分類される。
 イソプロピルウノプロストンは平成6年7月に承認された代謝型プロスタグランジ
ン系の緑内障、高眼圧症治療剤である。これまでにイソプロピルウノプロストンの投
与により角膜障害が発現したとする症例が5例報告されている。
 報告症例の特徴として、高齢者が多いこと、多数の点眼薬が投与されている状態で
副作用が発現していることが挙げられる。報告された症例の一部を表3に紹介する。
 
(2)安全対策
 今回の症例は、点眼薬の併用薬剤も多く因果関係について不明な点も多いものの、
本剤投与後に角膜障害を発症しているため、薬剤の関与について完全に否定はできな
い。
 イソプロピルウノプロストンの投与により角膜障害があらわれることが知られてお
り(文献1〜3)、角膜炎、角膜びらん、角膜点状混濁等の角膜障害が発現すること
については既に「使用上の注意」に記載している。また、一般的注意として「本剤投
与中に角膜障害があらわれることがあるので、霧視、異物感、眼痛等の自覚症状が持
続する場合には、直ちに受診するよう患者に十分指導すること。」と記載し、注意を
喚起してきた。
 イソプロピルウノプロストン投与中の角膜障害発現の機作は不明であるが、本剤使
用に際し、十分な注意が必要であることを改めて喚起する。
 
表3 症例の概要
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|No.1                             企業報告|
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|患者 性          女                      |
|   年齢         75                     |
|   使用理由(合併症)  開放隅角緑内障                |
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|1日投与量・投与期間:1日2回、51日間(両)              |
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|副作用−経過及び処置                           |
|開放隅角緑内障に対し、交感神経β遮断薬、副交感神経作動薬、交感神経作動薬点|
|眼等による治療を行っていたが、これらに加えてイソプロピルウノプロストンを点|
|眼した。投与35日目に眼瞼発赤を認め、49日目に角膜上皮剥離を認めた。51|
|日目、角膜所見が悪化したため点眼薬をすべて中止し、眼帯した。合成抗菌剤、角|
|膜保護剤等を点眼し、角膜障害の発現から14日目に回復した。        |
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|併用薬:マレイン酸チモロール、塩酸ピロカルピン、塩酸ジピベフリン、    |
|    アセタゾラミド                          |
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|No.2                             企業報告|
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|患者 性          男                      |
|   年齢         67                     |
|   使用理由(合併症)  狭隅角緑内障(老人性白内障)         |
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|1日投与量・投与期間:1日2回、51日間(両)              |
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|副作用−経過及び処置                           |
|狭隅角緑内障に対し、副交感神経作動薬点眼で治療を行っていたが、イソプロピル|
|ウノプロストンを追加投与したところ、投与43日目に流涙、霧視を訴えた。48|
|日目、角膜中央部に横楕円形に白濁、一部上皮剥離を認めた。白内障治療剤、消炎|
|鎮痛剤点眼を中止し、合成抗菌剤点眼、抗生物質眼軟膏を投与したが、高眼圧のた|
|め、緑内障治療剤の投与を続行した。50日目、症状不変で、一部樹枝状角膜炎類|
|似のため、抗ウイルス剤眼軟膏を投与した。翌日、眼痛、流涙著明、開瞼不能とな|
|った。イソプロピルウノプロストン投与を中止し、消炎鎮痛剤を内服した。中止3|
|日目、角膜浸潤、眼痛が軽減し、21日目(副作用発現から29日目)に軽快した|
|。                                    |
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|併用薬:塩酸ピロカルピン、グルタチオン、プラノプロフェン         |
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
 
〈参考文献〉
1)高瀬正彌他:あたらしい眼科,9(11):1917(1992)
2)茂木 豊他:眼紀,44(1):12(1993)
3)東 郁郎他:あたらしい眼科,11(9):1435(1994)